植民惑星ドラデア

[題名]:植民惑星ドラデア
[作者]:E・C・タブ


 〈デュマレスト・サーガ〉第八巻です。
 忘れられた地球を求めて宇宙を放浪するデュマレスト。ある経緯から知った情報のせいで、彼は銀河を影から操る巨大組織サイクランに付け狙われるようになっていたのですが、今回は遂にその情報を自ら活用することになります。

 地球を聖地と崇める宗教集団・聖地教徒(オリジナル・ピープル)に接触せんと、デュマレストは惑星セレンドを訪れました。しかし、その地の隠れ村は既に破壊された後でした。その上、デュマレストは何者かに襲われ、返り討ちにはしたものの重傷を負ってしまいます。高額な治療費を払わされ別の星へ追放されかかったデュマレストは、これが罠ではないかと訝しみ、脱走して別の宇宙船へ逃げ込みました。
 下等旅行の後、彼が辿り着いたのはドラデアという惑星でした。この星では、最初に植民を行った宇宙船第一号の所有者(オーナー)の子孫が惑星の国主(オーナー)となることが定められているのですが、現国主コーゼルには子供がおらず、二人の相続候補がそれぞれ自らの正当性を主張しています。
 その候補の一人であるヴェルキアは、凶暴な怪物鳥クレルと人間を戦わせる闘技場で、旅費を稼ぐために闘士となったデュマレストを目にしました。クレルは獰猛で、人間にほとんど勝ち目はないはずですが、デュマレストを別の星で見かけたという知人セルカスの勧めに従いヴェルキアは彼に賭けます。そして、デュマレストは見事クレルを倒し、彼女はもう一人の相続候補モンターグの鼻を明かすことができました。
 ヴェルキアは国主相続候補ではあったもののその立場は危うく、彼女を案ずる年長者セルカスはデュマレストを護衛として雇うことにしました。突然変異のため全身に黒い網模様のあるヴェルキアは、かつて受けた酷い仕打ちのせいで男性不信に陥っていましたが、自分を奇異の目で見ないデュマレストを愛するようになります。
 しかしその矢先、国主コーゼルが急死し、ヴェルキアとモンターグは次期国主の座を争うことになりました。ヴェルキアの主張する正当継承者の証拠は乏しく、このままでは残忍で傲慢なモンターグと、彼を支援するサイバー・スラットが惑星の実権を握ることになってしまいます。
 ヴェルキアの継承権を証明する唯一の手立ては、半ば伝説と化している宇宙船第一号を発見すること――果たして彼らは、それを成し遂げることができるのでしょうか。

 本書の注目ガジェットは、精神共生体(アフィニティ・ツイン:"affinity twin")です。
 精神共生体は十五個の分子単位からなる人工共生体で、裏返しと対になって支配側と従属側の二種類が作られます。支配側をAに、従属側をBに注射すると、BはAに肉体の制御を完全に乗っ取られてしまうことになるという、使い方によっては恐るべき威力を発揮するものですね。但し、共生中はAも自分の肉体へ戻ることができず、それを解消するにはBの肉体を殺すしかありません。(あるいは逆に、Aの肉体が死んでBが支配から解放されるか)
 元々、精神共生体はサイクランの研究所で偶然発見されたものですけど、キーラン(カリーン)の夫ブラスキーがそれを盗み出し寝たきりのキーランに投与したことをきっかけとして、今はデュマレストの手に渡っています。
 サイクランは野望達成のために精神共生体を喉から手が出るほど欲していますが、組み合わせを総当たりで試すと四千年ほどかかってしまうことから、唯一情報を知るデュマレストをなんとしても捕らえようと追跡しています。もっとも、デュマレストが死んでしまうと精神共生体の組み合わせも闇に葬られてしまうため、サイクランは彼を殺さず生け捕りにしようとしており、そのせいで詰めが甘くなっているのは皮肉ですね。

 精神共生体の秘密を知ったせいで追われる立場になったデュマレストですけれども、今回はその精神共生体を使ってサイクランへ一矢報いるわけです。もっとも、この精神共生体は(実にサイクランらしい)非道の発明で、後にデュマレストを苦しめることになります。
 また、本書は伝説の植民船を探すという〈トレジャーハントもの〉的な側面も面白いですね。失われた太古の宇宙船の捜索とそれにまつわる様々な困難に、手に汗握ること間違いなしです。

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