トリポッド4 凱歌

[題名]:トリポッド4 凱歌
[作者]:ジョン・クリストファー


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 本書はジュブナイルSFの傑作〈トリポッド・シリーズ〉の第四巻であり、オリジナル三部作では第三巻に当たるお話です。原題は"The Pool of Fire"、〈三本足シリーズ〉では『もえる黄金都市』のタイトルで刊行されています。
 いよいよお話は最終巻、トリポッドから一方的に迫害されてきた人類の反撃が始まります。ローリー少年が目撃したトリポッド襲来から続く、長い長い抑圧の日々に思いを馳せると、感慨深いものがありますね。
 しかし、児童文学でありながらもシビアな世界観を有する点は本巻でも健在です。子供から大人まで、幅広い年齢層に愛されてきた理由はここにあると言っても決して過言ではないでしょう。
 ウィルがドーム都市から持ち帰った情報に基づき、ついに白い山脈はトリポッドとそれを操る主人への反撃計画を立て始めます。地球全土を支配する主人と、それに盲目的に従うキャップ人を相手にして、彼等の計画は果たして成功するのでしょうか。

 主人の拠点である都市から生還し、貴重な情報を白い山脈へと持ち帰ったウィル。それを元に、ユリウス達はトリポッドに反逆し地球を人類の手に取り返す方法を模索し始めます。
 しかし、本来ならば英雄として自らを誇りに思うはずのウィルは意気消沈していました。彼の軽率な行動のせいで友人フリッツが都市から脱出できなかったということに、自責の念を抱いていたのです。
 仲間に励まされ、指導者ユリウスに叱咤されても気力を取り戻せないウィルでしたが、そんなある日、フリッツがひょっこりと戻ってきます。彼は体力消耗と病気のために帰還が遅れただけだったのです。
 友人の無事を知ってたちまち元気を取り戻したウィルは、フリッツと二人であちこちの町や村を巡る旅へと出発しました。かつてオジマンディアスが自分達にそうしたように、トリポッドとキャップに不審の念を抱く子供を探し、白い山脈へ向かわせるためです。
 偽のキャップを被って各地を周り、子供達を密かに脱出させる任務を果たしたウィルとフリッツ。二人が再び白い山脈へ戻ってくると、新たな計画が持ち上がっていました。それは、トリポッドを罠にかけ主人を生きたまま捕獲するというものでした。
 けれども、この計画は思うように運ばず、罠のある場所へトリポッドを誘導することができません。それを知ったウィルは、トリポッドをおびき寄せるという危険な囮役を自ら買って出るのでした。

 本書の注目ガジェットは、黄金都市です。
 主人達の都市は地球上の三カ所、ドイツ・アメリカ・アジアに存在します。それぞれの拠点から、人間をマインドコントロールする電波(?)が放射され、キャップ人の精神を支配しているようです。
 都市の周囲には高さ六十メートルほどの金色をしたリング状の壁が取り囲み、その上に緑がかった透明な巨大ドームが被さっています。差し渡しに関する記述はありませんが、それぞれ数千人ほどの主人が中で生活している模様です。
 都市の内部には高温・多湿の有毒な空気が充満し、地球上よりも高い重力が働いています。白い山脈の科学者達は、都市の状況とトリポッドの形状から、主人の母星が高重力の湿地なのではないかと推測しています。

 二巻以降(本来の三部作)の主役を務めるウィル・パーカー君は、その言動に子供っぽい部分が目立ちます。しばしば短気を起こして事態を悪化させますし、他人に嫉妬したり拗ねたりという場面も少なくありません。
 しかし、お話が彼の一人称視点であることから、内面の描写がなされているためもあるでしょうね。実際、外面は冷静なフリッツやビーンポールが心の中で何を考えているのかを知ることはできませんし。また、向こう見ずな部分はあるものの、ウィルが勇敢な少年であることも確かです。
 ウィルは多くの欠点を抱えてはいても、むしろだからこそ強く共感できる愛すべき主人公だと言えるのかもしれません。物語の終盤では、子供っぽさから一歩成長した姿も見せてくれます。

 〈トリポッド・シリーズ〉は本書をもって幕となりますが、その結末はやや苦めです。読者のメインターゲットを十代に据えながらも、お気楽な娯楽作品には終わらない、厳しい視点がそこにはあります。
 分類的にはジュブナイルですけど、その面白さは決して子供騙しではありません。侵略テーマを扱った、ポストアポカリプスSFの名作です。

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