巨神計画

[題名]:巨神計画
[作者]:シルヴァン・ヌーヴェル


 本書は、地中から発見された古代の巨大ロボットを復元し、再び動作させる過程を綴った異色の巨大ロボットSFです。
 作品の特徴として、ほぼ全編がインタビュー形式で記述されていることが挙げられます。インタビュアーが登場人物それぞれに面談を行った、その会話記録を文章化されたものが読者に提示されるという形式です。

 アメリカ合衆国サウスダコタ州の片田舎デッドウッドに住んでいた少女ローズ・フランクリンは、誕生日に買ってもらった自転車に乗り森に出かけたとき、足元が崩れて落下し意識を失いました。翌朝、ローズは無事保護されたのですが、彼女が倒れていたのは穴の底、手をかたどった巨大な造形物の上だったのです。
 洗練された金属製の手と、同時に発見された謎の文字が刻まれたパネルは、そこに存在するはずのないものでした。それらを回収し調査を始めた米軍は、三千年以上前のものらしいという分析結果を得たのですが、その時代のアメリカ大陸に金属の手を作れる文明はなく、別の場所から運んでくることも不可能です。分析は誤りだとさられ、軍の倉庫に眠ることになりました。
 ローズが成人して物理学者になったとき、シカゴ大学が謎の遺物の調査を引き継ぐことになり、他ならぬローズがその研究を任されることになります。ローズは手を調べ、それがほぼイリジウムでできていることから、人類の作成したものではないと結論付けました。そしてローズは、その遺物が発見されたのは偶然ではなく、人類の原子力活動をきっかけとして地中から出現したのではないかと推測します。
 彼女の予想は的中し、世界中から手と同じ素材でできた体のパーツが次々と見つかり始めました。それらを極秘裏にアメリカへ集めるための計画が発動し、パーツはローズの率いるチームの元へ集められました。驚くことに、それは単なる彫像のパーツなどではなく、超技術により作成された機械、巨大ロボットだったのです。
 ロボットのパイロットに選ばれた者達の愛憎、思いもよらぬ事故、そして……。古代の巨神を蘇らせるというプロジェクトは、果たしてどこへ向かうのでしょうか。

 本書の注目ガジェットは、もちろん巨大ロボットです。
 元々ローズが発見した金属の手は、手首から中指の先までが六・九メートルというサイズで、その九割近くがイリジウムでできています。しかし、組成から予想される重さの十分の一しかないという奇妙な性質を持っています。
 このイリジウム、全元素の中でオスミウムに次ぐ比重を持つ極めて重い金属で、地表ではほぼ見つからないというレアメタルです。これほど大量のイリジウムを入手するのは、地殻の下まで掘り進むか、あるいは地球外の小惑星などから採掘する以外に方法がなく、このことからローズは地球人類に作成不可能と結論づけた訳ですね。
 中盤にさしかかる辺りでパーツは全て回収され、巨大な古代のロボットが復元されることになります。ロボットは女性の姿を模していて、概ね人間と同じ体型ですが、足だけは余分に関節が一つあります。馬の後ろ脚やダチョウの足に似ているとされ、膝に相当する部分が人間とは逆向きに折れ曲がることから、おそらくは趾行型の脚なのだろうと思われます。
 胸部には人(?)の搭乗する部分があり、二人のパイロットが上半身・下半身を分担して操縦するように作られています。それぞれ、着込むような形の装具で操作を行うことになりますが、下半身側はロボットと同じく逆関節状になっており、操縦者が人間ではなかったことを伺わせます。当然、現代人にはそのまま下半身側を操縦するのは困難な訳ですが……。
 後半では、ある筋よりロボットの総称がティタニ、個体名がテーミスであるらしいとの情報が得られます。ギリシア神話などとの関連性を示唆する名称ですね。
 なお、ロボットの全高が「六十メートル超」と紹介されることが多いのですが、これは手首と前腕が見つかった時点における人間と同等のプロポーションを想定した推定値で、作中では明確な表記はありません。脚が二関節からなることや、高さが「二十階建てのビルほど」と表現される箇所がある(アメリカだと、ビル一階分は四メートル程度?)ことから、もう少し大きい可能性もありそうです。

 物語はほぼ登場人物へのインタビューの形で構成され、一部に日記や無線交信記録、ニュース記事が入ります。一般的な小説の形を取っているのは、ローズの一人称で綴られるプロローグのみです(^^;)
 主要なキャラクタは、発見者でありプロジェクトを指揮するローズ・フランクリン、遺物発見でなし崩しに巻き込まれたヘリパイロット(後にロボット自体のパイロット候補)のカーラ・レズニックとライアン・ミッチェル、言語学者のヴィンセント・クーチャー、遺伝学者アリッサ・パパントヌといった辺りです。
 しかしながら作品を読み進めると、作中では一切名前が出ない匿名のインタビュアーが、極めて重要なキャラクタであることにすぐ気づくことになるでしょう。インタビュアーはプロジェクトの真の黒幕で、NSA(米国家安全保障局)を顎で使い大統領すら歯牙にもかけない権力を持つ、おそらくは壮年~熟年期のアメリカ人男性です。インタビューには常に丁寧でいささか慇懃無礼な態度で臨んでおり、必ずしも冷酷という訳でもないのですが、プロジェクト推進のために時として非情な選択も辞さない冷徹さを持ちます。謎多き人物ですね。

 さて、『巨神計画』(原題:"Sleeping Giants")は"The Themis Files"三部作の第一部ということで、物語自体は一区切り付くものの、実に良いところで終わります(笑)
 最終段落で登場する彼女は、果たしてどういう位置付けなのか。物事を強引に進めるインタビュアーの動機はなんなのか。そして題名が"Giants"と複数形である意味は――。
 続刊に期待大ですね。

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