仮想現実

[キーワード]:仮想現実


 仮想現実とは、コンピュータ上に現実そのものに近い世界を構築してしまうことです。同様のガジェットにサイバーパンク系SFに登場するサイバースペースがありますけれど、サイバースペースがあくまで様々なコンピュータ上の概念をシンボルとして認識するための疑似世界であるのに対し、仮想現実は我々が良く知っている身の回りの世界に似たものをコンピュータの中に構築するという点が大きく異なります。
 仮想現実という言葉自体は、一九八七年頃にNASA関連のコンピュータシステムで使われた"Virtual Reality"の訳語で、フィクション由来ではないようです(もちろん、これ以前にもコンピュータの中に世界を作り出すというSFは存在しましたが)。訳語が適切でないという意見もあるようですが、もうすっかり定着しちゃいましたね(^^;)

 仮想現実を利用する人々は、何らかの手段を使って五感うちのいくつかをコンピュータから受け取り、コンピュータ内部に作成された世界を体験することになります。
 視覚と聴覚だけなら、現在でもヘッドマウントディスプレイやヘッドフォンを使えばある程度実現可能です。ただ、それによって体験できる世界は、まだまだ現実とはほど遠いものですが。
 多くのSFでは、五感全てをコンピュータから受け取ることにより、仮想現実は本当の現実と区別が付かない程のリアリティを持たされることになります。人間の脳というのは、神経を経由して情報を入出力するコンピュータのようなものですから、この情報をインターセプトする手段があれば現実並みのリアルな体感を味わうことも可能でしょう。こうなってしまうと、ただの擬似的なまがい物とは言えず、もはやコンピュータ内に創られた別世界と言ってもいいのかもしれません。
 仮想現実世界の物理法則は、必ずしも我々の世界と同じである必要はないようです。そもそも素粒子レベルで現実をシミュレーションするのは無理そうですから、もっと大雑把なレベルで動くものと想像できます。つまり、かなり融通が利くはずです。『剣と魔法の世界』のようなものを実現することも容易でしょう。

 仮想現実を扱うSFで良く利用される舞台設定があります。我々が現実世界と思っていたものが、実は仮想現実であったというパターンですね。前述の通り感覚全てを横取りする手段があれば、それを現実と思い込ませることは十分に可能でしょう。
 物語としての展開と同時に、読者自身の『現実』に対する不安をかき立てることができる、使い勝手の良いガジェットです。この唯我論的、あるいは『胡蝶の夢』的な構図はそれだけでかなりのインパクトがある悪夢ですから(^^;)
 現実にも、視力や聴力を失った方のために神経を直接刺激してそれらを回復する手法が実現しつつあります。つまり、本当の現実のように感じられる仮想現実というものは決して絵空事ではないばかりか、実は意外に近い将来実現するかもしれないのです。身の回りの世界が偽物だった、という設定のお話は昔から存在しますけど、仮想現実は実現する可能性が高いためにより説得力を持ちますね。

 さて、私達の身の回りの『現実』は、本当は仮想現実だったりしないでしょうか? まあ、いくら考えても答えのでない問いですから、疑うだけ無駄なんですけど(^^;)
 ただ、もしそうだとしたら、一つ断言できることがあります――この世界を設計したエンジニアさん、かなりのヘボです(笑)

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック