真珠の惑星サカウィーナ

[題名]:真珠の惑星サカウィーナ
[作者]:E・C・タブ


 〈デュマレスト・サーガ〉の一エピソードです。
 本巻は及び続巻『天翔ける惑星ザブル』/『女帝の惑星ジュールダン』は、原作と日本語翻訳版で巻数が異なっています。原作では『サカウィーナ』→『ザブル』→『ジュールダン』ですが、日本語版では『ザブル』→『ジュールダン』→『サカウィーナ』の順に刊行されています。
 『ヒアカーヌ』/『ハージ』でも同じような入れ替わりがありましたけど、こちらはより深刻です(^^;) ストーリーも終盤に差し掛かり、エピソード毎のつながりが大きくなってきているためです。
 特に『ジュールダン』と続巻『鳥人の惑星ヘヴン』はある重要な点において設定が繋がっているため、間に『サカウィーナ』が入るとストーリーが破綻してしまいます。これから読まれる際には、必ず『サカウィーナ』を先に読むことをお勧めします。

 デュマレストが働いていた惑星ポリスの採鉱所は、冬の嵐の到来により閉鎖されることになりました。しかし、失業した鉱夫達を乗せて町に向かったラフトは墜落してしまいます。町に辿り着けたのはデュマレストと、同じ渡り者のハート・ヴァードゥーンだけでした。
 この件でデュマレストを信頼したヴァードゥーンは、彼に話を持ちかけます。強力な幻覚作用を持ち高値で取引される金色の真珠アーディールの在り処を自分は知っており、それを得るためにデュマレストに協力してほしいと。乗り気でないデュマレストでしたが、アーディールのある惑星サカウィーナが、以前は地球の古い名イース("Erce":地母神?)と呼ばれていたことを知り、ヴァードゥーンに力を貸すことにします。
 サカウィーナは、少数の初期入植者の子孫が大株主として資本を独占する社会形態を取る惑星で、地球ではありませんでした。デュマレストとヴァードゥーンは危険を冒して巨大昆虫ヴレクの産卵場を見つけ、アーディールを大量入手することに成功します。
 しかし、その土地はマクシマス(最高位)のラム・カロヴァのものでした。警備兵に攻撃されてヴァードゥーンは重傷を負い、デュマレストは宇宙友愛教会の寺院に逃げ込みます。そして、ラム・カロヴァに助言を行っていたサイバー・ザオは、デュマレストがこの惑星にいることを知るのです。
 株主達の間で渦巻く権謀術数、そしてサイクランの魔手を切り抜け、デュマレストはサカウィーナを脱出できるのでしょうか。

 本書の注目ガジェットは、アーディールです。
 アーディールは金色の真珠で、非常に高価なものであり、アーディールを持っていると仄めかしただけで殺人事件が起きるほどです。
 真珠とは言うものの、二枚貝の中にできるものではなく、巨大昆虫ヴレクの卵黄が硬化したものです。ヴレクは天使のように美しいようですが、電気エネルギーを蓄えて放つ能力を持つ危険な生物です。
 アーディールを浸した水には強力な幻覚作用があり、幸福な夢を見ることができます。また、精神に対しては高速代謝剤、肉体に対しては低速代謝剤と似た効果を及ぼすようで、わずか数秒で数時間分の幻覚を味わいつつ、肉体の衰えを遅らせる模様です。このため、特に死にかけた者に需要があるわけですね。

 サカウィーナは初期入植者の子孫であるオーレス達だけが土地と資源を独占する社会です。
 この惑星においては、地主は土地のみならず、地上の建物や地下資源をも所有することになっています。事実上、ほとんどの富が特権階級に独占されているわけです。
 惑星最大の株主はマクシマスと呼ばれ、公認支配者の地位を得ることができます。もっとも、資産を失えばすぐにその座を追われることになりますので、安泰とは言い難いようです(^^;)
 〈デュマレスト・サーガ〉において、架空の人生を体感できるガジェットはいくつか登場していますけど、先述のアーディールは多数生みつけられる昆虫の卵から作られるものであり、かつ浸した水に効果が生じることから、かなりの商品力を持つアイテムと言えます。奇妙なことに、サカウィーナでは(公には)アーディールの生産に取り組んでいないようです。
 アーディールの価値を考えれば、その量産に挑もうとする者が多数いても不思議ではないように思いますが、株主達は互いの資産を奪い合うことに夢中になっています。目先の利益を求める者達ばかりで公共の理念がないのが、サカウィーナの問題点なのかもしれません。

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