反物質

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 私達の身の回りの物は様々な種類の原子から成り立っています。そして原子は、負の電荷を持つ電子、正の電荷を持つ陽子、電荷がゼロの中性子で構成されます。もちろん、これはほとんどの方がご存じのことでしょう。
 これらの粒子には、電荷だけが反対で他の性質は同じ反粒子というものが存在します。それぞれ、正の電荷を持つ陽電子(ポジトロン)、負の電荷を持つ反陽子、そして反中性子(中性子を構成するクォークの電荷が逆)です。その反粒子から構成される物質が反物質なのです。

 反粒子は電荷がプラスマイナス逆であること以外は同じ性質を持つため、反物質は構成する粒子が異なる他は通常物質と何ら違いはありません。但し、通常物質と反物質が衝突すると、両者は質量全てがエネルギーへと変化し、消滅してしまいます(対消滅と言います)。このとき発生するエネルギー量は途方もないものです。例えば通常物質と反物質を〇・五グラムずつ(合わせて一グラム)対消滅させたときの発生エネルギーを計算してみましょう。アインシュタイン氏の有名な公式に当て嵌めてみると(光速度は秒速三十万キロメートルとして計算)、

E = mc^2
 = 0.001[kg]*(300000000[m/s])^2
 = 90000000000000[joule]

 と、結果は九十兆ジュールとなります。これは原子爆弾一発と同程度のエネルギー量なのです。
 逆に、大量のエネルギーを投入することにより、通常物質と反物質を作り出すこともできるそうです(こちらは対生成)。

 その莫大なエネルギー量から、SFではしばしば宇宙船の動力源として扱われます。実際にNASAでもロケットの推進力として使うことが検討されているようですから、あながち絵空事とは言い切れません。
 また、通常物質と接触すると大爆発を起こすことから、悲恋の題材として使われることもありますね。それぞれ通常物質と反物質で構成される男女は、心を通わせることはできても決して触れ合うことはできないのです。

 ところで反物質を構成する反粒子ですが、驚いたことに負のエネルギー状態の通常粒子が時間を逆行しているものと見なすことができるのです。これにより、対消滅・対生成という現象は別の見方を取ることができます。
 電子・陽電子の衝突による対消滅は、電子が光子を放出して負エネルギー状態になり、時間を逆行し始める現象と捉えることが可能です(その逆行する電子が、実は衝突した陽電子)。同様に対生成は、時間を逆行する負エネルギー電子(陽電子)がエネルギーを受け、通常の状態の電子へ戻る現象と考えることができるのです。
 この非常に混乱しそうな説明(^^;)は、さらに驚くべき解釈へと繋がります。この世界に存在する全ての電子と陽電子は、こうして時間を往復するたった一つの電子なのかもしれないというのです。全ての電子がことごとくそっくりの性質なのも、それで説明が付くというわけです。
 物理学の世界は、SF作家も裸足で逃げ出すほどの驚くべきアイディアに満ちあふれているようですね。:-)

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