鳥人の惑星ヘヴン

[題名]:鳥人の惑星ヘヴン
[作者]:E・C・タブ


 〈デュマレスト・サーガ〉第二十七巻です。
 前巻『女帝の惑星ジュールダン』で宇宙船を手に入れ、にわか自由貿易業者となった我らがデュマレスト君(^^;) ザブルで得た情報を元に向かった惑星には、しかし彼が知らない奇妙な種族が生息していたのです。

 ザブルの長老から得た『天国に至る道』の示す座標が地球だと信じ、ルチータ号改めエールス号を向かわせようとしたデュマレスト。ですが、機関士クレイグの破壊工作で換気装置が破損してしまいました。
 エールス号はやむなく惑星クラーンツへと寄港したのですが、修理に法外な料金を請求され、五日以内に支払わないと船が差し押さえられてしまう羽目になります。
 クラーンツは社会の格差が大きい惑星で、特権階級(クエレン)の支配下で下層民(イプシェイム)が苦しめられていました。その一人レオ・ベルナーは、自分達をクラーンツから密出国させて欲しいとデュマレスト達に持ちかけます。
 一方、特権階級でオカルトに傾倒した娘ユーニスを怪物から助けたデュマレストは、ユーニスから惚れられてしまいます。ユーニスの婚約者ユーリック・シェイナーはもちろんそれが気に入らず、デュマレストらがクラーンツを出て行けるよう協力してくれることになりました。
 けれども出発時のゴタゴタで、エールス号は下層民だけでなくユーニスとユーリックも乗せたまま惑星クラーンツを離れる羽目に陥ります。そして出発後ユーリックから、下層民が地球を悪夢の惑星と考えていることを知らされました。デュマレストは下層民達に対して、目的地は地球ではなく惑星ヘヴン(天国)だと誤魔化すことにします。
 やがてデュマレストが地球だと信じる星、惑星ヘヴンへと辿り着いたエールス号。ところが、その惑星にはデュマレストが見たこともない、翼が生えた人間のような生物・鳥人が生息していたのです。鳥人は人に極めて似ていながら、言葉が通じない獣のような存在でした。
 そして、更なる苦難がもたらされます。彼の後を追い、サイバー・アヴロの乗るサイクランの宇宙船がヘヴンにやってきたのです。デュマレストの運命やいかに。

 本書の注目ガジェットは、鳥人("Angel")です。
 鳥人は惑星ヘヴンに生息する、背中に羽を持つ人間に似た生物です。雌はとても美しい姿で、輝く翼を有し、あまり性的特徴を持たないようです。一方、雄は緋色と黒の翼で、蹴爪を持ち、雌と異なり恐ろしい容貌です。
 特に衣類は纏わず、知的活動も行わない、動物に近い生態だと思われます。テレパシイ能力が発達しており、言葉を喋ることもありません。
 作中では、「伝説の生き物」「神話の一要素」などと表現されていますけど、「鳥人」だとピンと来ませんね。原文では"Angel"なので、「天使」と訳した方がいいのかもしれません。バトラン船長の「鳥人は天国(ヘヴン)につきものだ」という台詞も、「天使は天国につきものだ」の方がしっくり来ますし(^^;)
 登場人物の一人、看護婦のアーヴァ・ヴァスディヴァは、この鳥人のベースは人間で、遺伝子改造により作り出されたのだと推測しています。ヘヴンにはテリディー人(ザブルの人々の祖先)がいた形跡がありますので、彼らが鳥人の創造主である可能性が高そうです。テリディー達は何のために偽りの天使を生み出したのでしょうか。

 本巻登場のアヴロは首席サイバー候補で、非常に有能なサイバーとして描かれています。彼は中央知性体の機能不全が最重要課題だと考え、サイクランにおける最高権力・首席サイバーの座を辞退してまでデュマレストを追うことを選びます。
 ところが、本書におけるエピソードを機に、アヴロはやや典型的なサイバーとは異なる道を歩むことになります。大抵のサイバーは一巻で退場してしまいますが(笑)、アヴロは今後数巻に渡って活躍してくれます。ある意味、最もデュマレストに人生を狂わされたサイバーと言えるかもしれません。

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