スカイラーク3号

[題名]:スカイラーク3号
[作者]:E・E・スミス


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 本書は〈スカイラーク・シリーズ〉の第二巻です(3号なのに二巻というのはちょっと分かり辛いかもしれませんね(^^;))。
 前巻『宇宙のスカイラーク』は太陽系を飛び出した初の物語という足跡を残していますが、この『スカイラーク3号』もまたSF界での金字塔と言えるでしょう。本作は史上初めて銀河系外へと舞台を移す物語なのですから。
 哲学者カントが銀河系の外にも島宇宙があることを予言したのは十八世紀ですが、実際にアンドロメダ星雲が別の銀河であることを天文学者ハッブルが確認したのは一九二三年です。本書の発表年は一九三〇年ですので、当時としては比較的新しい科学的知識に基づいた舞台設定と言えるかもしれません。
 お話の方も、倒すべき邪悪な敵と頼れる味方を得て、本巻からぐっとスケールアップしていきます。そして、主人公シートンの持つ力も次第に強大なものとなっていくのです。

 前巻で緑色太陽系の惑星オスノームに平和をもたらしたシートン達ですが、ある日そのオスノームから皇太子デュナークが地球へやってきます。隣接する惑星ウルヴァニアからの侵略を受けたため、彼はシートンの元へ助けを求めにきたのでした。
 シートン一行(シートン、クレイン、ドロシー、マーガレット、そして召使いのシローの五人)はスカイラーク2号に乗り込み、デュナークの求めに応じて緑色太陽系へと向かいます。ところがその道中で、彼らは思わぬ連中と出くわしてしまいます。それは全宇宙の支配を企む邪悪な異星人フェナクローンの宇宙戦艦だったのです。
 スカイラーク号はからくも宇宙戦艦を退けた後、その司令官を捕まえて教育機械で心を読み取りました。そして、フェナクローン本星に対して既に連絡用無人艇が送られたことを知ります。
 その意図は邪悪なものの、フェナクローンは非常に進んだ文明を持っています。国力の違いも歴然としているため、まともに戦争となったら地球もオスノームも到底勝てないでしょう。しかも、対応のために残された時間は後わずかです。いかな天才のシートンでも、期限内にフェナクローンを倒す術を編み出すことなど不可能です。
 そこでシートンはオスノームとウルヴァニアの戦争を止めさせた後、緑色太陽系内で科学の進んだ星を探し出し、教えを請うことにしました。緑色太陽系は十七の太陽と百二十五個の惑星を持つ巨大星団であり、オスノーム・ウルヴァニア双方に残る伝説からそうした惑星がきっと存在するに違いないと踏んだのです。
 はてさて、シートンの目論みは首尾良く成果を上げることができるのでしょうか。

 本書の注目ガジェットはフォース、特に第五次フォースです。
 スカイラークの世界では、光や電波、重力といったエーテル波動は第一次から第四次のフォースに属するとされています(エーテルの存在は現在の科学では否定されていますけど)。特に第四次光線は色々と便利に使うことができ、例えば遠距離の物を見たり、遠くに自分の映像を送ったり、攻撃したり、美味しいサラダを作ってくれたりします。:-)
 また、それら全てを遮断する力帯域(ゾーン・オブ・フォース)と呼ばれるバリアが作品中に登場します。これを使うと内部は暗闇に閉ざされ、重力は届かず、推進力も働きません。鉄壁の防御であるのと同時に、内側からも一切の手出しができないというわけですね。
 これに対して、第五次フォースは亜エーテル(エーテルを構成する粒子より更に細かい粒子からなるもの)の振動波です。第五次光線は超光速で飛び、力帯域でも防ぐことができないのです。これが、恐るべき超人フェナクローンを倒すための鍵となります。
 スカイラーク3号は、この第五次フォース投射装置を搭載した大型宇宙船です。全長約三キロメートル、直径約四百五十メートルという細長い形状をしており、船殻は紫色をしたイノソンという理論上最強の物質で作られています。
 惜しむらくは、スカイラーク3号はかなり後半になって登場するため、活躍の場が限られてしまうことですね。それでも、広大な銀河間宇宙を舞台にフェナクローンの戦艦と壮絶な戦いを繰り広げてくれます。

 さてさて、かくも壮大なスケールの物語ですが、本書には一つ致命的な瑕疵があります――何と、デュケーヌ様がほとんど活躍しません。
 助手として冷酷な殺し屋のロアリングという相棒を得ているにもかかわらず、二人ともあまりにぞんざいな扱いなのです。『スカイラーク3号』は盛り上がりやバランスという意味では良い作品ですが、この一点だけはとても残念でなりませんね。
(あと、シロー君は正式なメンバーに昇格したのに、相変わらず端役(笑))
 という訳で、デュケーヌ様ファンの皆さんは、次巻『ヴァレロンのスカイラーク』へGO、です!

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