地球人のお荷物

[題名]:地球人のお荷物
[作者]:ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン


 本書は、アンダースン氏とディクスン氏の共著作品であるユーモアSF〈ホーカ・シリーズ〉の第一弾です。
 お二人ともに二十世紀アメリカにおける中堅SF作家さんですが、アンダースン氏は魔法と科学の入り交じった世界を描いた異色作『大魔王作戦』、ディクスン氏もSF的味付けが楽しいコミカル・ファンタジー『ドラゴンになった青年』と、ユーモア系の優れた作品を手がけられています。その両名がタッグを組んでコメディを書かれたのですから、面白くない訳がありません。
 このシリーズに登場するホーカこそSF史上最も愛くるしい異星人だ、と言い切ってしまっても、賛同してくださる方は少なくないでしょう。実際のところかなりの「お荷物」なのですけど、あまりに愛らしいために全て許されてしまいます(^^;)
 空軍士官のアレックスは、ある事件をきっかけに異星人ホーカと関り合うことになります。可愛らしい姿ながらも天性のトラブルメーカーなホーカ達に、彼は散々に振り回されてしまうのです。

 太陽系を離れること五百光年――星間調査隊にて星系図を作成中だったアレグザンダー・ジョーンズ小尉(アレックス)は、宇宙艇の故障により不時着を余儀なくされてしまいます。
 彼が辿り着いたのは、地球にそっくりの惑星トーカでした。そして、その惑星には二つの知的種族が住んでいたのです。
 そのうちの片方は、ホーカ族と呼ばれるテディ・ベアそっくりの生物でした。未開の種族ながらも飲み込みが早く、そして虚構と現実をごっちゃにしてしまうという性質があります。
 かつて惑星トーカを地球からの第一次探検隊が訪れたとき、ホーカ達は人間に感銘を受け、尊崇の念をもって迎えました。そして隊員がたまたま所持していた西部劇映画を見て、大はまりしてしまったのです。
 それから三十数年が過ぎ、アレックスが不時着した時点では、ホーカ族の文明はすっかりアメリカ西部劇に毒されていました。ホーカ達はテンガロン・ハットと深紅のハンケチ、コルトの拳銃を身に付け、惑星トーカのもう一方の知的生物・スリッシー族をインディアンに見立てている有様です。種族丸ごとが西部劇ごっこをしているようなものですね(^^;)
 一方、勝手にインディアンにされてしまった好戦的トカゲ型種族のスリッシーは、ホーカが地球人から学んだ技術を盗み取り、勢力を伸ばし始めていました。ホーカはお気楽な性格かつ協調性がないため、スリッシーに対抗できません。
 それを知ったアレックスは、ホーカには強力な指導者が必要だと考え、自分が彼等を助けてやろうと申し出ます。ところが、馬(と名付けられた乗用爬虫類)にも乗れず、投げ縄もできず、満足に拳銃も扱えないとあって、アレックスはホーカの尊敬をすっかり失ってしまいました。
 町一番の無能が就かされる職業・保安官に任命されたアレックス(ホーカは西部劇をかなり誤解しています(笑))。このままホーカ達がスリッシーに駆逐されてしまうのを、指を咥えて見守るほかないのでしょうか。

 本書の注目ガジェットは、ホーカ族です。
 クマのぬいぐるみそっくりの外観を持つ類熊族で、身長は一メートルそこそこ、ずんぐりむっくりの体つきをしています。また、アルコールに強く、かなりの飲ん兵衛です。
 性格は陽気でお気楽、平和的な種族ですが、困ったことにフィクションと現実の区別が付きません。このため、地球からもたらされた数々の小説や演劇、映画にたちまち感化され、登場人物になりきってしまうわけです。
 この『ごっこ遊び』をしているホーカ達は名前を地球風のものに変え、衣装を揃え、すっかり地球人になったつもりなのですが、実際にはクマ公なわけですから色々と矛盾が生じます。しかし、少々のちぐはぐは気にせず適当に済ませてしまう辺りにホーカ族のおおらかさが表れていると言えるでしょう(^^;)
 また、悪乗りが大好きではあるものの、本質的に平和的であるため、血なまぐさい面は真似しないようです。海賊に扮したホーカは荒くれ者っぽい言動を取りますが、実際に他人を傷つけることなど怖くてできません。実に愛すべき異星人ですね。

 本書に収められているのは、『ガルチ渓谷の対決』/『ドン・ジョーンズ』/『勧め、宇宙パトロール!』/『バスカヴィル家の宇宙犬』/『ヨー・ホー・ホーカ!』/『諸君、突撃だ!』の六エピソードです。
 各話でホーカが夢中になっている対象は異なり、それぞれアメリカ開拓時代、十七世紀スペイン王宮(つまり『ドン・ファン』ですね)、スペースオペラ(〈レンズマン〉っぽい感じ)、十九世紀イギリス、大航海時代(海賊ごっこ)、そしてフランス外人部隊となります。
 中でも傑作なのが『バスカヴィル家の宇宙犬』です。ヴィクトリア朝時代のイギリス(を模したトーカの都市)へ潜伏した宇宙犯罪者の捜索と、それに付随する数々の奇妙な事件。その謎に挑むのは――ベーカー街に居を構える、あの名探偵です。但し、その正体はホーカですが(笑)
 主人公アレックスは最初の『ガルチ渓谷の対決』以後、ホーカの全権大使に任命されます。普通ならば喜ばしい昇進のはずですが、ホーカの面倒見を押し付けられたとも言え、その苦労はひとかたならぬものです。もっとも、たびたびうんざりすることはあっても、アレックスはこのテディ・ベア型生物を気に入っており、またホーカ達もアレックスのことを信頼しています。そのせいでアレックスは毎度彼等に振り回され、胃に穴が空きそうな思いをすることになるわけですけど(^^;)
 愉快で楽天的な「お荷物」達の引き起こす数々の騒動。でも、こんな可愛い連中と一緒なら、それもまた楽しそうです。

この記事へのコメント

  • Kimball

    いやー、いつも、楽しい作品を
    ご紹介頂きありがとうございます!
    (なは、この凡人オヤジが知らなさすぎ?\(^o^)/)

    ところで、ホーカ族....

    うん? これって、StarWarsジェダイの復讐に
    でてきた「イウォーク族」じゃないの?

    なんて思ったのですが.....\(^o^)/
    2007年10月06日 13:38
  • Manuke

    おお、言われてみれば……。
    『エンドア/魔空の妖精』も確か映画館で見たのですが、すっかり忘れてました(^^;)
    映像化されたら、仰るとおりあんな感じかもしれません。

    実際この〈ホーカ・シリーズ〉はコミカルでテンポが良いですから、映画にしやすそうですねー。
    ハリウッドで映画化してくれないかなぁ。
    2007年10月06日 23:40

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