誘拐惑星オウレル

[題名]:誘拐惑星オウレル
[作者]:E・C・タブ


 〈デュマレスト・サーガ〉第十巻です。
 精神共生体の所持発覚後、サイクランから逃げ続けるデュマレストですが、今回は立ち寄った惑星上で誘拐事件に巻き込まれてしまいます。
 デュマレストの目前で起きた虐殺と誘拐。それを見過ごせず、デュマレストは少年を助けようと行動を始めます。果たして、少年は何故誘拐されたのか――。

 地球の在り処を求めて旅を続けるデュマレストは、惑星オウレルの裏通りで、少年とその父らしき男が強盗に襲われている場面に出くわしました。彼はナイフを使って強盗達を倒しますが、レーザー銃で撃たれて重傷を負ってしまいます。
 意識を取り戻したとき、そこは少年ジョンデルの家である農場でした。ジョンデルは母マクガールと、その夫エルレイ(ジョンデルの父親ではありません)と共に暮らしていたのです。
 医師でもあるマクガールはデュマレストに礼を言った後、傷を治すためにしばらく滞在することを勧めました。ジョンデルはデュマレストに懐き、マクガールも彼に好意を寄せるようになりますが、非暴力主義のエルレイはデュマレストを疎んじていました。
 デュマレストが農場を去ることに決めた夜、日常は唐突に破られることになります。南の砂漠を越えた場所に住む狂人の集団メレヴガン人が、前触れもなくマクガールの農場を襲ったのです。エルレイや農場で働いていた原住民は殺され、ジョンデルは男達に連れ去られてしまいます。瀕死の重傷を負ったマクガールは、デュマレストにジョンデルを救い出してくれるよう願った後、事切れました。
 マクガールの農場は決して裕福ではなく、誘拐しても利益にならないどころか、ジョンデルの家族は全員殺されています。にも拘らず、ジョンデルは何故か誘拐され、その理由は判然としません。
 デュマレストは農場の管理を宇宙友愛教会に依頼した後、ジョンデルを救出するための人員を集め、狂人の支配するメレヴガンへと向かいます。マクガールとの約束のため、そして何よりジョンデルの自由のために。

 本書ではデュマレストの義理堅さと誠実さが際立つエピソードです。デュマレストが少年の母マクガールと交わした約束は彼自身しか知らず、そこから利益が得られるわけでもありません(この点は幾人かから指摘されます)。しかし、デュマレストにとっては理由はそれで十分なのです。また、ジョンデル少年を救おうとする衝動には、父性愛的な側面もあった模様です。
 他にも、病を患った妻を案ずる渡り者プリレリットとのやり取りなど、ただクールでシビアなだけではない二面性がデュマレストの魅力と言えます。
 かの私立探偵フィリップ・マーロウの台詞に「タフでなければ生きていけない。優しくなれなければ生きている資格がない」という台詞がありますが、ハードボイルドの主人公はこうでなくてはいけませんね。:-)

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