センス・オブ・ワンダー

[キーワード]:センス・オブ・ワンダー


 SFというジャンルを語る上で重要なものの一つが、このセンス・オブ・ワンダーと呼ばれるキーワードです。直訳すると『驚きの感覚』辺りになるでしょうか。これを感じたということは、SF作品に対する最上級の褒め言葉と言っても過言ではないでしょう。
 ところが肝心の「センス・オブ・ワンダーとは何か?」となると、これが曖昧模糊としています。例えば「SF作品でしか味わえない、グラグラするような感覚」などと説明しても、SFを読まない人には何のことやらさっぱりです(笑)
 いわゆる感動を伴うこともありますが、全然無縁だったりもします。どんでん返しによって得られることもあれば、そうでないこともあります。さらに、センス・オブ・ワンダーのエッセンスがあるからと言って、その作品が良作であるとは限りません。ストーリーとしては箸にも棒にもかからないことも珍しくないのです(^^;)
 また、そもそも各自が恣意的にセンス・オブ・ワンダーを定義してしまっていて、万人が合意できる共通見解がないという困った問題もあります。感覚ですから、同じものを読んでも人によって受け止め方が違うのは当たり前なのかもしれませんが。
 従って、以下に示すのはあくまでセンス・オブ・ワンダー論の一例です。その旨あらかじめご了承下さい。

 私は、センス・オブ・ワンダーを「常識を覆し、その状態で固定すること」と捉えています。覆すだけでは駄目で、それを新たな常識として(作品の中だけだとしても)成り立たせることが重要です。そして、その『成立した常識』と『本来の常識』とのギャップがグラグラ感へと繋がるのでしょう。
 この固定に重要な役割を果たすのが、何らかの理屈付けです。正確な科学知識に基づいたものであるかもしれませんし、単なる屁理屈(笑)かもしれません。常識というのは強固なものですから、それを再構築するにはある程度の裏付けが必要です。だから、センス・オブ・ワンダーはもっぱらSFにのみ見られるのではないでしょうか。
 SFというのは非日常を楽しむジャンルでもあるわけですから、世界の捉え方そのものを変革するセンス・オブ・ワンダーが大事にされるのは当然のことなのかもしれません。

 ……などとセンス・オブ・ワンダーを論ずることは、本来は無用のものです。本当にそれを知りたいと思われたなら、実際にSF作品を読んでみることが一番の近道ですから。それも一冊だけでなく、できるだけたくさん。
 読み進めるうちに「グラグラする感覚」があったなら、きっとそれがセンス・オブ・ワンダーでしょう。他の人(例えば私)の言ってることと違う点があったとしても、構うことはありません。どうせ共通見解はないも同然ですから、言ったもの勝ちなのです(^^;)

この記事へのコメント

  • ココット

    ──意外性は、納得できなければならない。

    これは物語でドンデン返しを狙う際の心得を示したものですが、
    割と好きな言葉だったりします。

    物語の意外性は、納得できるものでなければならない。
    何故ならば、納得できない意外な結末は、
    ただ単に滅茶苦茶なだけだからだ。
    ……というような内容が本来の意味だったでしょうか。

    この概念が、ここで述べられている
    「常識を覆し、その状態で固定すること」 ~ 何らかの理屈付けです。
    という考え方と、あるいは合致しているのではないでしょうか。

    個人的には、この意外性を揶揄した
    『ドラゴンクエストの大魔王、心臓麻痺で死んじゃった』
    というブラックジョークが最高に好き。

    ああ!なんて劇的(ドラマティック)なシナリオ運びなんだ!
    つーか俺の総プレイ時間50時間を返せ!
    2005年08月11日 01:26
  • Manuke

    推理小説は、かなりそのルールが厳密に求められる感じがしますね。
    SFでは逆に、無茶苦茶を極めてしまうお話なんかもありますが――ヨコジュンとか(笑)

    ところで、そのドラクエ大魔王の話は興味深いです。脱力系のオチで戦うことのむなしさを教えてくれる……とかじゃないですよね、きっと(^^;)
    2005年08月12日 00:54
  • ココット

    『ドラゴンクエストの大魔王、心臓麻痺で死んじゃった』

    物語の意外性は、納得できるものでなければならない。
    何故ならば、納得できない意外な結末は、
    ただ単に滅茶苦茶なだけだからだ。

    ──の模範解答とでもいうべきでしょうか。


    えっと解釈についての御質問だと捉えて、ちょいと説明をいれますよん?

    大雑把に言うと、ドラクエタイプのRPGは最後の敵(大魔王)を倒すのに、
    総プレイ時間50時間以上とか必要です。なので最後の大魔王を倒す
    ということは、今まで費やしてきた時間の総決算にあたる儀式な訳です。
    これをしなければ、最早終われない──といったレベルの。

    そもそも最初は入手経験値1とか2とかいったレベルのスライムなんかを、
    コツコツと10匹とか20匹とか倒すあたりから、はじめなければなりません。

    これがようやっと中堅レベルの敵とも互角に戦えるようになって、更には
    装備も充実し、そろそろ上級レベルの敵とも戦えるようになってきた。

    この間の総戦闘回数は、もはや数え切れず、はぐれメタルを狩ることに
    時間を費やすこと、ン十時間。 使える魔法もいよいよ増えた。

    こうして長い時間を費やし、直前に控える長いダンジョンも無事に抜けて、
    さあ、これだけ苦労してやってまいりました最後の魔王の控える広間。

    充分にパーティーは鍛え上げたし、必要な回復アイテムや、イベントアイテム
    は全て揃えた。さあいよいよ最後の戦闘だ!

    もしかしたら、後衛の魔術師は爪の一撃で即死してしまうかもしれない。
    魔王のブレスなら、PT全員の生命力の半分以上を持っていかれるかも。

    最初のヒトガタ形態を倒すと、「ほんとの ちからを みせてやる……」 とか
    言いながら異形形態に変身するのがちょっとダサいけど、お約束だしね。

    さあ覚悟しろ!大魔王!


    と戦闘に対するモチベーションを最高に高め、コントローラーを握り締めた
    瞬間に「ぐ…あ…あ…あ…あ」 「まおうは しんで しまった」 「エンド」
    という展開になってしまってプレイヤーは呆然というか(笑)

    この盛り上げるだけ盛り上げてしまった激情の叩きつけ先と、いやこれまで
    費やしてきた莫大な実際時間を……一体どうしてくれるんだッ !?


    いつも影の存在(真の支配者)が、善良な王様を操っていました。
    という似たような展開では詰まらないと思い、プレイヤーの想像を上回るような
    意外な結末を演出してみました(プロデューサー談)

    ──ああ、確かにすごかったYO!
    ──予想のはるか斜め上を素っ飛んで行ってしまったYO!
    ──OK、解ったからソフトの金返せYO!

    あとプレイに費やした時間モナー。
    というような説明を付加したら良かったのかしらん?(笑)
    2005年08月13日 00:23
  • Manuke

    なるほどなるほど。意外性というものは奥が深いです。
    お約束を外すというのは確かに一つの意外性ではありますが、それだけじゃ駄目なんですね。
    独自性を打ち出そうとするがあまりプレイヤーの視点を忘れてしまってはいけないということでしょうか。
    ただ、あまりにお約束が過ぎて怒りが湧いてくる場合もありますから(笑)、匙加減というのは難しいものです(^^;)
    2005年08月14日 01:25
  • ココット

    ホワイトホールキター!

    ……ではなくて、どうしても気になってしまったので、
    ここに蛇足を添える事をお許しくださいまし(笑)

    いえManukeさんの御質問が内容の解釈ではなく、疑問の形式を借りた
    疑問形のジョークだったらなら、

    それにこんな莫大なマジレス長文を付けたらまずいなぁ……と思って、
    こちらも冗談で流せるようにくだけた語尾に仕上げたら、読み返していると
    なんだか失礼な電波【怪】文章に!(殴)

    失礼&読みにくい文章で申し訳ない。
    しかし文意は汲み取って頂けたようでなによりですー。


    それだけでもアレなので、追加のレスでも(笑)
    > 独自性を打ち出そうとするがあまり
    > プレイヤーの視点を忘れてしまってはいけないということでしょうか。

    そう思います。創作の手引書などによく
    『読み手の感情をジャンプさせてはならない』という注意が書かれています。

    読み手の感情をAからEに移動させたい場合は、必ず
    A → B → C → D → E という段階を踏んで移動させなければならず、
    A → E もしくは
    A → C → E という感情移動を伴う描写は頂けないというものです。

    仮に、意外性を演出するために、A → C → E という描写を用いたとしても、
    その後で、不足している間のB、D、に関しては、必ず補足して埋めて
    おかなければならず、結局は全体でみれば順序良く並んでいたと、
    実は演出のための倒置法でした、というような必要があるのです。

    この "感情" というのは "イメージ" という言葉に置き換えた方が
    しっくりとくる場面もあります。 だから例えば

    智代の事が好きなのに、生徒会に関わる人間だから!とそれだけの理由で
    智代への好きという感情を、アッサリと割り切って捨ててしまえる主人公とか、
    おまい少しは葛藤とかないのかよとか、品行方正を目指し、不良行為を断固
    として許さないお堅い智代が、サクッと朝のHRをサボって主人公とイチャついて
    いられる理由とか、創立祭でサクっと生徒会の自由行動の刻限を破っちゃえる
    理由とか、我々はその行間を埋める徹底的な説明を要求する!

    私はSSを読む際にこの点にで引っかかった場合には、かなり厳しい減点
    を与えてしまいます。

    もちろんこれは、私独自の見解であり、思い込みとか、勘違いとか満載の
    判断基準かもしれませんが、今のところは割と重要視している要素だったり
    していまーす(笑)

    でも確かに
    > あまりにお約束が過ぎて怒りが湧いてくる場合もありますから(笑)
    > 匙加減というのは難しいものです(^^;)

    これは確かですよね。
    特に最初の方を少し読んだだけで展開が読めてしまうものは、
    ちょっと嫌ですよね。 よっぽど自分の好みのパターンで無い限りは(笑)
    2005年08月14日 03:18
  • Manuke

    > 仮に、意外性を演出するために、A → C → E という描写を用いたとしても、
    > その後で、不足している間のB、D、に関しては、必ず補足して埋めて
    > おかなければならず、結局は全体でみれば順序良く並んでいたと、
    > 実は演出のための倒置法でした、というような必要があるのです。

    なるほどなるほど。
    確かに、一時的な飛躍を入れたとしても、後でフォローができていれば問題ないわけですね。
    それを怠ると、俗に言う『超展開』になってしまうと(笑)
    私が読んだSFで特に印象に残っている『超展開』は、〈リバーワールド・シリーズ〉です。ネタ明かしを読み終えた後、ポカーン状態でした。
    (いずれレビューするかもです(^^;))
    2005年08月16日 01:41
  • むしぱん

    いま、マンガ「鈴木先生」にはまっています。生徒の抱える問題、それを一緒になって考える鈴木先生。そして鈴木先生が出した結論。これがもうクラクラするような常識はずれの結論で、でも確かに今の世の中ではこういった結論で考えて行かなければもうだめなのかも知れない、と考えさせられるものばかりの話というマンガです。(例えば、中2男子が小4女子とSEXし、その女子の母親が鈴木先生にクレームしてくるのですが、その結論は・・・? などなど)

    このクラクラ感はもう、センスオブワンダーだよなあと感心しました。「虚空のリング」なんかはかなりクラクラしたのですが、「鈴木先生」も(大袈裟ではなく)同じ衝撃度でクラクラしてしまいました。考えてみると、これまで観たり読んだりした非SFのテレビドラマや映画、小説でもクラクラさせてくれるものはあり、それも自分にとってはセンスオブワンダーだったなあと改めて思い始め、そういえばManukeさんも私的定義を書かれていたことを思い出し、確認しに来ました。

    Manukeさんの書かれている「グラグラするような感覚」「常識を覆し、その状態で固定すること」は、的を得た適確な簡潔定義だと思います。
    わたし的にはさらに、「SFでも非SFでも、クラクラさせてくれるものはセンスオブワンダー」かなあという思いです。「センスオブワンダー」という言葉をSFに限定するのはちょっともったいなく、広義の定義にしてみたいという主旨です。
    2013年04月29日 23:47
  • Manuke

    私はそのマンガを読んだことがないのですけど、おっしゃる通りセンス・オブ・ワンダーはSFに留まらず、他ジャンルの作品中でも存在しうるものだと思います。
    ただ、あまり定義を広げてしまうと、「SF作品の目指すセンス・オブ・ワンダー」とは方向性が変わってしまうような気もしないでもなく……(^^;)
    個人的には、人間関係や社会的な常識はちょっと違うようなイメージですね。それを含めてしまうと、いわゆるカルチャーショックやジェネレーションギャップとの差別化が難しくなってくるので。
    とは言っても、外国と大差ない異星文明が出てくるSF作品もありますから、一概には除外できないような気もします(笑)
    2013年05月01日 01:03

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