がんばれチャーリー

[題名]:がんばれチャーリー
[作者]:ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン


 本書はユーモアSF〈ホーカ・シリーズ〉の第三弾に当たる作品です。
 但し、惑星トーカを主な舞台とした短編からなる前作までとは少し様相が異なり、『がんばれチャーリー』は別の未開惑星ニュー・レムリアを舞台とする長編小説です。全権大使アレックスは出てきませんし、登場するホーカも一人だけです。言うなれば、番外編的なエピソードですね。
 もっとも、トラブルを招く能力に関してはホーカが一人いれば十二分だと言えるでしょう(^^;) この「ごっこ遊び」大好きなテディ・ベア型生物のせいで、登場人物達は大いに振り回されることになるわけです。
 また、本書は主人公が少年ということもあって、その成長の要素を含んだジュブナイル的な側面もあります。少々頼りない感じのチャーリーがこの一連の出来事を経てどう変わっていくかは、本書の見所の一つです。
 たまたま立ち寄った惑星ニュー・レムリアで、物見遊山に出かけた少年チャーリーとその家庭教師バートラム。ところが、バートラムのホーカ的気質のせいで、チャーリーはとんでもないトラブルに巻き込まれてしまうのです。

 貨物宇宙船の船長マルカム・スチュアートの息子チャーリー・スチュアート(地球人)は、父に同行して辺境世界を旅行中でした。チャーリーが少々本にかじりついてばかりだと心配した両親は、彼の見聞を広める必要があると考えたためです。
 そして、チャーリーには家庭教師バートラム・セシル・フェザーストーン・スミス・チャムリイが付き添っていました。バートラムは「ごっこ遊び」好きで知られるホーカで、今はオックスフォードの教授になりきっていましたが、知識豊富かつ腕っ節も強いことからマルカムは彼を信頼しています。
 そのマルカムの率いる貨物船が未開惑星ニュー・レムリアに着いたとき、積み荷の手配の不備から足止めを食ってしまいます。その時間を利用して、チャーリーはニュー・レムリアの見学旅行をしたいと言い出しました。駐ニュー・レムリア大使のポンフリイは、不穏な情勢を理由に旅行をやめるよう忠告しますが、バートラムは強引な理屈でそれを言いくるめてしまいます(^^;)
 そして、チャーリーとバートラムは惑星ニュー・レムリアのタリイナ王国を旅行することになりました。現地人のトレグに案内された二人は王国内を巡りながら、王オラギの下で民衆は圧政に苦しんでいること、それでもなお人々は平穏に暮らしていることを見て取ります。
 宿に到着した後、酒好きのホーカであるバートラムは早速酒盛りを始め、居合わせた近衛部隊長ミシュカと意気投合してどんちゃん騒ぎになりました。チャーリーは早々に寝てしまい、翌朝目を覚ましたときに事態が一変してしまったことを知ります。
 ニュー・レムリアには古くから伝わる、人々が暴君に苦しめられたときに現れるという赤毛の王子の伝説がありました。バートラムはそれを聞いて感化され、自分は十八世紀スコットランドの騎士であり、チャーリーは王位を追われた若僭王チャールズ・エドワード・スチュアートその人だと思い込んでしまったのです(名前の一致は、そもそもチャーリーの名前が若僭王にちなんで付けられたもの)。バートラムは早速ヘクター・マクレガーと名を変え、タータンチェックの衣装を身に付けている始末でした(笑)
 しかもヘクター(元バートラム)のせいで、ニュー・レムリア人達もまたチャーリーのことを伝説の王子だと信じ始めていました。悪いことに、チャーリーは赤毛だったからです(^^;)
 突如としてニュー・レムリアの革命劇に巻き込まれることとなった我等がチャーリー少年。果たして彼の運命やいかに。

 本書の注目ガジェットは、惑星ニュー・レムリアです。
 ニュー・レムリアは太陽系から二百光年の距離にある恒星を公転する惑星で、環境的にもそうですが、その住人も地球と良く似ています。このため、汎生物連盟はその指導役として地球人を選んだとのこと。
 とは言うものの、ニュー・レムリア人は少々人間の目には奇妙に映るようです。胴体がずんぐりしているのに対して足は長く、がっちりした頭部には白目のない大きな緑の目・ぺちゃんこの鼻・自由に動く突き出た耳が付いています。また、頭のてっぺんからはとさかのような青い髪の毛が生えています(つまり、赤毛のニュー・レムリア人は存在しません(^^;))。
 社会は前近代的で、絶対君主制により成り立っています。兵士のような職業の者はいささか喧嘩腰の口調で会話するようですが、基本的に人々は朴訥で、農村部には平穏な暮らしがあります。大体、中世ヨーロッパのパロディといった感じですね。

 チャーリーが間違われてしまう伝説の王子は、人々が圧政に苦しめられているときに颯爽と現れ、五つの偉業を成し遂げた後に悪逆な王を追放するのだと言われています。ヘラクレスの十二の難業のようなものですね。
 その内容は、「一・親友の頭上の果物を弩で射抜く」、「二・“アヴィリョーの嘆き”と呼ばれる謎の怪物を殺す」、「三・ベローの町で人々を食いものにしている三兄弟を倒す」、「四・僧の出す三つの謎に正解する」、「五・高潮で海に没する洞窟の中に入って満潮を過ごし、無傷で出てくる」というものです。
 結果的にチャーリーはこれらの偉業に挑戦しなければならない羽目になるわけです。ただ、そう仕向けた地方貴族のゼンコ卿はチャーリーが伝説の王子などではないことを承知しており、状況を利用してオラギ王を倒そうとしている辺りがなかなか食えないところですね。
 もっとも、基本的にはコメディですので、それほど深刻な状況に陥ることはありません。「三つの謎」の下りなどは、カリカチュア的なニュー・レムリア人神官とチャーリーのやり取りが実に愉快ですね。

 本書は一応〈ホーカ・シリーズ〉に属する作品ではありますが、バートラム(ヘクター)はあくまで脇役であり、物語を動かしていくのはチャーリーとニュー・レムリア人達です。文明的には遅れているものの、様々な立場や思惑のあるニュー・レムリアの人々と接することで、チャーリーは頭でっかちの少年から一歩成長することになります。そしてまた、惑星ニュー・レムリアにもチャーリーとの関わりにより変革がもたらされるわけです。
 バートラム(ヘクター)は冒頭で騒動の種を蒔く等、ストーリー中では狂言回し的な役割を果たしていますが、しかし実はチャーリーに対する教師としての責務もきっちりとこなしています(一見、スコットランド人ごっこに興じているだけにも見えますけど(笑))。第一作『地球人のお荷物』及び第二作『くたばれスネイクス!』ではあくまで庇護される対象だったホーカも、このお話では(悪乗り気質はそのままながら(^^;))れっきとした責任感ある異星人(?)へと成長しているわけですね。〈ホーカ・シリーズ〉のエピソードとしては、ここも要注目と言えるかもしれません。

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