ヴァレロンのスカイラーク

[題名]:ヴァレロンのスカイラーク
[作者]:E・E・スミス


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 本書はドク・スミスの〈スカイラーク・シリーズ〉第三巻です。『宇宙のスカイラーク』で太陽系を飛び出し、そして『スカイラーク3号』で銀河を飛び出したシートン一行ですが、この『ヴァレロンのスカイラーク』ではついに宇宙からも飛び出してしまいます。
 飛び出す先は――四次元の世界です。いわゆる時間軸を含めた四次元時空のことではなく、空間軸が四つある世界ですね。
 そして本作では、〈スカイラーク・シリーズ〉最大の敵がついにお目見えします。前巻のフェナクローンですら可愛らしく見える、人間とは本質的に相容れない不気味な不定形生物クローラ族です。
 巻を重ねるごとにスケールアップしていくシートン達の冒険は、まだまだ終わりません。

 物語の冒頭ではまず、前巻を補う重要なエピソードが挿入されます。『スカイラーク3号』でおざなりにされた、鉄の男マーク・C・デュケーヌの逸話です。事の真相が明らかにされ、デュケーヌがフェナクローン達を見事にたばかった様が描かれます。決して「滑った筆をなかったことにしてる」などと野暮なことを言ってはいけません(笑)
 続いて、銀河外にいるスカイラーク3号へと視点は移ります。シートンは先の戦闘中に、第五次フォースの先に第六次フォースが存在することを突き止めていました。そして本書で、彼の優れた頭脳が第六次フォースとは精神そのものであることを看破します。
 理論に従って第六次フォース投射装置を組み上げたシートンですが、それを使って宇宙船の周囲を探っていたところ、強大な力を持つ精神だけの存在、純粋知性体の興味を惹いてしまうのです。好奇心に駆られて、いらんことするからですね(^^;)
 純粋知性体はおせっかいにも、シートンを自分の仲間に入れてやろうと申し出ます。肉体を捨てて精神だけの存在にしてあげようというのです。シートンはそんなことはまっぴらだと断りますが、純粋知性体は聞く耳を持ちませんでした。
 事実上無限のエネルギー量を持つ純粋知性体の攻撃に、スカイラーク3号は手も足も出ません。やむなく彼らはスカイラーク3号を捨て、2号で四次元空間へと逃れることにしました。
 果たしてシートン一行は無事戻ってこられるのでしょうか。そして、シートン不在の地球におけるデュケーヌの企みやいかに。

 本作の注目ガジェットは、第六次フォースです。第五次フォースよりもさらに強力で、加えて知的生命体の心そのものでもあります。賢者ノルラミン人が第五次光線を研究するのに数千年かかったのに対して、シートンはたった数日で第六次光線を手にしてしまうのですから大したものですね(笑)
 物語後半では、破壊されたスカイラーク3号の代わりとしてヴァレロンのスカイラーク号(4号のこと)が建造されます。直径千キロメートルの球体という途方もないサイズの船には、第六次フォースを自在に操るために人工頭脳が搭載されています。第六次フォースは精神と等しいため、それを操る機械には思考能力が必要なのです。
 また、『宇宙のスカイラーク』にて出くわした純粋知性体が、本書で久々の再登場です。第一巻では妙に浮いたエピソードでしたけど(^^;)、この第三巻でその正体が明らかになります。彼らは互いを数字で呼び合い、他の生命体に対しては神のごとき傍若無人な振る舞いをする恐ろしい存在ですね。純粋知性体もまた、第六次フォースにより形作られています。

 本書の見所の一つが、シートン達が逃れる四次元世界の描写です。悪夢のようなこの世界におけるシートンの活躍は、ヒロイックファンタジー風に味付けされています。いつもは頭脳で物事を解決するシートン君ですが、このエピソードでは筋肉で勝負です。
 また、前巻では振るわなかったデュケーヌ様も、今回はなかなか活躍してくれます。『スカイラーク3号』でさみしい思いをしたデュケーヌファンも、本作では大いに溜飲を下げることでしょう。

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック