虚像惑星バラドーラ

[題名]:虚像惑星バラドーラ
[作者]:E・C・タブ


 〈デュマレスト・サーガ〉第十四巻です。
 デュマレストは今回、バラドーラと呼ばれる伝説の惑星を探す旅に同行することになります。普段、自分が探索する地球の存在を信じてもらえないデュマレストですが、今回は逆の立場になるわけです(^^;)
 どんな望みも叶えられるという噂の惑星バラドーラ。死刑を免れた見返りとして、あるかどうかも分からない理想郷の探索に付き合わされることになったデュマレストですが、その先にあったのは予想だにしなかったものでした。

 惑星名が「テラ」に似ていることから惑星テラルデへと渡ったデュマレスト。しかし、これは失敗でした。テラルデの由来は全く関係がなかったばかりか、ここは畜産業の星であり、渡り者のような部外者には金を稼ぐ手段がほとんどなかったのです。
 次の星へ移動する体力をつけるため、やむを得ずデュマレストは同じ立場の仲間達と共同で、嵐に紛れて飼育場を襲い、飼育動物であるケラクを仕留めて食糧とします。襲撃自体は成功したものの、仲間の一人の迂闊な行動のせいで発覚してしまい、デュマレストは逮捕されてしまいました。
 畜産惑星であるテラルデでは、家畜を不法に殺すことの罰は死刑でした。しかし、オーナーの一人で年老いた女性ウーサン・ラブリアがデュマレストに有利な証言をしたため、かろうじて彼は処刑を免れます。
 命を救った見返りとして、ウーサンは彼女達が探し求める惑星バラドーラへの旅へ同行することを求めました。惑星バラドーラはあらゆる望みが叶えられるという噂の惑星ですが、伝説に取り憑かれた男スーファン・ノヨカが、危険な宙域ヒッチェン塵雲に隠されているらしいことを突き止めていたのです。バラドーラの存在など信じていないデュマレストですが、助けてもらった恩がある上に、サイクランの魔手が迫っていることを察し、探索の旅に加わることにします。
 バラドーラを追い求める夢想家スーファン、死病に冒され新たな肉体を渇望するウーサン、行方不明の娘を消息を求める女パクラ・ハラダ、謎解き担当の情緒不安定な男マレク・コグネツ、そして宇宙船の乗組員達。途中、ヒッチェン塵雲を突破する特殊能力を持った娘エムビラを加え、彼らの乗る宇宙船メイナ号はバラドーラのあるというヒッチェン塵雲へ突入するのですが……。

 本書の注目ガジェットは、惑星バラドーラです。
 バラドーラはゴースト・ワールドとも呼ばれる伝説の理想郷で、そこではありとあらゆる窮乏辛苦への答えがあり、一切の悩み事はないという噂があります。デュマレストならずとも眉に唾をつけたくなるおとぎ話ですが、彼自身が探し求める地球も同じような扱いというのが皮肉です(^^;)
 バラドーラはヒッチェン塵雲(クラウド)とよばれる電子渦の宙域の中にあり、容易に近づけないことからその神秘性が守られています。デュマレスト一行以外にもかつて到達できた者がいたようで、おそらくはそこから伝説が生まれたものと推測されます。
 惑星には無人の都市が存在し、明示されませんが非人類の知性体が建設したもののようです。都市の周囲には高さ三十メートルの壁が張り巡らされ、エムビラの霊気(オーラ)を視る能力(もしくは航空機)がなければ侵入することもままなりません。ヒッチェン塵雲もやはり同じように隠されていることから、建設者はその特殊能力を普遍的に有していたのかもしれませんが、既に無人化していることから詳細は不明です。
 都市の中央地下には、「全ての望みを叶える」と言われている宝が隠されています。ある意味言葉通りのものですけど、どちらかと言うと詐欺臭いですね(笑) 少々ネタバレになってしまいますが、この手のものはシリーズ中でも『夢見る惑星フォルゴーン』などいくつかの場面で登場していますので、異種知性体による神秘であれば『聖なる惑星シュライン』の方がよほど「宝」に相応しいように感じられてしまいます。:-)

 本巻はトレジャーハント的な展開がメインですが、終盤にはちょっとしたミステリー要素があるのも面白い点です。デュマレスト君が名探偵ばりに謎を解き明かしてくれます(^^;) 〈デュマレスト・サーガ〉ならではの設定を活かした点が憎いですね。

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