アルマダ

[題名]:アルマダ
[作者]:アーネスト・クライン


 自分がプレイしているコンピュータゲームが、実は単なる架空のゲームではなく、現実とリンクしているのでは――そんなゲーマーの妄想(^^;)が本当になるシチュエーションを描いたのが、本作『アルマダ』です。
 アーネスト・クライン氏の出世作『ゲームウォーズ』(原題:"Ready Player One")は、八十年代前後のポップカルチャー/サブカルチャーがこれでもかと言うほど詰め込まれたおもちゃ箱のような作品でしたが、本作はそれに比較すればオタク度は薄めです(笑) どちらもVRゲームを取っかかりとするものの、あちらがVRの中での宝探しになるのに対し、こちらは異星人の侵略というオーソドックスなテーマを中心とした宇宙戦争もの、まさにシューティングゲームの世界へと入っていく感覚です。

 アメリカ・オレゴン州ビーヴァートンの片田舎に住む、ほどなく卒業を控えた高校生ザック・ライトマン。彼自身はシングルマザーに育てられたごく普通の少年でしたが、一つだけ普通でないところがありました。ザックは大人気MMOフライトシューティングゲーム《アルマダ》で、全世界九百万人のプレイヤーランキング中第六位という、トッププレイヤーの一人“IronBeagle”だったのです。
 《アルマダ》は、くじら座タウ星に住むソブルカイ星人が(さしたる理由もなく(^^;))地球を侵略しようとし、ソブルカイの技術を盗んだ地球防衛同面軍(EDA)がこれに対抗するというストーリーの、宇宙戦闘機での一人称シューティングゲームです。《アルマダ》を制作したゲーム会社カオス・テレイン社は、同じ世界観で地上のドローン(巨大ロボット)を操作するゲーム《テラ・ファーマ》も運営しており、こちらも人気であるもののザックの成績は振るいません。
 ある日、授業中に窓の外を眺めていたザックは、《アルマダ》に登場するソブルカイ軍の戦闘機グレーヴ・ファイターが空を飛んでいるのを見てしまいます。自分の頭がおかしくなったのではないかと不安になるザックでしたが、そうではありませんでした。
 翌日、ザックの通う高校の昇降口前に架空のはずのEDA軍用シャトルが着陸し、ザックを呼び出して連行したのです。ザックがアルバイトをしているゲームショップの店長レイ・ウィズボウスキーもシャトルに乗っていましたが、彼は自分がEDAのエージェントであり、ずっとザックを見守っていたのだと説明します。
 ネブラスカ州にあるEDA極秘基地クリスタル・パレスに到着したザックは、《アルマダ》が単なるゲームではなく戦闘訓練用シミュレータであったこと、そして異星人の侵略はゲームの話ではなく事実だったことを知らされます――ただし、相手はソブルカイ星人ではなく正体不明のエウロパ星人でしたが。また、ザックが赤ん坊のときに死亡したはずの父ゼイヴィア・ユリシーズ・ライトマンは、実は死んでおらずEDAのパイロットとしてずっと敵と戦っていたのだと。
 混乱し怯えつつも、ザックはEDAの本当のパイロットになることを受け入れ、中尉に任命されます。そして、クリスタル・パレスを襲撃してきたエウロパ星軍を、若干のトラブルがありながらも撃退することに成功しました。エウロパ星軍は三波に分かれて地球へ大艦隊を送ろうとしており、それを撃退するためにザックはトッププレイヤーの仲間と共に月面基地アルファへ向かい、そこで父親と対面することになります。
 しかし、ザックには疑念がありました。《アルマダ》が戦闘訓練用シミュレータであるのならば、何故ゲーム中のソブルカイ星軍ドローンの動きは、これほどまでに現実のエウロパ星軍ドローンと挙動がそっくりだったのか、という点です。また、エウロパ星人が現実の存在であるのならば、自軍の科学技術を地球側が盗み取るのを何故放置したのかも不明です。(ゲームならば「設定が雑」で済ませられる部分ですが(^^;))
 果たして、そこには何が隠されているのか――。

 本作の注目ガジェットは、作中ゲームの《アルマダ》です。
 《アルマダ》は一人称視点のVRフライトシューティングゲームで、プレイヤーは無線操縦式の無人宇宙戦闘機を操縦しているという設定になっています。このため、ドローンが敵に撃墜されても即ゲームオーバーではなく、別のドローンに乗り換えて再出撃することが可能です。この、「ドローンを遠隔操縦」という設定は地球側だけでなくソブルカイ側も同じで、つまりは無人戦闘機同士で戦争を行っている形になります。(戦闘機と地上のロボットの違いはあるものの、《テラ・ファーマ》も同様)
 MMOゲームであることから、一つの作戦に対して相当数のプレイヤーが参加可能です。プレイヤー同士はボイスチャット等で会話可能ですが、互いの姿を知ることはない模様です。
 この《アルマダ》と《テラ・ファーマ》は単なるゲームではなく、実在する異星人との戦いを若干脚色した形で提供された戦闘訓練用シミュレータであったことが物語中で明らかになります。
 それに加え、ザックが前日にプレイした惑星ソブルカイへの侵攻ミッションが、実は木星の衛星エウロパ上で実際に行われた作戦であったことも判明します。つまり、ザック達プレイヤーがゲームとしてプレイしていたものが、そのまま本物のドローンの操縦に使われていたということですね。ここは単なるシミュレータとは少々かけ離れた機能が必要ですから(現実の映像をリアルタイムにCG化する必要があるので、実際の操縦システムよりも難易度は高いはず)、設定が強引なように感じられなくもないです(笑)

 一方、作中における本当の対エウロパ戦争も、極めてゲーム的な側面を持っています。
 エウロパ星軍の使う宇宙戦闘機・空母・地上用ロボットといったものは、全て量子通信で遠隔操縦されたドローンであり、無人機です。地球側は一九七三年のパイオニア10号によりエウロパ星人の存在を知りますが、その技術を盗んで作られた地球側ドローンも、やはり同様に遠隔操縦です。ここは、ゲームの方が現実を模倣したという設定ですね。
 このため、元プレイヤー達が実際の戦闘に参加する際も、ドローンに直接乗り込むのではなく基地に用意されたコンソールから操縦するという、ゲーム《アルマダ》そのままの操作感覚になります。操縦方法も、ジョイスティックからゲームパッドまで様々なコントローラーが用意され、普段ゲームプレイしている環境に合わせて選べるという至れり尽くせりなサポートです(笑)
 このシステムのおかげで、搭乗者は撃墜されても操縦対象を別のドローンに切り替えるだけで再出撃できます。この辺りを見るに、ドローンの数よりも操縦者の人数が圧倒的に不足しているのかもしれません。
 更に、実際に有人戦闘機へ乗り込む場合でも、機体内部では慣性制御が行われているために加減速は一切感じません。ゲームのトッププレイヤーが、あっさり本物のエースパイロットになれてしまうという都合のよさです(^^;)
 ただし、ゲーム感覚で操縦できるからと言っても、やはりゲームではありません。エウロパ星軍の攻撃を受けて基地が破壊されたり、有人戦闘機搭乗中に撃墜されたら、パイロットは死亡することになります。

 本作は「シューティングゲームの世界が現実になる」というコンセプトがブレることなく表現されているため、現実サイドの戦争にはどこか作り物めいた嘘くささ(^^;)が漂うのですけど、それ自体がストーリー中で意味を持たされているのは面白いですね。
 また、SF小説・映画・ゲームのネタがいくつも散りばめられていることから、思わずニヤリとさせられてしまう場面も数多くあります。例えば、一介のゲーマーだったザックの父ゼイヴィアがEDAの存在に気づくきっかけとして、《ポリビウス》というアーケードゲームが言及されていますが、これはアメリカでかつて実際に噂された都市伝説ですね。(《ファエトン》はおそらくクライン氏の創作?)
 ストーリーとしては、主人公ザックの成長物語が描かれます。ザックは正義感はあるものの、ちょっとしたことで激昂する傾向があり、高校卒業を目前にしながら進路を決めかねているゲーマー少年です。若干子供っぽい部分はあるものの、年相応の高校生と言えるでしょう。その彼が、ある日いきなり本当の地球防衛同面軍に入隊させられ、死んだと思っていた父と再会する羽目となり、否応なしに大人になることを強いられるのは少々気の毒な気がしますね(^^;)

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