わが名はコンラッド

[題名]:わが名はコンラッド
[作者]:ロジャー・ゼラズニイ


 本作はゼラズニイ氏の長編一作目であり、また氏が手がけられる一連の神話SFの一作目でもあります。
 『わが名はコンラッド』で取り上げられるのはギリシア神話です。もっとも、『光の王』のようにオリジナルの神話そのものと密接に関連しているというほどではなく、そのイメージを未来世界に取り込んだ形ですね。
 幾度も名を変え、長い年月を生きてきた不死の男コンラッド。彼がベガから訪れた異星人に荒廃した地球を案内するとき、何が起きるのでしょうか。

 〈三日戦争〉と呼ばれる核戦争の後、地球は荒れ果てた惑星となっていました。放射性物質にまみれた地域では人や動物が突然変異を起こし、サテュロスを始めとする生き物達が跋扈する神代の時代のごとき有様を呈しています。
 困窮し切った地球、そして補給路を断たれた火星やタイタンの植民地に対して、外宇宙から救いの手が差し伸べられていました。平和的な種族ベガ人は戦争の経験がなく、荒廃した惑星に魅せらせてしまったのです。かくして地球はベガ人の庇護下に入り、彼等に養ってもらって生き延びています。
 そうした状況下、あるベガ人富豪一族の一人コルト・ミシュチゴが観光のために地球を訪れることになりました。そしてその案内役として名指しで選ばれたのが、地球美術遺跡史料保存局の局長コンラッド・ノミコスでした。
 コンラッドは普通の人間ではありません。彼は不老不死であり、正体を隠し名を変えて長い間生き延びてきたのです。それを知る人間はごくわずかですが、ミシュチゴはコンラッドが不死であることを見抜いた上で彼をガイド役に指名してきたのでした。
 ミシュチゴを嫌うコンラッドですが、嫌々ながらもその役目を引き受けることにします。ところが、彼等の旅に加わる人間の中に、ミシュチゴの命を狙う者がいることが分かります。
 ベガ人ミシュチゴの命を守りつつ、奇怪な様相を呈する地球を案内するという、困難な旅が始まります。

 本作の注目ガジェットは、荒廃した地球です。
 核戦争の傷跡により世界のいたるところに放射性物質が蔓延し、人口は激減しています。火星等の地球外植民地の人々はベガ社会に取り込まれ、荒れ果てた地球には戻りたがらないようです。
 また、放射性物質の影響で多くの生物に突然変異が生まれています。神話から抜け出してきたような怪物、そして人間のミュータント達です。中でも人間の突然変異は忌み嫌われていて、文明社会を追われた人々が危険地帯で独自のコロニーを形成しています。
 我々の知る地球がこうした異世界に変わり果ててしまう異様さが味わい深いですね。

 本書を語る上で、主人公コンラッド自身も重要です。
 ゼラズニイ氏の作品にはしばしば時代を超えて生き続ける不死の男が登場しますが、コンラッドもその一人です。今はあまり重要とは見なされない職に就いているものの、かつては反ベガ勢力を率いて武力闘争に身を置いたこともあります。
 右目が青、左目が茶色のオッド・アイで、左頬には紫の痣があります。かなりの怪力の持ち主であり、不完全ながらテレパシー能力も有します。
 もっとも、一人称で綴られる彼の内面は、外観や能力とは裏腹に常識的で気負ったところがありません(韜晦している部分もあるようですが)。この魅力的な主人公が、『わが名はコンラッド』という作品をより面白く盛り上げてくれます。

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