サンダイバー

[題名]:サンダイバー
[作者]:デイヴィッド・ブリン


 広大なスケールと長大な歴史を持つ銀河文明、跳梁跋扈する奇妙な異星人達、孤独な地球種族、様々な度肝を抜くガジェット――本書はブリン氏の代表作〈知性化シリーズ〉の最初の作品です。同時に、氏のデビュー作でもあります。
 本シリーズは科学的考証を兼ね備えたスペースオペラ風の作品群という意味で、ラリイ・ニーヴン氏の〈ノウンスペース・シリーズ〉に通じる部分がありますね。ただ、〈知性化シリーズ〉の方がよりエンターテイメント色が強く、そしてより荒唐無稽です(^^;)
 〈知性化シリーズ〉の一番の魅力は、虐げられる地球人が知恵と勇気で苦難を乗り切る痛快さにあると言えるでしょう。本書『サンダイバー』も、そうした主人公ジェイコブの活躍が見られるミステリー仕掛けのお話です。
 そしてもう一つ忘れてはいけないのが、太陽へと近づいて調査を行うサンダイバー計画そのものですね。六千度という超高温の太陽表面へ接近可能な探査船サンシップと、豊富な科学知識で流麗に描かれる太陽の情景。宇宙SFとしても十分に読み応えのある作品なのです。

 物語の紹介へ入る前に、〈知性化シリーズ〉のバックボーンを説明しておきましょう。
 この世界における数十億年前、〈始祖〉と呼ばれる種族が独力で進化し、宇宙へと進出を果たします。そして〈始祖〉は、別の星に存在した準知的生物達を知的生命へと人工的に進化させました(これを知性化と呼びます)。知性化された種族はまた別の準知的生物を――といった具合に、連綿と系統樹のごとく知性化の連鎖が続いていくことになります。これが〈知性化シリーズ〉における銀河文明です。
 つまり、〈始祖〉を除く全ての知的生命体は他種族によって知性化されています。そして〈始祖〉は既に姿を消しており、その存在や行方は謎となってしまいました。今や〈始祖〉は銀河文明の各種族によって神格化され、崇められているのです。
 この舞台に突然、地球種族が参入してきます。地球人を知性化した種族はどこにも見当たらず、彼らは独力で進化したように見えます。この事実は大多数の銀河文明種族の教義とは相容れないため、不興を買うこととなりました。しかしながら、地球人が既にチンパンジーとイルカを知性化していたことから、一人前の知的生物であると認めざるを得ません。
 このように地球人達は孤児種族として蔑まれ、肩身が狭い状態なのです。数十億年にわたる科学知識を蓄積してきた銀河文明と比して、持てる力もわずかです。地球はごく少数の好意的な銀河種族を除き、多数の敵対種族と渡り合っていかねばならないのでした。

 『サンダイバー』の物語は、基本的に一人の男性の視点から語られることになります。
 ジェイコブ・デムワは知性化計画の監督者として、イルカの知性化に関わっています。彼はかつて科学犯罪調査官として数多くの謎を解き、難事件を解決した人物でした。しかし、ある事故を防ぐ過程で恋人を亡くし、ジェイコブは今なお内面に傷を負ったままです。
 その彼が、地球人に好意的な異星人ファギンの勧めにより、サンダイバー計画へと関わりを持つことになります。太陽表面に生息する生物が発見されており、ジェイコブを良く知るファギンは彼の協力が役立つと考えたためでした。乗り気ではなかったジェイコブですが、なし崩し的にサンダイバー計画へと近づくことになってしまいます。
 しかしここで、チンパンジー科学者ジェフリーの乗った探査船が突如爆発するという事態が発生しました。しかもそれは事故ではなく、何らかの人為的な意図が関わっているようなのです。
 ジェイコブはこの事件を解決に導くことができるのでしょうか。そして、太陽表面に生息する生物との関わりはどうなるのでしょうか。

 本作における注目ガジェットは、太陽探査船サンシップです。外観は鏡面仕上げの球体で、銀河文明の技術と地球固有の技術の双方を使って作られています。
 銀河文明由来のものは、重力場発生装置や時間流制御装置など、我々が知り得ないスーパーテクノロジーです。太陽表面での重力は約28Gと、とてもではありませんが普通の人間には耐えられない強さですから。その助力があって初めて、サンシップは人を乗せて太陽へと近づける訳です。
 けれども、サンシップの本質は我々が知る技術の延長にあります。その最たるものが冷却レーザーですね。どのような仕組みで超高温の光球へ接近しても溶けてしまわないのか、それは実際に読んでみてご確認ください。
(このシステム、ブリン氏のお気に入りのようです(^^;))

 本書は〈知性化シリーズ〉に属していますが、続く作品群とは一つ大きな相違点がありますね。『スタータイド・ライジング』等では、圧倒的な数の登場人物とめまぐるしく変化する視点が作品の一つの売りです。しかし、『サンダイバー』ではほぼジェイコブ一人の視点から物語が語られることになります。
 もっとも、それ以外の部分では〈知性化シリーズ〉らしさが盛りだくさんです。
 特に重要なのは、多種多彩な異星人達でしょう。樹木にしか見えないカンテンは数少ない地球人の理解者で、ジェイコブの友人ファギンがこれに属します。さらに、身長百二十センチメートルのテディベアのようなピラ、そしてピラに知性化されたヒューマノイド・タイプのプリングが物語に登場します。
 また、太陽表面に生息する生物も見逃せません。磁食生物トロイド、そして二つの形態を持つサンゴースト。それらにまつわる謎が、本作の根幹に繋がります。
 ジェイコブがいかに全ての謎を解き明かすのか、ミステリー的な面白さも本書の醍醐味と言えるでしょう。

この記事へのコメント

  • ココット

    キュピーン!
    サンダイバーキター!

    たといどんなに忙しくても、この一言だけは譲れないのです(笑)
    2005年09月03日 02:53
  • Manuke

    『サンダイバー』は加藤直之氏の手による表紙イラストも素晴らしいですね~。
    躍動的な太陽表面と、湾曲したプロミネンスを映り込ませたサンシップが実に美しいコントラストになってます。
    2005年09月04日 22:28
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