失われた世界

[題名]:失われた世界
[作者]:アーサー・コナン・ドイル


 コナン・ドイル氏と言えば、名探偵シャーロック・ホームズの生みの親として大変に有名な方です。少なくとも、ミステリーファンで彼の名を知らない人はいないでしょう。
 しかしながら、氏の著作の中にはSF作品があることも忘れてはいけません。中でもメジャーなのが、本作『失われた世界』です。

 主人公エドワード・マローンはイギリスの新聞社に勤める若き新聞記者です。彼はある女性に熱を上げていますが、マローンの求婚に彼女はに肘鉄を食らわせてしまいます。その女性、結婚するのなら有名人でなきゃ嫌だと言うのです。
 かくしてマローンは名を上げるため、最近物議を醸している動物学者チャレンジャー教授の元へと取材に向かいました。教授はアマゾンの奥地で翼竜を発見したと主張しているのですけれど、その証拠が乏しく、学会からペテン師扱いを受けています。マローンは教授に取り入って、事の真相を見極めてやろうとしたのです。
 その目論みはあっさり看破され、あわや取っ組み合いの喧嘩をする羽目になるところでした。ところが幸運な事に、そのときでも紳士的態度を崩さなかったマローンはチャレンジャー教授に気に入られてしまうのです。
 そして、教授が自分の正当性を証明する冒険旅行にマローンは同行することとなったのでした。果たして、チャレンジャー教授は首尾よく成果を上げる事ができるのでしょうか。加えて、マローン君の恋の行方やいかに……。

 本作の主要人物であるところのチャレンジャー教授ですが、大変にユニークなキャラクターです。大きな頭に厳つい肩、胸まである長いあごひげの持ち主ですが、背はあまり高くありません。相当な短気で、しかも他人に対して辛辣であるため始終人を怒らせてばかりいます。しかしながら、行動力は抜群で頭脳も明晰であり、非常に味のある人物と言えるでしょう。
 旅に同行する仲間として、さらに後二人が加わります。一人はチャレンジャー教授の学問上のライバル、比較解剖学者のサマリー教授です。サマリー教授はチャレンジャー教授のことを嘘つきだと決めつけており、旅に加わる目的もそれを暴くために他なりません。痩せぎすな長身のサマリー教授ですが、こちらも辛辣と言うか陰険な性格で、旅の間中チャレンジャー教授と衝突を繰り返します。ただ、己の誤りを素直に認める事ができる真っ正直な人物でもあります。
 最後はジョン・ロクストン卿。世界的な探検家であり、勇敢かつ冷静な人物です。この冒険旅行のリーダー的存在で(チャレンジャー教授はそれが気に入らないようですが)、その優れた能力で仲間達を窮地から救います。

 本作の注目ガジェットは、舞台であるアマゾン奥地の台地ですね。この台地は直径数十キロメートルの楕円形をしており、高さ数百メートルの断崖絶壁により下界から完全に切り離されています。ここに、地上では既に絶滅してしまった太古の生物が今なお生き長らえている、という訳です。
 これはギアナ高地、テーブルマウンテンがモデルのようです。実際、テーブルマウンテン上部に生息する植物はその七十五パーセントが固有種というのですから、あながちフィクションとは言い切れません。
 また、本書に書かれていることを本気にして、実際に探検を行った方々もいらっしゃったようです。残念ながら恐竜は発見されませんでしたが(^^;)、そんな風に信じさせてしまうようなリアリティが本作にはあるのですね。

 この『失われた世界』は恐竜もののSFとして、後の作品に大きな影響を与えています。発表年は一九一二年ですから考証的にはいささか古くなっている部分もありますが、これを言うのはフェアではないでしょう。むしろ、描写の緻密さにこそ注目すべきかもしれません。コナン・ドイル氏が本書を書く上で当時の古生物学を綿密に調べられたのだということが分かります。
 影響の一つとして、映画『ジュラシックパーク2』のサブタイトルが『ロストワールド』であることを挙げておきます。ラストシーンに翼竜が登場するのは偶然ではないでしょうね。
 古典でありながら、冒険小説としての価値はいささかも失われていない、ロマンあふれる物語です。

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失われた世界
Excerpt: 失われた世界『失われた世界』(うしなわれたせかい、原題:''The Lost World'')は、1912年にアーサー・コナン・ドイルが書いたサイエンス・フィクション|SF小説である。児童向け邦題は「..
Weblog: ヒーロー大集合!!
Tracked: 2005-08-04 02:10