軌道エレベータ

[キーワード]:軌道エレベータ


 軌道エレベータとは、地球の赤道上から宇宙まで伸びる巨大なエレベータのことです。宇宙エレベータ、軌道塔、スカイフックなどと呼ばれることもあります。全長数万キロメートルに及ぶ、超巨大構造物です。
 莫大な燃料を噴射しながらようやく衛星軌道に辿り着くロケットと違い、軌道エレベータはケーブルを伝って上っていくだけですから、遙かに経済的です。しかも、下りは回生ブレーキで発電することができますので、登りに必要な電力のかなりをそれでまかなうことができるのです。

 軌道エレベータの原理は意外に単純です。要するにこれは、非常に縦長の静止衛星とみなすことができるのです。
 地球の赤道上空約三万六千キロメートルに静止衛星軌道があるのはご存じのことでしょう。ここを円軌道で周回する物体の公転速度は地球の自転速度と等しいため、地表からは静止して見えるわけですね。
 ここに途方もない長さの棒を縦に置いてみることにしましょう。そう、下の端が地面に届いてしまうぐらいの、です。
 静止衛星軌道より上の部分は、遠心力が働いて上に引っ張られます。また、軌道より下では重力が勝ちますから、当然下に引っ張られます。この双方の力が均衡するようにうまく配置してやれば、棒は安定してその場に存在することができます。これが軌道エレベータなのです。
 ただし、計算してみると分かりますが、遠心力は重力に比べるとかなり小さなものです(重力は距離の逆自乗に比例、遠心力は距離に比例)。このため、ただ棒を延長していくのではなく、代わりに先端に錘を付けておくのがいいようですね。錘にはエレベータの材料にする小惑星をそのまま使ったり、宇宙ステーションを置いたりします。

 軌道エレベータのアイディアが最初に世に出たのは一九六〇年ですが、長らく空想上のものでしかありませんでした。
 全長数万キロメートルという地球の直径より遙かに長いスケールもそうですけど、何より問題なのは、その張力に耐えられる素材がなかったことですね。鋼鉄線は必要とされる強度の百分の一しかありませんし、軽いケブラー繊維でも二十分の一以下です。
 ところが最近、カーボンナノチューブという新素材が脚光を浴びるようになってきました。一九九一年に発見されたこの物質は炭素が筒状に並んだ構造をしており、非常に軽く、かつ引っ張り強度はダイヤモンドすら上回るという性質を持っています。
 今はごく短いチューブしか作成できないのですが、なにしろ発見されてから日の浅い物質です。いずれは長大なものを作り出すことができるかもしれません。そうなった暁には、軌道エレベータ建設も夢ではなくなります。

 軌道エレベータには、いくつかの派生概念があります。
 そのひとつが、非同期軌道スカイフック(ロータベータ)です。これは静止軌道よりずっと低い位置にスカイフックの重心を置いてしまうもので、その分技術的難易度は低くなります。ただし、静止軌道ではないのでスカイフックは地表から見てどんどん移動していってしまうことになります。
 この対策として、なんとスカイフック自身を縦回転させてしまうのです。その結果、例えば数十分おきにスカイフックの端が地表へ近づき、そして離れていくことになります。端っこが地表に降りてきた瞬間に飛び乗れば、あっという間に宇宙へと連れて行ってもらえるわけですね。言わば、スポークが一本だけの超巨大観覧車です(^^;)

 さらに、極超音速スカイフックというものも考えられています。こちらはもうエレベータの下端を地上に届かせることはあきらめ、その分さらに難易度を低くするものです。
 極超音速スカイフックでは、本体は回転せずに縦のままです。但し、その下端は地表から百キロメートルの高さをマッハ十~十五(極超音速)で動いていきます。
 このため、スカイフックへ乗るにはロケットを使わなければなりません。もっとも、この程度の高度と速度であればロケットを作るのも比較的簡単です。スカイフックに乗り移った後はそれを伝って上へ移動できますから、従来のような大型ロケットを使わずとも高軌道に荷物を運ぶことができるわけですね。
 極超音速スカイフック最大の利点は、張力がそれほど求められないことです。ケブラー繊維で充分とのことですから、今すぐにでも実現可能なのです。最初に実現する軌道エレベータは、この極超音速スカイフックなのかもしれません。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/6001838

この記事へのトラックバック