サイバー・ショーグン・レボリューション

[題名]:サイバー・ショーグン・レボリューション
[作者]:ピーター・トライアス


 ピーター・トライアス氏の〈歴史IFもの〉、第二次世界大戦で枢軸国側が勝利した世界に、日本製アニメのお家芸・巨大ロボットをミックスした異色作〈USJ〉三部作の最終巻です。
 一作目『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』では、戦後ドイツと日本により分断支配されたアメリカの日本領(ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン、以下USJ)を舞台に、抑圧的な社会の有様を重苦しいタッチで描いた、ディストピア感の強い作品でした。
 二作目『メカ・サムライ・エンパイア』は、同じUSJを舞台としながらも、メインとして描かれるのはメカパイロット志望の少年の成長物語で、一転してエンターテイメント寄りの作風になっていました。
 三作目となる本作は、作品の傾向としては一作目に近い感じでしょうか。二人の主人公、メカパイロットの守川励子と特高課員の若名ビショップが、謎の暗殺者ブラディマリーの跡を追う先にあるものは――USJの内乱。

 二〇一九年冬、地下組織〈戦争の子供たち〉は、USJ総督・多村大悟の腐敗政治に反旗を翻しました。
 メンバーの一人である守川励子はメカパイロットとして都市防衛用メカに乗り込み、仲間と共に多村の乗るはずの車両を襲撃します。しかし、それは罠で、多村は乗車していませんでした。襲撃失敗かと思われたとき、伝説のナチスキラーかつ正体不明の暗殺者ブラディマリーが姿を見せ、多村の首級を挙げました。
 かくして、〈戦争の子供たち〉リーダーである山崗将軍が総督となり、腐敗は解消されたかに思われました。けれども、権力の移動に従い、罪なき人々が数多く粛清される事態となり、〈戦争の子供たち〉メンバーで励子の友人である獄見ダニエラはそれを問題視します。励子はダニエラをなだめつつも、不安を感じざるを得ませんでした。
 そうした中、〈戦争の子供たち〉による集会に突如ブラディマリーが現れ、その場にいた励子以外のメンバーをことごとく惨殺したのです。生きて語らせるために励子一人を残したというブラディマリーに、励子は兇行の理由を問いますが、その答えは「〈戦争の子供たち〉の行ったことはお国のためなどではなく、権力奪取に過ぎない」というものでした。元々、自分は〈戦争の子供たち〉の仲間ではなく、ただ国賊を処分する死刑執行人なのだと。
 病院のベッドの上で意識を取り戻した励子は、山崗総督に一連の出来事を報告します。山崗は、ブラディマリーの捜査は特高(特別高等警察)に委ねることとし、励子をその連絡係に任命しました。

 一方、新米特高課員の若名ビショップは、人体実験を行うナチスの凶悪犯メッツガー博士の事件を追っていましたが、その途中で警視監の槻野昭子にダラスで陸軍に協力するよう命じられます。赴いた場所で高校時代の同級生だった励子と再会したビショップは、彼女と共同で聞き込みを行った後、単独でメッツガー博士の居場所を突き止めたものの、捕まってしまいました。
 絶体絶命の状況で、突如登場したブラディマリーがビショップを拘束していたナチスとヤクザを皆殺しにし、ビショップを救った後に告げます。〈戦争の子供たち〉に、下手な罠はお見通しだと伝えろ、と。
 病院で治療を受け回復したビショップは槻野から、ブラディマリーが既に陸軍に所属しておらず、造反したらしいと聞かされ、困惑します。そして槻野に、励子と協力してブラディマリーの逮捕、不可能であれば殺害するよう命令を受けます。
 果たしてブラディマリーは何のために殺害を繰り返すのか。そして、女性であること以外一切が不明な暗殺者の正体は。
 捜査を進展してく中で、USJ社会に潜む闇が白日の下にさらされるとき、励子とビショップは何を選択するのでしょう。

 本作の注目ガジェットは、やはり巨大ロボット・メカですね。
 一作目『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』では二人の主人公、石村紅巧と槻野昭子のどちらもメカパイロットではなかったせいか、メカはあくまで物語の舞台背景に過ぎない印象でした。二作目では逆に、メカパイロットの少年・不二本誠が主人公であることから、メカ対ナチスのバイオメカの派手な戦闘シーンが印象的でした。
 三作目『サイバー・ショーグン・レボリューション』は、一作目同様に軍国主義社会へへ焦点を当てつつも、巨大なメカ同士の戦いもたっぷり盛り込まれた贅沢な展開になっています。個人的には、一作目でのメカの扱いはトライアス氏に照れがあるように感じられたのですが、二作目で吹っ切れたのかもしれません(笑)
 本作では皇国領における内乱がクライマックスとなるため、同じ大日本帝国軍のメカ同士のぶつかり合いが目白押しです。アルマジロのような装甲で圧倒的な防御力を有するサイレン號や、加速モジュール装備の高速移動機ストライダー號、巨大チェーンソーで戦うマンモス型メカ・シグマ號など、敵方に属する強大なメカが主人公達の前に立ちふさがります。
 励子は、当初の乗機こそ都市防衛用のカタマリ級小型メカ・イナゴ號で、戦闘力はさして高くないために苦戦しますが、後半における主役機交代(笑)により進化型のカマキリ號へ乗り換えてからは目覚ましい活躍を見せます。
 前作から作中で二十年以上経過していることもあり、メカや武装の進化も著しいようです。また、圧倒的な巨大ロボットに、生身でロケットパックを背負ったビショップが立ち向かう場面などの見せ場も多く、重いタッチのバックストーリーに華を添えてくれます。

 主人公の一人守川励子は、かつてはメカ設計者を目指した女性ですが、カンザス大虐殺と呼ばれるナチスの侵攻で負傷し、その道を絶たれています。虐殺に責任のある多村総督を恨み、メカパイロットとして〈戦争の子供たち〉に参加しますが、どちらかと言うと深く考えないタイプのキャラクタでしょうか。
 もう一人の若名ビショップは、一作目において冤罪で処刑された若名将軍の息子です。特高課員という役職に似合わず温和な青年で、一作目の苛烈な槻野昭子とは大違いですね(^^;) メカは操縦できないものの、特高課員の権限を生かした情報収集や、昔取った杵柄のロケットパック装備などで励子をサポートします。
 対照的な二人ですが、高校時代の同級生だったこともあり、相性は悪くないようです。
 前作から引き続き登場するのは、あらすじにある槻野昭子と山崗将軍の他、二作目からお嬢様口調の大西範子少佐(前作では橘範子)と、謎の関西弁メカパイロット男性(笑)Kです。後者二人は三十代後半のようで、熟達した名メカパイロットへと成長しています。もっとも、Kの方は相変わらずですけど(^^;)
 しかしながら、本作の真の主人公はやはりブラディマリーでしょう。登場シーンこそ多くありませんが、その強烈な振る舞いで強い印象を残してくれます。かなり露悪的ではあるものの、その行動の裏には彼への弔いもうかがえるように感じますね。〈USJ〉三部作自体のテーマに関わってくる重要なキャラクタです

 本作にて、USJを舞台とするシリーズは終了のようです。
 この後の劇的な展開を予感させる終幕で、更にその先を読んでみたくはあるのですけど、これ以降はもはや〈歴史IF〉ではなくなってしまうのでしょう。少々残念ですが、その先は個々の読者が想像をはせるのが良いのかもしれません。もしかしたら二次創作作品が勢いづくかも(^^;)

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