さすらいのスターウルフ

[題名]:さすらいのスターウルフ
[作者]:エドモンド・ハミルトン


 スペースオペラ界の巨匠エドモンド・ハミルトン氏による、〈スターウルフ・シリーズ〉第一巻です。
 ハミルトン氏の作品と言えば〈キャプテン・フューチャー・シリーズ〉を始めとする華やかなスペースオペラが挙げられますけど、本シリーズは一転して渋めの内容になっています。主人公に当たるケインは悪名高い略奪集団スターウルフ出身で、身を寄せることになるのは地球の外人部隊です。一応、女性キャラクタも出ないこともないのですが、基本的には男臭い世界ですね(^^;)
 もっとも、そこはハミルトン氏らしく、銀河を揺るがすようなガジェットがストーリーに投入され、単なる傭兵物語に留まらない強いアクセントになっています。

 惑星ヴァルナの強い重力の影響により、身体が頑強で俊敏なヴァルナ人。彼らは周辺の星々で略奪を繰り返し、スターウルフの名で恐れられていました。
 その惑星ヴァルナで育った唯一の地球人モーガン・ケインもまた、スターウルフの一員として略奪に明け暮れる日々でした。しかし、彼は略奪品の戦利品を巡って仲間のヴァルナ人スサンダーと口論になり、相手を殺してしまいます。そして、スターウルフ全体から仇として追われることになってしまったのです。
 怪我を負いつつも、宇宙船を操って烏座星団の宇宙塵へ逃げ込んだケインは、たまたま通りがかった地球の外人部隊に拾われました。スターウルフは宇宙のお尋ね者であり、縛り首を免れられないことを理解していたケインは、自分を隕石ヤマ師だと偽ろうとしますが、外人部隊の隊長ジョン・ディルロにあっさりと見破られてしまいます。
 ところが、ディルロはケインを捕まえようとはせず、正体を明かさない代わりに自分の下で元スターウルフとしての能力を活かすよう命じます。選択肢のないケインは、外人部隊へ新米として加わることにします。
 ディルロ率いる外人部隊は、アケルナー星系の惑星カラルで仕事を請け負うことになりました。カラル人は排他的で異星人を見下す人々でしたが、同じ星系の惑星ヴォホルが惑星カラルを滅ぼせる超兵器を調達したらしいとの情報を得て、その調査を依頼してきたのです。
 惑星カラルで早々とトラブルに巻き込まれて(笑)牢に入れられていたケインは、ディルロから連絡を受け、同じく牢屋にいたヴォホル人捕虜ヨローリンと共に脱獄して宇宙船に帰ります。そして、ヨローリンの要請に応える風を装い、外人部隊は惑星ヴォホルへと向かうことになりました。
 しかし、外人部隊の面々は、当初からヴォホル人達に疑われていました。ケインはディルロの命令で倉庫に忍び込み、そこで既知の文明のものとは思われない奇妙な装置を発見したのです。手がかりを掴んだ一行は、制止を振り切り惑星ヴォホルから脱出します。
 ここで運悪く、彼らはケインを追うスターウルフ艦隊に遭遇してしまいます。ディルロの勇敢さとケインの無茶な操船でスターウルフを振り切った宇宙船は、謎の装置の出どころらしき惑星へ降下しました。
 そこで彼らが見たのは――地表に擱座した、奇怪な形の巨大宇宙船だったのです。

 本書の注目ガジェットは、遭難宇宙船です。
 この宇宙船はヴォホル人が偶然発見したもので、別の銀河からやってきたものと目されています。どのくらいの期間宇宙を飛んでいたのか、いつ不時着したのかは判明していません。具体的な描写はありませんが、ディルロが見たこともないほど巨大で奇怪な形状をしているようです。
 宇宙船は銀河系内文明とは隔絶した高い技術力で製造されており、ヴォホル人科学者にも全貌は掴めていません。目的は科学調査らしく、船内には地球を含む様々な惑星の物品や映像記録が残されています。『宇宙船ビーグル号』のような船なのでしょうか?(^^;)
 乗員はクリイ人と呼ばれ(ヴォホル人が勝手に命名?)、動物とも植物とも分類しがたい、かなり異様な姿のようです。クリイ人は遭難船の中で停滞空間(ステイシス)に入っていて、不時着から年数が経過しているにも拘らず当時のままの状態で固定されており、ヴォホル人には復活させることもできません。
 クリイ人は暴力嗜好を持たないようで、ヴォホル本国から宇宙船の兵器を探すよう命じられていたヴォホル人科学者ラブディブディンは、そんなものは存在しないとボヤいています。ただ、そもそもクリイ人は感情というもの自体を持っていないらしく、平和的ではあるものの付き合いやすい隣人ではなさそうですね。

 〈スターウルフ・シリーズ〉の舞台背景に触れておきましょう。
 この世界では、地球人がいち早く星間航行技術を開発し、銀河に進出して多数の異星人と交流を持つに至っています。
 この時点で、諸星系には地球人とルーツを同じくする人類が多数存在しており、遥か昔に共通祖先となる人類が星間航行を使い植民を行っていたものと推測されています。ただ、同じ祖先を持つものの、それぞれの惑星の人間はその後独自に進化し、見た目や性質は若干異なっています。
 なお、地球は星間交流の先駆者でありながら、他の星系と比較して資源が少ないため、外人部隊("Mercenaries/Mercs"、どちらかと言うと傭兵団?)による出稼ぎで外貨を獲得しているようです。星間航行技術自体を有償提供していたらもっと楽に稼げるように思うのですが、最初に銀河進出した地球人はお人好しだったのでしょうか?(^^;)

 モーガン・ケイン青年は人種こそ地球人ですが、略奪を是とする惑星ヴァルナで育ったため、ヴァルナ人の性質に染まっています。粗暴で喧嘩っ早く、考えなしの傾向はあるものの、身体能力は極めて高く勇敢です。ただ、主人公と言うよりはトリックスター的立ち位置に近いようにも感じられます。
 ストーリーを動かしていくのは、外人部隊を率いるジョン・ディルロの場合が多いですね。やや高齢ながらも冷静かつ大胆に任務を遂行し、次第にケインから尊敬を受けることになります。

 本作は不思議なことに、日本で一九七八年四月にテレビドラマ化されています(^^;)
 未視聴なため詳細は不明なのですが、制作は円谷プロダクションで、地球人も異星人も全て日本人が演じている模様。三十分番組が二十四話分放映され、これを長編ドラマに編集したものがアメリカに逆輸出もされています。
 残念ながら受けは今一つで、視聴率は伸びず、後半のテコ入れも上手くいかなかったようです。原作は決してつまらなくはないものの、スペースオペラにしてはちょっと硬派過ぎたからでしょうか。
 なお、同じハミルトン作品の〈キャプテン・フューチャー〉は、同年十一月にアニメ化されています。映像化するなら、見栄えの良いこちらの方が向いているように思うのですけど、もしかしたらSF特撮ドラマ『キャプテンウルトラ』とバッティングすることが危惧されたのかも(笑)

この記事へのコメント

  • X^2

    > 最初に銀河進出した地球人はお人好しだったのでしょうか?
    この点に関しては、確かヴァルナ人が、自分たちに星間航行技術を援助した地球人を「お人よし」と蔭で笑っていたという描写があったように覚えています。
    他の種族の文明レベルをはるかに超越しているクリイ人の宇宙船が全く武器を持たない、という設定はおそらくこの時代に書かれたSF作品としてはかなり異色ではないでしょうか。他のSF作家の作品で後にメジャーになったさまざまな先端的アイディアが、実はハミルトンがそれより以前に発表していたというパターンが結構多いとどこかで読んだ記憶がありますが、これもその一つかも。

    > 日本で一九七八年四月にテレビドラマ化されています
    私も後にこれをネットで知って驚いた記憶があります。やっぱりこの作品を日本人主人公に焼き直すというのは、無理があったのでは。
    2019年07月27日 17:34
  • Manuke

    > この点に関しては、確かヴァルナ人が、自分たちに星間航行技術を援助した地球人を「お人よし」と蔭で笑っていたという描写があったように覚えています。

    本巻でも、「まるで子供でもだますみたいに地球人をひっかけた」とありますね。
    ヴァルナ人達は平和的な種族を装ったようですが、それにしても対価くらいは受け取ってもいいように思います。

    > 他の種族の文明レベルをはるかに超越しているクリイ人の宇宙船が全く武器を持たない、という設定はおそらくこの時代に書かれたSF作品としてはかなり異色ではないでしょうか。

    ハミルトン作品が初出というのはそれなりにありそうですね。
    ただ、本作は比較的晩年(一九六七年)に発表されたものなので、この頃にはそうした種族が登場する作品も相当数あったのではないかと。

    > 私も後にこれをネットで知って驚いた記憶があります。やっぱりこの作品を日本人主人公に焼き直すというのは、無理があったのでは。

    ですよねー(^^;)
    まあ、この時代だとスペースオペラのテレビドラマで『宇宙からのメッセージ』もありましたし、日本人キャストというのもさほど気にされていなかったのかもしれませんね。
    2019年07月30日 01:48