流血惑星チャード

[題名]:流血惑星チャード
[作者]:E・C・タブ


 〈デュマレスト・サーガ〉第十一巻です。
 本作はまた一風変わったシチュエーションで、なんとデュマレストが元帥として軍を指揮する羽目に陥ってしまいます(^^;)
 ある惑星の権力者に陥れられ、やむなく惑星チャードへと向かうことになったデュマレストは、そこで起きている奇妙な戦争に巻き込まれてしまいます。果たして彼は、正体が発覚することなく無事戦いを収めることができるのでしょうか。

 失われた地球の情報を求め、惑星ペイヤーの図書館を利用したデュマレスト。そんな彼に、横柄で我儘な娘ジーニャが接触を図ってきました。彼女はペイヤーの支配者であるエイハルト・チャン・パレクトの孫娘で、祖父に頼まれてデュマレストを連れに来たと言います。デュマレストは断りたかったものの、地球の情報を餌にされ、同意せざるを得ませんでした。
 しかし、全ては用意周到な罠だったのです。長老チャン・パレクトはデュマレストに負債を負わせ、依頼を受けるか、破滅するかの選択を迫りました。デュマレストはやむを得ず同意し、彼の行方不明の長男サレクを探し出すため、ジーニャと共に惑星チャードへ赴くことになりました。
 ところが、チャードでは戦争が勃発しており、デュマレスト達の乗る〈トップエア〉号へ軍人が乗り込んできました。その居丈高な態度に腹を立てたブランチャード船長は、とっさにデュマレストのことを戦星サマルの高官だと嘘をついてしまいます(笑)
 仕方なしにその嘘へ乗っかることとなったデュマレストは、チャードで下へも置かぬもてなしを受けることになりました。実はチャードの軍隊は即席のお粗末なもので、デュマレストに軍を指揮する元帥になってほしいと頼んできたのです。正体を明かせない負い目もあり、デュマレストはその依頼を引き受ける羽目に陥ります。(今回のデュマレスト君は流されすぎ(^^;))
 チャードの戦争の原因は、有益な植物ロファイオを栽培する農村の住民が多数虐殺されたというもので、普通の人類とは異なる種族アユータ族の犯行だと考えられていました。しかし、アユータ族はこれまで人間と共存しており、動機も薄く、証拠もありません。また、襲われた農村の数少ない生き残りは、皆「怪物に襲われた」と主張しています。
 果たして、この奇妙な襲撃事件の真相は何なのか――逃げ出さないようチャン・パレクトに掛けられた催眠暗示に苦しまされつつも、デュマレストはチャード軍元帥として指揮をし、その上チャン・パレクトの長男を探し出すという困難な任務を遂行していきます。

 元々デュマレストは特に学もない流れ者で、従軍経験と言ったら強制的に傭兵をやらされた程度だと思われますが、あっさりと有能な指揮官ぶりを発揮してしまうのは主人公故でしょうか(笑) もっとも、これまでもチームを率いたり(『誘拐惑星オウレル』等)、大がかりなトレジャー・ハンティングを指揮したり(『植民惑星ドラデア』)といった経験はありますので、錬度の足りないチャード軍を統率するには十分だったのかもしれません。
 また、本作に登場するアユータ族は、弱いテレパシー能力を持ち原始的生活を送る先住民族ですが、非人類ではなく人類から派生した種族のようです。デュマレストはアユータ族を、テレパシーを持つが故に闘争心が薄れ、衰退したものと推測しています。デュマレストらしい考察と言えるかもしれませんね。

この記事へのコメント

  • 手もふ

    流れよわが涙、と警官は言った。のスイックスを検索してたどり着きました。まだ読了してないのでレビューを読むのはいったんやめてこちらに書かせていたたきました。400レビューは凄いですね!
    2015年01月28日 02:52
  • Manuke

    ありがとうございます。
    最近ちょっとペースは落としましたが、SFへの愛は変わりません(^^;)

    『流れよわが涙~』を読んでいらっしゃるのですか。
    ディック氏は内容もさることながら、なんと言ってもタイトルが良いですよね。
    こちらの〈デュマレスト・サーガ〉などは、原題がほとんどヒロインの名前(本巻は"Zenya")なので、日本人的にはちょっとイマイチに感じてしまいます(笑)
    2015年01月30日 23:15
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/411325631

この記事へのトラックバック