死霊の惑星ザキム

[題名]:死霊の惑星ザキム
[作者]:E・C・タブ


 〈デュマレスト・サーガ〉第十七巻です。
 前巻『野望の惑星ハラルド』に引き続き、ザキムが舞台となるエピソードです。また、前々巻『悪夢の惑星ホーガン』ともわずかながら関連しているのも注目点ですね。

 ザキムの支配を目論みながらも、デュマレストの早業に命を落とすこととなったガイダペン。しかし、そこで話は終わりませんでした。
 ガイダペンの脅威がなくなったザキム評議会は、デュマレストがその土地を受け継いだことに異を唱えだしたのです。デュマレストの恋人となっていたラヴィニアは、守ってもらった相手に対するその無礼さに抗議しますが、多くの評議員は聞く耳を持ちません。
 その上、ガイダペンの息子を名乗る男の登場が話を複雑化させました。その男はガイダペンが惑星外で生ませた子供であり、ガイダペンの領地を相続する権利のために戦争も辞さない構えでした。
 一方、イリヤード星では宇宙友愛教会の僧侶ブラザー・エルダンが殺されるという奇妙な事件が起きていました。偶然そこに関わることになった傭兵カーズ・ガートックは興味を惹かれて探りを入れ、ザキムの実力者ガイダペンの息子と称する男トウミーが真っ赤な偽物だということを知ります。機を見るに敏なガートックはその情報を手にザキムへ渡り、デュマレストに接近して自分を売り込みました。
 トウミーはザキム外から傭兵達を雇い入れ、その采配はデュマレストやガートックの予想の裏をかきます。それもそのはず、トウミーの下には、ザキムにデュマレストがいることを突き止めたサイバー・アードックスがおり、その優れた予測能力で助言を行っていたのです。
 窮地に追いやられたデュマレストは、そこで賭けに出ます。それは、古い《協定》で定められた、ザキム人にとってはタブーと言えることでした。

 本書の注目ガジェットは、サンガリ族です。
 惑星ザキムでは、謎の種族サンガリ族が夜を支配し、何人たりとも夜間に屋外へ出てはいけないという習わしがあります。これは遥か昔に定められた相互不干渉のルールとされていますが、現ザキム人は誰もサンガリ族の姿を見たことがありません。(このため、ザキム外の人間には迷信と思われている模様)
 サンガリ族の正体は、昆虫様の小型生物からなる集合知性体です。そもそもが惑星ザキムの土着生物ですらなく、宇宙船で恒星間を移動することができるほどの高度な文明レベルを有しているようですが、宇宙船の遭難によりザキムへ定住することになったようです。惑星型生命体トーマイルを除けば(^^;)、〈デュマレスト・サーガ〉において数少ない対話可能な異星知性体と言えるかもしれません。
 本来は知的好奇心を覚えても不思議ではないのにも拘らず、今回もサイバーはサンガリ族に興味を示しません。世界を解き明かす知的集団という謳い文句でありながら、どうにもサイクランの興味は人間に偏りすぎているような気がしますね。実はかなり俗っぽい連中ということでしょうか(笑)

 本書では幕間のエピソードとして、サイバー・アードックスとブラザー・ヴェリンの対峙場面があります。
 〈デュマレスト・サーガ〉世界には、恒星間をまたぐ二大勢力としてサイクランと宇宙友愛教会が存在します。全てを解き明かすという目的のために感情を切り捨てたサイクランと、至福千年のために人々へ慈悲の手を差し伸べる宇宙友愛教会は、その理念は対立するもののストイックな点では類似しているのが興味深いです。
 サイクランは絶大な力を持つ組織ですけれども、その立場は裏から社会を操ることにより守られています。仮に宇宙友愛教会を敵に回したとき、武力・権力では優位に立ちますが、自分達の所業を宇宙友愛教会に暴かれる危険性があります。また、人数的にはおそらくサイバーより僧侶の方が遥かに多数です。
 逆に、宇宙友愛教会はサイクランの危険性を認識してはいるものの、非暴力主義を掲げているため直接的な手は打てませんし、かつ僧侶個々人は特に力を持ちません。
 このため、両者は互いを意識しつつも相互不干渉の立場を取っています。ザキム人とサンガリ族の間の相互不干渉よりも、こちらの方が根が深そうに感じられますね(^^;)

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