超能力惑星バーツ

[題名]:超能力惑星バーツ
[作者]:E・C・タブ


 〈デュマレスト・サーガ〉第二十八巻です。
 タイトルに「超能力」とあり、実際にも特殊能力を有するキャラクタが登場するので間違いではないのですが、本作で主要な位置を占めるのはむしろサーカスです。
 超能力を持つ少女メロームの力を利用して、デュマレストは地球の在り処を突き止めようとしますが、メロームはサーカスに売り飛ばされてしまいます。彼女を取り戻すためにデュマレストはサーカスへ潜入するのですが……。

 たまたま立ち寄った惑星バーツで、老婆が痩せこけた少女を使い、恐怖を見世物にしているところに出くわしたデュマレスト。気まぐれでそこに参加した彼は、少女メロームが相手の心を過去に戻す本物の特殊能力者であることを知ります。歌を引き金に、デュマレストは恐怖を覚えた過去の瞬間、すなわち地球の少年時代へ一時的に引き戻され、現実であるかのように再体験したのです。
 メロームの能力を使えば、自分が地球から密航した宇宙船の航海日誌を読み、その場所を突き止めることができるかもしれないとデュマレストは考えたのですが、老婆カラマは立て続けに幾度も体験するのは危険だと拒絶します。デュマレストは金を渡し、翌日からメロームを自分専用に雇うことを約束させました。
 ところが、カラマは約束を破り、メロームをチェン・ウェイ・サーカスに身売りさせてしまっていたのです。デュマレストはサーカスへ赴き、メロームを取り戻そうとしますが、すげなく追い払われてしまいます。
 今度はピエロに変装し、サーカスへ潜入してメロームを探そうとしたデュマレストですが、発覚して囚われの身となりました。そして、デュマレストが惑星バーツのサーカスに捕えられたことが、サイクランに伝わってしまいます。
 サイバーの罠が閉じる前に、デュマレストはメロームを見つけ、目的を達することができるのでしょうか。

 我らが主人公アール・デュマレスト君は、冷静沈着で慎重なキャラクタです。しかしながら、本巻では前半で少々軽率な行動が目立ちます。老婆の裏切り予見可能性は本人も反省しているのですが、その後も考えなしにサーカスに忍び込もうとするなど、あまり褒められたものではありませんね(^^;)
 一つには、メロームという特殊能力者の力により地球の情報が得られるとあって、焦りを感じたからかもしれません。伝説の星でしかない地球の探索は五里霧中の手探り状態ですから、伝説ではないと知っている自分自身の過去というのはこれまでで最大の手がかりです。かつ、メロームの能力に依存しているため、彼女がいなくなれば手段も同時に失われることになるわけです。
 もう一つの理由として、メロームの能力そのものがあるかもしれません。メロームは歌によって客の過去の恐怖を再体験させるというもので、つまりデュマレストにとって地球や密航時の出来事は大きなトラウマになっていることを意味します。そんなものを繰り返し体験したら、平静を保つのは困難でしょう(^^;)

 さて、本書ではもう一人、サイバー・アヴロの動向も要注目です。
 アヴロは前巻『鳥人の惑星ヘヴン』に登場したサイバーで、デュマレストとの対決後、精神共生体を注入されて無力化されていました。これだけなら『秘教の惑星ナース』でのサイバー・シーと同じなのですが、アヴロは劣勢体(隷属側)ではなく優勢体(支配側)が注入されたことが異なります。
 この結果、アヴロは意識を保ったまま、精神が鳥人の中に閉じ込められることになったわけです。サイバーは外科的手術で感情を取り除かれてしまいますが、アヴロは一時的とは言え、サイバーになった後に感情を再体験します。これが他のサイバーとは異なるアヴロの特殊性です。
 本巻で精神共生体の結合が解かれ、元の肉体へと戻ったアヴロは、再度デュマレストの探索を志願します。ただし、その対決は次巻、『遊民の惑星ライカン』までお預けです。:-)

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