第二段階レンズマン

[題名]:第二段階レンズマン
[作者]:E・E・スミス


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 『第二段階レンズマン』は、〈レンズマン・シリーズ〉の三作目です。
 本書では敵勢力ボスコニアの頂点である謎の種族エッドール人がようやくその姿を(ちょっとだけ)現します。また、第二段階レンズマンそろい踏みやレッド・レンズマンの誕生など、注目要素も盛りだくさんです。
 さらに、惑星クロヴィア付近におけるシリーズ最大規模の大艦隊戦も見逃せません。旗艦Z9M9Zに率いられる銀河パトロール隊の戦艦群。対するはボスコニアの無敵艦隊。宇宙を飛び交う光線とネガスフィア。そしてクロヴィア星系を守るのは、銀河パトロール隊の切り札である超兵器――太陽ビーム。
 互いに相容れない二つの勢力、銀河文明とボスコニアはついに対決の時を迎えます。そしてその戦いを有利に導くため、キニスンはボスコーン中枢に潜入するという危険な賭けに出るのです。

 前作の末尾でボスコーンを操るアイヒ族の惑星を破壊することに成功した銀河パトロール隊。キニスンは全てが終わったものと信じ、愛するクラリッサと結婚しようとしていました。
 ところがそこに、アリシア人のメンターから思考通信が届きます。彼はキニスンが大きな見落としをしていると言うのです。キニスンは憤懣やるかたない様子ながらも言われた通り思考し、そして愕然とします。アイヒ族がボスコーンの頂点であった証拠がどこにもないことに気付いたからです。二人は泣く泣く結婚を先延ばしにすることとし、キニスンは再びボスコーンを探る任務に就いたのでした。(もっと前もって言ってあげればいいのに、メンターも意地悪ですよね(笑))
 キニスンはボスコーンの更なる上層組織を求めて探索を開始します。その過程で、膨大な数のレンズマンによるレンズ交信会議が開かれるのですが、ここでキニスンは今まで知らなかった第二段階レンズマン、ナドレックと知り合います。
 また、それと平行して女系種族が支配するライレーン第二惑星でも調査を行おうとするのですけど、ライレーン人は女性のみが知性を持つ種族で、男性のキニスンは信頼を得ることができません。ここでキニスンは一計を案じ、愛するクラリッサを女性初のレンズマンに就任させ、この惑星の調査へ当たらせることにしたのでした。(彼女は自分自身を真っ当ではないレンズマン、『レッド・レンズマン』と揶揄します)
 その結果、キニスン達はついに敵の本拠地と思われるスラリス星系を突き止めることに成功します。銀河パトロール隊は来る対決の時に備え、第二銀河系にある惑星クロヴィアを決戦の舞台として要塞化しました。そしてキニスンは、例のごとく第二段階レンズマンの力を使ってボスコニアの将校ガネル大尉に成り済まし、昇進をしていくのです。キニスンが最終的に狙うのは、ボスコニア代表である独裁者アルコンの座!

 本書の注目ガジェットは、第二段階レンズマンです。
 この巻でようやく、アリシア人が画策した地球・ヴェランシア・リゲル第二惑星・パレイン系第七惑星に対する育成計画の成果、四人の第二段階レンズマンが揃います。
 四人目であるパレイン人ナドレックは、かなり風変わりな人物のようです。外観の詳しい描写はありませんが、前巻のアイヒ族や本巻のオンロー人に似た、触手を持つ極低温の冷血生物とのことです。キニスン・ウォーゼル・トレゴンシーの三人がほぼ同等の大気及び温度の惑星で生まれたのに対して、ナドレックの生まれた環境は全く異なるため、直接に会う場合には宇宙服の着用が欠かせません。
 もっとも、変わっているのはむしろ外面より内面ですね。非常に臆病で謙虚、当初の計画にないことには決して手を出さず(キニスンの目には怠惰と映る)、協調性がなく、愛情というものを理解することができません。しかしながら、アリシア人による第二段階の訓練を受けたレンズマンとして、信頼に値する仲間でもあります。しかも、単独行動ではキニスンを凌ぐほどの成果を挙げており、超優秀な人物と言えるでしょう。
 両銀河でたった四人だけの第二段階レンズマン達は、銀河文明とボスコニアの対決において主導的な役割を果たします。けれども、あくまで彼等は銀河パトロール隊のメンバーであり、決して銀河文明の支配者などではありません。ボスコニア側はそれが理解できず、実在しないスター・A・スターなる超人レンズマンの影を追いかけ続けているようですね。

 本書において、キニスン達第二段階レンズマンの活躍の場はひとまず区切りを迎えます。次巻の舞台は二十年後、いよいよ〈レンズマン・シリーズ〉の決着点である『レンズの子ら』です。

この記事へのコメント

  • ココット

    『第二段階レンズマン』 と言ったら、
    ああ、私は卑怯で怠惰で臆病者で、何の価値もない卑小な存在ですが、
    ひとつ提案させてもよろしいでしょうか……といった感じでお馴染みの(?)

    ナドレックですよねーと思ったら、やはりこの巻の特徴としての言及が!(笑)

    でも臆病なことは大切なことなんですよーって述べている書物も多い
    ですしね。確か 『宮本武蔵』 とかもそうなはず。蛮勇誇るべからず。


    壮大な艦隊戦もいいですよね。確かに醒めた目で見るとアレな部分も
    あるかもしれませんが、レンズマンシリーズは、勧善懲悪にして、派手!
    とスペースオペラとして解りやすいのが魅力ですよね。
    # だからむしろ ホースオペラ@西部劇のもじりがピッタリなのかな?(笑)


    個人的に好きなのは、「考えよ!思考せよ!キニスン!」 みたいな
    導師(メンター)の戒めと、キニスンの独白。

    難解な局面に陥ったときには、自分のもてるすべてを総動員して
    『思考せよ!思考せよ!思考せよ!』 って良いですよね(笑)


    そして最後にアルコンがアレだったのは、そういえば
    なんか覚えていたような……(笑)
    2005年11月27日 23:42
  • Manuke

    > ナドレックですよねーと思ったら、やはりこの巻の特徴としての言及が!(笑)

    ナドレック、良いですよね。
    「君、どっちかとゆーとボスコーンの方が性に合ってるんじゃない?」と尋ねたくなったりも(^^;)
    臆病なのに、実は一番スター・A・スター近い人物だったりとか。

    > 難解な局面に陥ったときには、自分のもてるすべてを総動員して
    > 『思考せよ!思考せよ!思考せよ!』 って良いですよね(笑)

    キニスン、銀河有数の天才のようですからね(^^;)
    アリシア人には、もうちょっときちんと指導してあげなよ、と思っちゃいますけど(笑)

    > そして最後にアルコンがアレだったのは、そういえば
    > なんか覚えていたような……(笑)

    まあ、彼は……ですからねー(^^;)
    2005年11月28日 00:38
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