プロテクター

[題名]:プロテクター
[作者]:ラリイ・ニーヴン


 本書『プロテクター』は、ラリイ・ニーヴン氏の未来史〈ノウンスペース・シリーズ〉に含まれる作品です。シリーズの特徴である、科学的なもっともらしさを追求しながらもどこか昔懐かしいスペースオペラに通じる楽しさは、本書でも強く感じることができるでしょう。
 舞台は二十二世紀、人類が初めて異星の知的生命と接触した海の像事件(『プタヴの世界』を参照のこと)から少し後の時代です。太陽系は再び、新たな来訪者を迎えます。
 しかし、今度もまた歓迎されざるお客様のようです(^^;) 今回のお相手は、パク人のプロテクター。かなりおぞましい姿をしています。
 しかも、パク人は我々にとって因縁浅からぬ相手だったりするのです。〈ノウンスペース・シリーズ〉世界において、パク人とそのプロテクターの設定は重要なバックボーンを成していると言えるでしょう。
 外宇宙から飛来した少々迷惑な来訪者。しかし彼との接触は、やがて訪れる大きな災いの前触れでしかなかったのです。

 数万光年の彼方より太陽系へ飛来するバサード・ラムジェット宇宙船。その中には、パク人のフスツポクただ一人が乗っていました。
 パク人の生涯は、大きく三つの期間に別れます。その三つ目であるプロテクター期となったフスツポクは事実上不死であり、実に千二百年もの時間を宇宙船の中で過ごしてきたのでした(ウラシマ効果により、船の外では数万年が経過しています)。彼は母星にある図書館の記録で、かつて宇宙へ旅立った植民者が窮地に陥ったことを知り、それを救うため銀河中心にあるパク世界から気の遠くなるような旅を続けてきたのです。
 フスツポクの宇宙船が太陽系へ接近すると、地球人はそれを察知し、太陽系外からの訪問者であることを知ります。船の侵入経路上にあった天王星のトロヤ群には、たまたまベルター(小惑星帯に住む地球人)のジャック・ブレナンが居合わせました。ブレナンは好奇心と名誉欲に駆られ、外宇宙からの宇宙船に近づきます。そしてフスツポクと接触し、彼に捕まってしまうのです。
 フスツポクは、目的の星に植民者ではない知的生物がいたことに驚き、そして失望しました。プロテクターは高い知性を持ちながら、自分の子孫を守ることにしか興味がないといういびつな存在なのです。
 ところが、囚われの身のブレナンが取った行動により、事態は急激に転換していきます。そして、人類の存亡を賭けた戦いが人知れず始まることになるのです。

 本書の注目ガジェットは、プロテクターですね。
 パク人は、その年齢により三つの期間を持つ種族です。生まれてからしばらくの幼年期、子供を作るためのブリーダー(繁殖者)期、そして自らの子供達を守るプロテクター期です。
 プロテクターになる前のパク人は知性を持ちません。幼年期およびブリーダー期には動物同然の生き物なのです。彼等はプロテクターとなったときに、高い知性、強靭な肉体、そして永遠に近い寿命を得ます。
 しかしながら、プロテクターがその力を振るうのは自分の子孫を守るためだけです。それ以外のことには興味を示さず、子孫を失ったプロテクターは生きる気力を失って死んでしまいます。まさに、名前通り『保護者』なわけです。
 パク人フスツポクは直立二足歩行をし、二本の腕を持ち、体の上部に頭部がある等、大まかな外形は人間と似ています。けれども、それぞれの関節は球状に膨らみ、皺だらけの皮膚は硬化して装甲のようになり、頭蓋骨は大きく膨れ上がっているのです。人に似た部分があるからこそ、余計におぞましい姿に感じられるようですね。
 このプロテクター、実はある状態の戯画化と言えるものなのです。本書を実際に読んで、その意味を確かめてみてください。ニヤリとさせられること請け合いです。

 〈ノウンスペース・シリーズ〉の世界では、人類の既知領域(ノウンスペース)が時代を追うごとに拡大していきます。本作の時代は、恒星間文明との接触より少し前になるようです。
 この時代では既に、人類は近隣の恒星にある複数の惑星に移民しています。ジンクス、ウイ・メイド・イット、マウント・ルッキットザット等です。けれども人類は未だ超光速移動手段を持っておらず(パク人も同様)、植民地間を旅するには光速より遅い宇宙船に頼るしかありません。このせいもあって、本書の中で扱う時代はシリーズ中の他作品と比較してもかなり長いスパンです(二百年ほど)。

 本作に登場する設定は、〈ノウンスペース・シリーズ〉の頂点とも言える『リングワールド』の舞台背景として特に重要な役割を担っています。ストーリーは独立したものですが、できれば本書を先に読んでおく方がよりお話に没頭できることでしょう。
 また、年表上で後の時代のエピソードと本書が絡んでいる部分もあります。この辺り、未来史を埋めるようシリーズを読み進めていく楽しさが味わえます。後で読み返すと「こういうことだったのか」と気付かされる、一粒で二度美味しい作品群ですね(^^;)

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