くたばれスネイクス!

[題名]:くたばれスネイクス!
[作者]:ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン


 可愛らしいテディ・ベア型異星人の引き起こす愉快な騒動を扱ったユーモアSF、〈ホーカ・シリーズ〉第二弾です。
 今回もまた彼等による抱腹絶倒の珍事件が続発し、主人公アレックスの神経をすり減らしてくれます(^^;) しかしながらアレックスもまた状況に馴染んできたようで、ときどきホーカばりの演技力を発揮して事態の収拾を図ります。気苦労が耐えない彼ではありますが、決してホーカを見捨てようとしないのが実に立派ですね。もしかすると、アレックスにとってホーカ達は我が子のような存在なのかもしれません。
 ごっこ遊びが大好きな類熊族ホーカが今回夢中になっているのは野球でした。彼等はそれぞれ大リーグ史に残る名選手に扮して、トカゲ型異星人・サレン人との試合に望むのですが……。

 全権大使アレグザンダー・ジョーンズ(アレックス)の尽力のおかげで次第に文明化されつつある惑星トーカ。その住人である、ぬいぐるみの熊そっくりの生物ホーカは、相も変わらず「ごっこ遊び」大好きの陽気な連中です。
 そのホーカが現在夢中になっているのは、地球を起源とするスポーツ・野球でした。この時代、宇宙では異生物同士の野球トーナメント・銀河リーグが行われており(但し、参加人数が多いためシリーズが何世紀にも渡ります(^^;))、ホーカ達もそこへ〈ホーカ・テディーズ〉というチーム名で参加していたのです。ホーカはかなりの力持ち、かつ器用な種族ですので、新参ながらも扇形星区の優勝候補にまで頭角を現しています。
 もっともホーカのことですから、ただ単に野球をプレイするだけには留まるはずがありません。マウンドに上る選手達はジョージ・ハーマン・ルース(ベーブ・ルース)、“教授”(ケイシー・ステンゲル?)、“レフティー”(ロバート・M・グローブ?)、そして“マイティー”ケイシー(野球の試合を詠った詩"Casey at the Bat"に登場する架空の強打者)と、すっかり二十世紀頃の大リーガーになり切っているわけです(笑)
 対戦相手は、同じ星区に属するこちらも優勝候補、爬虫類型異星人サレン人の〈サレン・スネイクス〉です。ところがこの連中はスポーツマンシップを解さない種族で(このため、ルール・ブックに「サレン人はスポーツマンシップを守らなくていい」と書いてあります(^^;))、ホーカの選手に酒を奢ってへべれけにし、試合に負けたら惑星トーカのウラニューム鉱使用権を譲ると約束させてしまいました。
 ホーカはアレックスの庇護下にありますからこの約束自体は無効ですが、代わりにアレックス自身がその査定価格相当のお金をサレン人に支払わなくてはなりません。つまり、試合に負けたらアレックスは身の破滅です(^^;)
 更に悪いことに、サレン人がふかす悪臭のする葉巻のせいで、酒に強いはずのホーカ達はすっかり悪酔い状態でした。〈テディーズ〉選手は皆千鳥足で、打席に立つのもやっとな有様です。
 果たしてアレックスは、この大ピンチをどう切り抜けるのでしょうか。

 本書の注目ガジェットは、汎生物連盟です。
 〈ホーカ・シリーズ〉世界では、人類は宇宙への進出を果たし、多数の異星人と交流を図っているようです。この惑星間を取りまとめる組織は汎生物連盟と呼ばれ、様々な種族から構成されています。地球人はこの中で、わりと指導的立場にあるようです。
 前作でアレックスが全権大使に就任してから十年以上が経過しており、ホーカ達も他の星と交流する機会が増えたことから、本作では幾種類かの異星人が登場します。
 前述の卑劣な爬虫類種族サレン人に加え、小さい体に大きな頭の半人類・リシャナ人、人間に似ていますが角と尻尾・尖った耳を持つウォーベン人、大柄で毛むくじゃらのチャクバ人と、いずれも一癖も二癖もある変な種族ばかりですね。
 中でも面白いのは、惑星ブロブディングナグ出身のブロブ(地球人には上手く発音できないため、アレックスが付けた呼び名)です。
 ブロブはかなりの巨体で、タテゴトアザラシの子供が直立したような姿をしています。化学反応ではなく核分裂反応によって代謝を行い、空気を必要とせず、大砲の一撃を食らってもびくともしない頑丈な体を持つ種族です。
 その肉体的な強靭さとは裏腹に、ブロブは平穏を愛する穏やかな精神を有しています。そのせいなのか彼は日本文化に傾倒しており、宇宙船の自室は思いっきり日本かぶれ状態です(笑) 壁には富士山を描いた掛軸が掛かり、その下には百合の花が活けられているといった具合に。もっとも、代謝の違いはいかんともしがたいようで、茶の湯は何やら得体の知れない液体へとアレンジされているようですけど。
 超光速で驀進する宇宙船の中で、巨大な直立アザラシ状生物が畳の上で正座しながら、心静かに放射能を帯びたお茶を立てている――シュールなのにどこか微笑ましいですね。:-)

 本書に収録されているのは、『くたばれスネイクス!』/『スパイを捕まえろ』/『ホーカミの群』/『ナポレオン事件』の四つのエピソードです。
 これらのエピソードの中でホーカ達がごっこ遊びに興じる対象はそれぞれ、メジャーリーグ・ベースボール、冷戦時代のスパイ、ジャングルの動物達(児童書『ジャングル・ブック』ごっこです)、十九世紀初頭のヨーロッパにおける軍隊(ナポレオン戦争)となっています。
 一つ注意して欲しいのは、表題作『くたばれスネイクス!』における野球の詩"Casey at the Bat"(打席のケイシー)の扱いですね。読み進めるにあたって必須という訳ではありませんが、この詩がどういう内容で、アメリカの野球ファンにどう愛されてきたのかを事前に知っていると、お話が俄然面白くなります。
 ホーカは種族的にお遊び好きで天衣無縫、宇宙随一と言っていいほどの飲んだくれで、計画性や協調性は皆無に等しいと、可愛いながらも非常に困った存在です。ところが、アレックスらが見落としたものを見抜いたり、スポーツで大活躍したりと、潜在能力は決して侮れません。外見の愛らしさと相まって、こうした部分がアレックスの庇護欲をかき立てるのでしょうね。
 それにしても、身長一メートルのぬいぐるみに似たクマ公がプレイする野球の試合、一度見てみたいと思いませんか?

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