トリポッド3 潜入

[題名]:トリポッド3 潜入
[作者]:ジョン・クリストファー


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 本書『潜入』は〈トリポッド・シリーズ〉全四巻の第三巻に当たるお話で、オリジナル三部作では第二巻に相当します。原題は"The City of Gold and Lead"、〈三本足シリーズ〉では『銀河系の征服者』の名前で翻訳されています。
 個人的な印象では、この巻は〈トリポッド・シリーズ〉の中でも最も手に汗握る展開ですね。我等がウィル君が担う任務は、サブタイトル通り潜入。そしてその対象は、原題にある「黄金と鉛の都市」すなわち支配者の本拠です。
 トリポッドの支配から逃れるための知識を得る密命を帯び、ウィルはキャップ人になりすましてトリポッドの都市へと潜入します。そこで彼は、侵略者の姿を目にするのです。

 前巻で無事白い山脈へと辿り着いたウィル、ヘンリー、そしてビーンポールの三人。そこには指導者ユリウスが率いる抵抗組織がありました。ウィル達は、トリポッドに悟られないよう秘密裏に活動しているそのコミュニティに加わることにします。
 しかし、トリポッドと戦うための情報が彼等には不足していました。何しろ、トリポッドが知性ある機械なのか、それとも中で誰かが操縦しているのかすら誰も知らなかったのです。
 そこでコミュニティは、北にあるトリポッドの都市へとメンバーを潜入させることに決めます。都市近くの町では、スポーツ大会で優勝した少年達が奴隷として都市へと連れて行かれ、決して戻ってこないのです。偵察者はキャップ人を装って大会で優勝し、都市へと潜入した後、情報を持って生還しなければなりません。
 そして訓練による選抜の結果、ウィルとビーンポール、そして寡黙な少年フリッツ・イーガーがその任に当たることとなりました。
 スポーツ大会が開催される町へ向かう途中、ウィルは軽率な行動によりあやうく罪人として処刑されそうになるハプニングはあったものの、何とか三人とも無事に辿り着きます。そして、大会ではウィルとフリッツの二人がそれぞれの種目で優勝し、トリポッドの都市へ招かれる名誉(キャップ人にとっては)を手に入れます。
 トリポッドに掴み上げられ、中に押し込められた二人は、金色の壁と緑がかった半透明のドームを持つ都市の中へと運ばれます。そして遂に、トリポッドを操る異星人・主人達の姿を目にするのです。

 本書の注目ガジェットは、主人("Masters")です。
 彼等は地球外生命体、いわゆる異星人ですが、作中ではその種族を表す固有名詞は登場しません。都市の中で人間の奴隷に自分達のことを「ご主人さま」と呼ばせているのが、そのまま種族を示す呼び名となっています。
 考えてみると、我々が日常において自分達の種全体を表す名前(人間とか)は、日本語であれ英語であれ固有名詞とは言いがたいですよね。一種類しかいなければ呼び分ける必要はありませんから。つまり主人の場合、奴隷として使役している地球人を同格の存在とは見なしていない、ということかもしれません。
 個体差はありますが、身長は人間の倍くらい(三・五メートルほど?)。おおむね円錐形をしていて、三本の短い足と三本の触手を持っています。目もやはり三つ、口は呼吸用と食事用の二つが上下に並んでいます。飲み物を飲んでむせる心配がないのはうらやましいですね(^^;) 体色は緑で、皮膚はかなり硬いようです。
 主人達の呼吸する大気は温度も湿度も高めで、人間には毒です(逆もまたしかり)。また、ドーム都市の内部は重力が強められていて、彼等の母星が地球より高重力の星であることを伺わせます。

 本書はウィル達が異星人の本拠地へ潜り込むという展開のため、シリーズ中でもとりわけSF的な色彩が強く、波乱に満ちています。
 主人達の生活は非常に奇妙ですが、それにも増して恐ろしいのは奴隷の少年達かもしれません。高重力と高温のため、都市に連れてこられた少年はほんの数年で使い潰されてしまいます。しかし、(ウィルとフリッツ以外の)少年達はキャップのせいで主人に絶対的な忠誠を誓っているため、そのことに一切意を挟むことなく、それどころか自分が役立たずになると自ら命を絶ってしまいます。
 また、本書で何よりショッキングなのは、ウィルが前巻で知り合った少女エロワーズとの衝撃的な再会場面です。少年少女向けでありながら単にわくわくする冒険だけでは終わらない、真の意味でのジュブナイルSFという側面がここに現れていると言えるのではないでしょうか。

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