生命の惑星カスケード

[題名]:生命の惑星カスケード
[作者]:E・C・タブ


 〈デュマレスト・サーガ〉第三十巻です。
 『遊民の惑星ライカン』にてサイバー・アヴロと対決したデュマレスト君ですが、本巻でも引き続きライカン上から物語が始まります。前巻からの時間経過はほぼない形ですね。
 地球の座標を知るという男シュノートから情報を得る見返りに、デュマレストは伝説の場所リザムへ同行することになります。しかし、そこは恐るべき脅威に満ちていたのです。

 サイバー・アヴロとの対決後、サイクランの手をすり抜けて脱出を図ったデュマレスト。彼はチェン・ウェイ・サーカスのオーナー、シャキラ(『超能力惑星バーツ』参照)から聞いた、地球の手がかりを知るタマ・シュノートの下を訪れます。
 シュノートは多くの家人を擁する、神経質な男でした。彼は生命を回復させるという伝説の場所リザムへ行くという妄執に囚われており、デュマレストがその旅に同行しなければ地球の座標を教えないと言います。シュノートの普段の姿は遠隔操作のロボットであり、本来の肉体は寝たきりで体を動かせない状態だったのです。
 一方で、対決時に意識を失い昏睡状態となったサイバー・アヴロの所へ新たなサイバー、ズーバーが現れます。サイクランの秘密が漏洩するのを阻止するため、ズーバーはアヴロ及びデュマレストに接触した人間を冷酷に暗殺していきます。
 復讐のため彼を追いかけてきたカロウム家当主ミルザと和解した後、デュマレストはシュノートの要求を飲み、家人と共にリザムのある惑星カスケードに向かいます。伝説のリザムは実在したのですが、そこは大いなる危険が潜んでいました。次々と仲間が脱落していく中、ようやく目的の地に辿り着いた一行ですが……。

 本書の注目ガジェットは、リザムです。
 命を回復させるという類の伝説は数多くあるものの、リザムはそうした全ての伝説の源だとされています(少なくともシュノートはそう信じています)。その周囲ではラフトが飛行できず、甲殻類の恐ろしい生き物のいる場所を抜けていかなければなりません。さらに、リザム近辺では「輝く生き物」と呼ばれる謎の存在が、近づく人間を取り込んで骨にしてしまいます。
 実際にデュマレスト達が到達したリザムは、卵型の洞窟内に置かれたボウル状のもので、中央に輝く青い柱が立っています。ボウルは青い霧状のもので満たされ、柱はその噴水のようです。この中に入ることで「生命の回復」が行われます――ただし、シュノートが期待していたようなものではなさそうですけど(^^;)
 デュマレストはリザムの正体を、異星宇宙船の駆動装置ではないかと推測しています。『聖なる惑星シュライン』の〈聖なる場所〉に近いものなのかもしれません。

 本巻のヒロインはシュノートの客人の一人であるゴヴィンダですが、今回はデュマレストが入れ込むことになります。(どちらかと言うとヒロインに惚れられるパターンとは逆(^^;))
 と言うのも、ゴヴィンダは心的変異体("mentamorph")と呼ばれる特殊能力を持つ女性で、危害を加える可能性がある人物に、その人の庇護欲をかきたてる姿を見せるとされています。デュマレストの場合、ゴヴィンダはカリーンそっくりに見えてしまうわけです。
 このせいで、デュマレストはゴヴィンダをカリーンと同一視してしまい、手痛いしっぺ返しを食らうことになります。外面上は似ていても、ゴヴィンダはカリーンと同じように彼を愛していたわけではないので。珍しく、デュマレストがとても恰好悪い結末です(笑)

 さて、四巻分にわたって活躍してくれたサイバー・アヴロですが、残念ながら本巻で退場となります。もっとも、瀕死ではあるものの、死んだという描写はありません。
 アヴロ君は本書作中で、ホモコン素子肥大化のせいで目覚めないままながら、中央知性体との交信を行っています。この事実を隠すため、ズーバーは関係者の口封じをし、おそらくはサイクラン本部にアヴロを連れ去ったものと思われます。
 〈デュマレスト・サーガ〉は中央知性体関連の伏線を回収しないで終わってしまいますが、もしかしたらアヴロがその役を担うはずだったのかもしれませんね。

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