いさましいちびのトースター

[題名]:いさましいちびのトースター
[作者]:トーマス・M・ディッシュ


 このお話は、健気な電気器具達が繰り広げる冒険を描いた、ちょっぴりSFチックな童話です。
 電化製品を長く愛用していると、それを単なる機械以上のものに感じてしまうことがありますよね。調子が悪いことを「機嫌が悪い」と言い換えたり、毎日しっかり働いてくれる機器に愛着を抱いたりと、何か意識を持った存在のように思えることもしばしばです。
 本書はそうした擬人化を押し進めて、電気器具が喋ったり動いたりするという設定の元にストーリーが進行していきます。コミカルで楽しい雰囲気のお話です。

 街の郊外にある夏別荘に、だんなさまの訪問を待ち続ける電気器具がいました。年寄りで少々頑固な掃除機、おしゃべり好きな目ざましラジオ、落ち着いた性格の卓上スタンド、ちょっと気弱な電気毛布、そして若くて元気いっぱいのトースターの五台です。
 夏別荘は住み心地のいい場所でしたが、電気器具達はあまり幸せではありませんでした。何故なら、人間に使われることこそが器具達の使命だからです。だんなさまが最後に夏別荘を訪れてから二年半、一向に戻ってくる気配はありません。
 電気器具達はそれからもしばらく、だんなさまがいらしたとき同様の生活を続けていました。朝になると目ざましラジオがベルを鳴らし、トースターが(うそっこの)パンを焼き、掃除機が部屋を掃除し、日が暮れると卓上スタンドが明かりを付け、夜には電気毛布がベッドを暖めるといった具合にです。
 しかし、いつまで待っても戻らないだんなさまに、トースターはとうとうしびれを切らしてしまいます。そしてトースターは、だんなさまに自力で会いにいこうと皆に提案するのでした。
 物置小屋へ放置されていた自動車のバッテリーを電源に、五台の電気器具達は夏別荘を後にして、ニュートン街のマンションを目的地とする大冒険へと出発するのです。

 本書の注目ガジェットは、動いたり喋ったりする電気器具です。
 とは言うものの、これらの器具達が別にロボットだったりするわけでもなく、作中では元々そうした存在なのだとされているようです。
 但し、人間の見ているところでは必ずじっとしていなければいけない、という原則が電気器具達にはあります。この原則のせいで、人間は電気器具達が話せることを知らないわけですね。
 電気器具は基本的に製造された国の言語を使っていますが(次の巻で言及あり)、植物や動物と会話することもできます。もっとも、動物達は自分の知覚する世界にのみ関心があり、文明化された(と言うより文明の産物である)電気器具とは今ひとつ話が合わないようですけど。

 基本的に本書はおとぎ話であって、SFらしい部分はあまりありません(かろうじて、電気製品が主人公という辺り?)。まあ、「SFとは何か」ということすら皆が納得する共通見解はありませんので、細かいことは気にしない方向で(^^;)
 五台の電気器具がそれぞれの個性を生かし、一致団結して行動するというストーリーは、グリム童話の『ブレーメンの音楽隊』を思い起こさせますね(自分達の居場所を探すという目的も共通ですし)。個人的には、年老いて家を追い出された動物達の物語よりも、主人を探しに行く電気器具の冒険の方が、ずっと健気で楽しく感じられます。
 もし、昔使用していたトースターが知らない間に近くに現れるようなことがあったら、きっと大事に使ってあげてください。貴方を慕い、長い長い道のりを超えてきたのかもしれませんから。

この記事へのコメント

  • Kimball

    Manukeさま、
    こんにちは。

    先週早速、アマ損ショッピング・カートに
    入れました! (へへ、決済がまだできず)

    で、原書というか原題はなんだろう?と
    アマ損検索をしていたら、アニメ?DVDも
    でていることを知りました!\(^o^)/

    http://www.amazon.com/Brave-Little-Toaster-Jon-Lovitz/dp/B00009YXAW
    2007年06月02日 12:55
  • Manuke

    ディズニーがアニメ化しているらしいですね。
    私はアニメ版は未視聴なのですが、個性的でかわいい電気器具達の動いている姿は一度見てみたいです。
    2007年06月03日 00:47

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