ガニメデの優しい巨人

[題名]:ガニメデの優しい巨人
[作者]:ジェイムズ・P・ホーガン


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 ジェイムズ・P・ホーガン氏の代表的な作品である〈ガニメアン三部作〉の第二巻です。
 前巻『星を継ぐもの』ではその難破した宇宙船のみが発見され、あくまで考古学的な研究対象だった異星人ガニメアンですが、本巻にはいよいよ生きている彼等が登場します。つまり、真の意味でのファーストコンタクトがなされるわけです。
 このガニメアンは、題名にもある通り非常に穏やかな性質の種族として描かれます。この巨人達の性格が、私達人類の作り上げてきた文明を俯瞰する際の対照となっているところはなかなか興味深いですね。もっとも、ホーガン氏の視点は楽天主義寄りですので、あまり自己批判的な意味合いは強くないですけど(^^;)
 ある事故に見舞われたガニメアンの宇宙船〈シャピアロン〉号。二千五百万年の時を超えて太陽系へと帰還した彼等は、自分達の種族に代わって地球人がその主となったことを知ります。

 ルナリアンに関る謎を解明してみせたヴィクター・ハントとクリスチャン・ダンチェッカーのコンビは、そのままガニメデ基地に留まり、今度は発掘されたガニメアン宇宙船の調査に当たっていました。
 ある日ハントは、宇宙船から回収された使途不明の装置に通電するという実験を行います。当初、電力を投入しても何も起きないと思われていましたが、実はそこから重力波が発せられていたことが程なく分かります。装置は重力パルス発生機だったのです。そして、その信号をきっかけに驚くべき事態が起きます。
 遥かな古代、ガニメアン文明が惑星ミネルヴァ上に存在した頃、太陽系から九・三光年離れた恒星イスカリスにてガニメアン科学者がとある実験を行っていました。しかしその実験は失敗に終わり、イスカリスはノヴァ化してしまいます。宇宙船〈シャピアロン〉号でからくも脱出したガニメアン達でしたが、減速機構が故障中のために制動が効かないという羽目に陥りました。相対論的な時間差のせいで、彼等が太陽系へ帰還するまでに船内時間で二十年、船外時間で二千五百万年が経過してしまうのです。
 〈シャピアロン〉号がようやく太陽系へと辿り着いたそのとき、重力パルス発生機の発した信号が船へと届きました。〈シャピアロン〉号は発信元である木星へと向かいます。
 そして木星の衛星ガニメデにて、二千五百万年の時を置いて生まれた二つの知的種族は、遂にファーストコンタクトを果たします。

 本書の注目ガジェットは、異星人ガニメアン("Ganymean")です。
 前作のルナリアンと同じく、発見場所である木星の四大衛星の一つガニメデ("Ganymede")にちなんで命名されたものです。こちらも発見場所がガニメデというだけなので、種族名としてはあまりふさわしくないですね(巨大衛星ガニメデ→巨人と連想できないこともない?)。まあ、得てしてありがちなことですけれど。:-)
 ガニメアンは太陽系第五惑星ミネルヴァ(かつて火星と木星の間に存在)で生まれた知的生命体で、概ね人間と似通ったフォルムをしているようです。成人の身長は二メートル半ほどで、地球人から見ると巨人ですね。肌の色は薄いグレイ、顔は面長で、頭部には長い髪を生やしています。男女の性別がありますが、外観上の違いは特に言及されていません。
 惑星ミネルヴァ固有の陸上生物には肉食動物が存在せず、ガニメアンもその性質を受け継いで温和な種族です。ガニメアン社会には諍いどころか競争という概念もなく、地位や名誉、金銭を求める欲望もありません。その代わりに、他者の役に立ちたいという欲求が社会形成の動機となっています。

 登場人物として中心となるのは、地球人側では前作に引き続きハントとダンチェッカー、ガニメアン側では遠征隊司令官ガルースと女性科学者シローヒンといった辺りですが、もう一人(?)重要なのが〈シャピアロン〉号のコンピュータ、ゾラック("ZORAC")です。ゾラックは優れた対話能力・推論能力を発揮する超AIで、地球人-ガニメアン間の通訳を一手に引き受けます。高度なユーモアを備えた、非常に魅力的なキャラクタですね。
 作中では、ガニメアンは種族的に成熟した存在と設定され、稚拙な感情や暴力的な歴史を持つ地球人との対比は「大人と子供」に喩えられます。しかし、ホーガン氏はここで人類の欠点をあげつらうのではなく、その攻撃性を学術研究や宇宙探検への衝動として昇華した未来を描いています。「未だ幼さは残すものの、才気に溢れた快活な子供」といった感じでしょうか。楽天的と称される所以ですけど、本シリーズの読後感の良さはここにあると言えるでしょう。

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