野望の惑星ハラルド

[題名]:野望の惑星ハラルド
[作者]:E・C・タブ


 〈デュマレスト・サーガ〉第十六巻です。
 本巻及び次巻は、シリーズ中でも珍しい前後編の構成となっています。惑星ハラルドが登場するのは前半だけで、メインストーリーは惑星ザキムで進行するのですけど、『死霊の惑星ザキム(前)』/『死霊の惑星ザキム(後)』というのもイマイチな感じですから、やむなしというところでしょうか(^^;)
 太陽の在り処を突き止めるために惑星ハラルドへ向かったデュマレストは、危うくサイクランの魔手に囚われかけるのですが……。

 地球を照らす太陽の恒星スペクトルを手に入れたデュマレスト。銀河系で最も優秀とされる惑星ハラルドのコンピュータを利用し、自分が入手したスペクトルから銀河系内の一致する恒星を探し出すため、彼はハラルドへ赴くことにします。
 偏屈なコンピュータ・サーヴィス係のアーマンド・ラムヘッドを協力者に選んだものの、デュマレストが闘技場で金を稼いでいる間にアーマンドは何者かに殺されてしまい、図らずもアーマンド殺害の犯人に仕立て上げられてしまいます。宇宙船〈スリーザン〉号に乗り込んでハラルドを脱出したデュマレストですが、今回はサイクランの方が上手でした――〈スリーザン〉号には既にサイバー・ブロージが乗船していたのです。
 捕縛されたデュマレストは、隙を突いて航行士チャグニーの肉体を精神共生体で乗っ取り、チャグニー本人に成り代わります。サイバー・ブロージとその見習修業士を殺し、自分自身の眠れる肉体を積み荷に隠して寄港惑星のザキムへ降ろした後、元の肉体に戻るために自殺しました。
 ザキムは貧しい星でしたが、二つの奇妙なものが存在しました。一つは、ザキムを照らす二つの太陽が重なるときに死者が蘇る〈幻(デルシア)〉。もう一つは、夜を支配すると言われるものの誰も正体を知らないサンガリ族。そうした世界で、ザキム支配層は評議会を形成し、旧態依然としたしきたりに縛られた社会を形成しています。
 そして、一人の野心に駆られた実力者ガイダペン卿が、ザキム評議会に反旗を翻そうとしていました。たまたま積み荷の中にガイダペンが密輸した武器を発見していたデュマレストは、ガイダペンと対立するラヴィニア達に乞われ、否応なくザキムの抗争に巻き込まれていくのです。

 惑星ザキムで起こる謎の現象デルシアは、死者となったはずの知人の姿が見え、言葉を交わすことができるという不思議な時間です。ザキム人は本当に死者が戻ってくると考えている模様で、ザキム人の死生観にも影響を与えています。このことから、船乗りの中にはザキムを「狂った星」と評する者もいます。
 デュマレストはデルシアのことを太陽光による幻覚だと推測していますけど、あらすじにあるチャグニーの件では苦しめられることになります。チャグニーはサイバー・ブロージ側の人間でしたが、デュマレストが「自殺」をした際に抑圧されたチャグニーの意識が抵抗を示したことで少々後ろめたく感じた模様です。今回の件を境に、デュマレストは精神共生体の扱いに慎重になったように思われます。
 ザキムのもう一つの謎サンガリ族に関しては、詳細は次巻『死霊の惑星ザキム』で明かされます。こちらの設定も、なかなか面白いですね。

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