星ぼしに架ける橋

[題名]:星ぼしに架ける橋
[作者]:チャールズ・シェフィールド


 本書は作中に無数のSFガジェットが散りばめられた、ガジェット・ストーリーと呼ばれるグループに属する作品です。しかも、それぞれのガジェットは決して荒唐無稽なだけとは言い切れません(技術的困難は軽視されていますが)。
 例えば、ビーンストーク(豆の木)というガジェットが登場します。これは全長十万キロメートルにも達する、巨大な宇宙エレベータのことです。本作の表看板として、設計から完成に至るまでの流れが壮大なスケールで描かれ、息を飲まされます。
 もっとも、本書のメインストーリーはどちらかというと、その裏側で進行していくミステリータッチの物語の方だと言えるかもしれません。両親の死を探るロブ・マーリンの意図は、どのような結末へと結びつくのでしょうか。

 物語はまず、一組の夫婦から始まります。マーリン夫妻は抗老化研究所に勤める科学者ですが、とある秘密を知ってしまったことにより身の危険にさらされます。そして夫グレガーは研究所で焼死、身重の妻ジュリアも飛行機の墜落により脳死してしまうのでした。しかしながら未だ生命を保っていたジュリアの体は、墜落先の南極地表で子供を産み落とします。
 時は流れ、夫妻の子供ロブ・マーリンは若き工学者へと成長していました。彼はスパイダーと名付られけた工作機械を作り出したことにより、台湾橋の建設という大事業を成功させ、一躍有名になります。
 そこへ、ロケット王(鉄道王のロケット版)ダリウス・レグロがロブに接触を図ってきます。本来接点のないレグロが自分に声をかけてきたことを訝しく思いながらも、ロブはレグロのところへ趣きました。すると、レグロはロブに対してビーンストークの建設を提案してきたのです。すっかりそのスケールに魅せられたロブは、レグロに協力することにします。
 けれどもその後、レグロ配下の生物学者ジョーゼフ・モレルが何やら両親の死に関わりのあることが分かってきます。宇宙エレベータ建設と、両親にまつわる謎の究明――物語はその二つを軸にして進んでいくのです。

 本書の注目ガジェットを一つに絞るのは難しいですね。と言うのも、このお話は作中に興味深いガジェットが氾濫していますから(^^;) しかし、あえて選ぶとしたらやはりビーンストークでしょう。
 ビーンストークとは、前述の通り宇宙エレベータのことです。ロブの発明物スパイダーは欠損のない長大な単繊維ケーブルを一気に成型する機械であり、これによって初めてビーンストークを作ることが可能となります。
 本作のビーンストーク作成過程は、非常に大胆かつダイナミックですね。同じ宇宙エレベータをテーマに小説を書いたアーサー・C・クラーク氏が本書の序文を書かれているのですが、その彼に「身の毛もよだつ」と言わしめているほどです(笑)
 ただ、『星ぼしに架ける橋』の建設方法はクラーク氏の『楽園の泉』より合理的だという話もあります(難易度はともかく)。また、SF的な見栄えは明らかに本書に軍配が上がるでしょう。

 その他にも、レグロの住む奇妙な小惑星アトランティス、その真の主キャリバン、小惑星からの資源採掘方法、ビーンストークの更なる発展形、そして両親の死に関わるゴブリンなど、とにかくこのお話にはアイディアがいっぱいです。
 と言うより、ガジェットこそがこのお話の肝ですね。そちらにページを多く割いているせいか、ストーリー展開はやや後半急ぎ足になります。そこには少々目をつぶるということで(^^;)
 とにかくSF的アイディアで読者を幻惑してくれる本書、良い意味でB級テイストあふれる楽しい作品です。

この記事へのコメント

  • goldius

    ビーンストークの更なる発展形に萌えました。あんなイメージの未来宇宙を考え付いたシェフィールドは天才だと思いました。
    2007年07月21日 09:33
  • Manuke

    リアルさとイマジネーションのバランスが素晴らしいと思います。
    科学的考証をしっかり行いながらもこぢんまりと纏まらず、想像力を駆使して未来世界を描いてくれるのがシェフィールド氏の持ち味ですね。
    2007年07月22日 23:49

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