秘教の惑星ナース

Review-0429:

[題名]:秘教の惑星ナース
[作者]:E・C・タブ


 〈デュマレスト・サーガ〉第十三巻です。
 デュマレストが探し求める地球は、作中世界では伝説上の惑星と見做されており、全ての人類の故郷などという話は真面目に受け止められていません。しかし、ごく少数ながら地球を宗教的象徴と位置付けて崇める人々が存在します。
 今回、デュマレストはそうした集団〈聖地教徒〉と接触を図ることになります。

 惑星トレイダムの鉱山で旅費を稼ぐために働いていたデュマレストは、辺鄙な故郷の惑星から逃げ出してきた若者レオン・ハーヴェイに懐かれてしまいました。レオンの出身地がナース("Nerth")と言う名前であることを知ったデュマレストは、それが「新地球(ニュー・アース)」の変化したものではないかと疑います。
 その後、鉱山でトラブルに巻き込まれたデュマレストは、宇宙船の船員に雇われてトレイダムを離れます。別の惑星へ到着したとき、彼は同じ船にレオンが下等船客で乗っていたことを知りますが、レオンは衰弱していたために命を落としていました。
 たまたまレオンを知っていたという同僚から、出身惑星はナースではなくシャジョックだと聞かされます。デュマレストは遺品をいくつか引き取り、惑星シャジョックへ向かうことにしました。
 一方シャジョックでは、妄執に駆られた資産家ジャルチ・ムーアが、伝説の生物ケルドを探していました。優れた生存能力を買われその探検隊にスカウトされたデュマレスト。ケルドは存在するかも分からないものですが、山岳地帯の未踏領域にはレオンの故郷が存在し、地球への手がかりを求めるデュマレストは誘いに応じることにします。
 しかし、物事の運び具合に、デュマレストは疑問も覚えていました――これはサイクランの罠なのではないか、と。

 本書の注目ガジェットは、〈聖地教徒(オリジナル・ピープル)〉です。
 〈デュマレスト・サーガ〉世界では、地球は既に伝説上の惑星となっており、大多数の人々は存在自体を知らないか、おとぎ話程度の認識しかありません。銀河各地に多種多様な人種が混在することから、それら全ての共通祖先たる地球人類の実在も疑念視されています。
 〈聖地教徒〉はそうした銀河社会の中で、ありもしない惑星・地球を全人類発祥の聖なる地と崇める、奇妙な宗教団体と見做されている模様です。加えて別の理由もあり、〈聖地教徒〉は隠れ里のような状態で自らの集落を秘匿しています。〈聖地教徒〉の集落には、古くからの伝承が残されていることがあり、デュマレストは地球への手がかりを得るために彼等と接触しようとするわけです。
 もっとも、〈聖地教徒〉は地球をエデンのような楽園と捉えており、罪によってその惑星を追われたこと、贖罪を終えたいつの日か地球へ帰還することを信じています。この点において、デュマレストが知る「荒廃し見捨てられた惑星」とは異なるため、自分が地球出身であることを正直に〈聖地教徒〉へ告げるのは得策とは言えない、というジレンマが生まれます。

 今回のお話は、『テクノ惑星カモラード』以上にタイトルに問題があります(笑) 展開上やむを得ないとは言え、『○○惑星△△』の縛りがきついエピソードかもしれません。(ちなみに、原題は"Eye of the Zodiac")
 また、作中でデュマレストはある目的のために精神共生体を使うことになりますが、この状況はサイクランに分子単位の配列が発覚してしまう恐れがある上に、サイクランに対する抑止力としてもあまり役に立たないのではないか、という気がしないでもないです(^^;) なにしろサイクランは、無用とあれば首席サイバーでさえ切り捨てる無慈悲な組織ですので。

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