銀河よ永遠なれ

[題名]:銀河よ永遠なれ
[作者]:ポール・アンダースン


 価値観の異なる文明との接触を描いた、アンダースン氏のスペースオペラです。
 本書はアンダースン氏の未来史〈惑星間協調機関シリーズ〉に属するエピソードなのですが、シリーズに含まれる作品はあまり日本語に翻訳されていません。英語圏では"The Psychotechnic League"として知られており、アイザック・アシモフ氏の心理歴史学に類似する学問"Psychotechnic"(精神工学?)が地球社会に変革をもたらす歴史前半と、超光速推進システムを得た人類が銀河へ進出する歴史後半の二つの作品群に分かれるようです。(本書は後者)
 もっとも、ストーリー自体は独立しているものなので、本書単体でも楽しめる内容になっています。
 宇宙の特定領域で頻発する宇宙船の遭難。ノーマッドの宇宙船ペルグリン号乗組員一行と、船に同乗した協調機関員トリベリアンは、原因究明のためX領域へと向かうのですが……。

 時は遥かな未来。超高速推進力(ハイパー・ドライブ、何故か超光速推進とは訳されなかった模様(^^;))を得た地球人類は宇宙へ進出して版図を広げ、多数の異星人と交流を持つに至ります。
 そうした中、特定の惑星に囚われることを良しとしない宇宙の流浪民ノーマッドは、宇宙船を単位とした氏族を形成し、星々を渡り歩きながら貿易などで生計を立てていました。
 ノーマッドは彼ら以外には知られていない惑星ランデブーで定期的に会合を行い、船長会議で様々な方針を決定していました。ある会議において、宇宙船ペルグリン号の船長ジョアキム・ヘンリーが、問題提起と提案を行います。
 ノーマッドの宇宙船はここ十年で五隻がX領域内で消息不明となっており、かつ人類以外の宇宙船も同じエリアで消失したものがあるらしい。X領域内には宇宙連合に敵対的な文明が存在する可能性が高く、調査を行うべきだ、と。ジョアキムの提案は受け入れられ、ペルグリン号が向かうことになりました。
 ペルグリン号乗員の若者ソーキルド・ショーンは、非ノーマッドの女性との結婚が破局に終わった後、惑星ランデブーの原住民女性イラロアと親しくなりました。非人類の原住民との婚姻は本来ご法度でしたが、ショーンとイラロアのたっての希望により、ジョアキムは彼女のペルグリン号乗船を許可します。
 一方地球では、惑星間協調機関の情報員トリベリアン・マイカが、新たな指令を受けていました。機械(マシーン)はノーマッド達がX領域の調査を始めたことを察知し、その捜査が必要と判断したのです。ペルグリン号が惑星ネルサスに寄稿した際、トリベリアンは偶然を装ってショーンと接触し、正体を明かしてジョアキムの同行許可を取り付けます。
 こうして、X領域へと向かうことになったペルグリン号一行――彼らはそこで思いもよらない文明を目にすることになります。

 本書の注目ガジェットは、ノーマッドです。
 ノーマッドは宇宙船の中で人生のほとんどを過ごすことを選んだ人々です。一つの船には千五百人程度の乗員が乗っていて、世襲制の船長により指揮されます。およそ三十~四十隻のノーマッド宇宙船が存在しますが、全ての船を統べるような組織はない模様です。
 ノーマッドは主に自由商人として貿易を行うほか、多くの乗員が船内で工芸品を生産しています。また、これはノーマッドの間でも感心されないものの、時には惑星から物資を強奪するようなことも行われるようです。
 ノーマッドは法をさほど遵守しないため、宇宙連合(ステラー・ユニオン:"the Stellar Union")、特に惑星間のトラブルを調停する惑星間協調機関(コーディネーション・サービス:"the Coordination Service")からは白眼視されています。逆に、ノーマッド側も協調機関に反感を抱いています。
 ノーマッド達の科学技術レベルはそれほど高くないようですが、創造性は高く、利益のために自ら深宇宙へ赴くアグレッシブさがあります。一方で、地球は個人主義と機械の発達のせいで活力を失いつつあります。この辺りはアンダースン氏の別シリーズ〈ドミニック・フランドリー・シリーズ〉を連想させる部分ですね。

 ジャンルとしてはスペースオペラに分類される本書ですけど、作品としてはX領域に存在する異星文明との接触がメイン、いわゆる〈ファーストコンタクトもの〉に近い内容となっています。個人レベルでは対話可能なものの、社会としては相いれない異文明との衝突が主題ですね。ネタバレになってしまうため詳細に踏み込めないのですが、個人的には属したいとは思えない文化です(^^;)
 主人公格の登場人物として、協調機関員トリベリアン、ペルグリン号船長ジョアキム、そしてショーンの三人がいます。トリベリアンはヒーローらしい立ち位置ではあるものの、ストーリーの牽引役はジョアキム、ロマンス担当(笑)はショーン、と役割が分散しています。このせいか、スペースオペラとしては少々地味な印象は否めません。
 物語のラストはかなりあっさりしていて、文明衝突の行く末は読者の想像にゆだねられているようです。果たして、このアロリ文明と宇宙連合の関わりは、どのような結末を迎えるのでしょうか。

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