天の光はすべて星

[題名]:天の光はすべて星
[作者]:フレドリック・ブラウン


 無人島に一冊だけ本を持っていくことができるとしたら、どの本を選ぶか――読書好きにとって、究極の選択と言えるでしょう。
 私がもしその選択を突きつけられたときに、候補リストの筆頭に上がるのが本作『天の光はすべて星』です。
(一つに絞りきれないところが優柔不断(^^;))

 『天の光はすべて星』の主人公はマックス・アンドルーズ、五十七歳を迎えるロケット技師です。非常に行動的かつ少々強引な性格ではあるものの、少年の心を失わない愛すべき男性ですね。
 マックスは“星屑”と呼ばれる人々の一人です。“星屑”とはこの作品中のタームで、「星に取り憑かれた者」を指します。宇宙を愛し、星へ辿り着くことに恋い焦がれるタイプの人のことです。マックス自身かつては宇宙飛行士だったのですが、事故によって片足を失い、引退してしまっています。それでも、宇宙と星への情熱は変わらず持ち続けているのです。
 物語は一九九七年――人々があまり宇宙に興味を抱かなくなった時代――マックスが弟の家に逗留中の場面から始まります。ここでマックスは、とある女性上院議員候補が木星探検計画を公約として立候補したことを知ります。マックスはこの計画を実現させるために奔走を始めるのですが……。

 奇才フレドリック・ブラウン氏の作品はウィットに満ちたものが多いのですけど、今作はどちらかと言うと落ち着いた内容の物語です。現実に実現しそうにないSFガジェットは出てきませんし、奇をてらった展開もありません。物語の時代は一九九七年~二〇〇一年と、今となっては『過去』になってしまいました。
 しかしながら、マックスを始めとする“星屑”達の狂おしく、そして切ないまでの情熱は決して色あせず、読み手の心を打ちます。エピローグなど、涙なしには読めないほどに。
 オールタイム・ベストの名にふさわしい、名作中の名作です。
 また、書名『天の光はすべて星(原題:"The Lights in the Sky Are Stars")』の響きの美しさも忘れてはいけませんね。私など、タイトルを読むだけで目頭が熱くなってくるほどですし(笑)

 本書の注目ガジェットは、なんと言っても“星屑”(原文では"starduster")です。彼らに共感できるかどうかで、この小説の評価が分かれてしまうかもしれません。
 私は終始共感し、感情移入しまくりでした。だって、私自身が“星屑”の一員なのですから……。

この記事へのコメント

  • むしぱん

    お久しぶりです。ブラウンは「発狂」と「火星人」しか読んでませんでしたので、Manukeさんが無人島一冊本として筆頭候補にあげるのであればと、読みました。
    よかったです。星屑 = SFファン、ですね。宇宙開発を推進するための政治上のかけひきに重点を置いた展開も新鮮でした。ソ連の崩壊や、宇宙船事故による宇宙開発の停滞なども、まるで予言してるかのような。
    ちなみに、私の無人島一冊本の筆頭候補はやはり「成長の儀式」です(笑)。次点は、ロバート・ネイサンの「夢の国をゆく帆船」。どちらも何度も読み返したので。Manukeさんの他の候補も宜しければお教え下さい。
    2013年03月31日 23:23
  • Manuke

    お久しぶりです-。
    『天の光はすべて星』は、原書も購入した上に復刻版も三冊買ったという入れ込みようだったりします(笑)
    もう、マックスの生き様を読むたびに涙せずにはいられないです。

    『成長の儀式』も良いですね。マイアの成長と作中世界に対する認識の変化が面白く感じられました。
    『夢の国をゆく帆船』は未読なので、機会があったら読んでみたいと思います。

    他の候補を挙げるのも苦慮するところですが(^^;)、強いて選ぶならやはりビッグスリーからでしょうか。
    一番好きな作家さんであるアシモフ氏は、〈イライジャ・ベイリ三部作〉の『はだかの太陽』。
    ハインライン氏は、『月を売った男』(『デリラと宇宙野郎たち』収録)。
    クラーク氏は、『楽園の泉』。
    三巨匠は多作かつ名作揃いなので、絞るのも大変です(笑)

    あと、グラント・キャリン氏の『サターン・デッドヒート』も、例の土星のシーンでは脳裏に描いた映像に身震いするほどの感動を……。

    と、挙げていくと、どんどんリストが膨らんでいってしまいます(笑)
    無人島、本棚ごと持ち込んだら駄目でしょうか?(本末転倒です)
    2013年04月02日 00:30
  • むしぱん

    私も「成長の儀式」の原書は購入しました。やはり好きな本は原書で味わってみないとと思ったからなのですが、残念ながら英語力が及ばず、好きなシーンの拾い読みした程度で挫折してしまいました(笑)。

    ビッグスリーからだと私は「ネメシス」「宇宙に旅立つ時」「遥かなる地球の歌」あたりかなあと今は思うのですが、これはその日の気分によって変りそうです・・・

    無人島が広かったら、「サターン」を読んだあと、どこかにお宝が埋まってないか探しにいきたくなりそうですね。
    2013年04月02日 23:41
  • Manuke

    > 私も「成長の儀式」の原書は購入しました。やはり好きな本は原書で味わってみないとと思ったからなのですが、残念ながら英語力が及ばず、好きなシーンの拾い読みした程度で挫折してしまいました(笑)。

    私も同じです(^^;)
    あと、日本語特有の言い回しを原文で確かめてみたり。こうした部分は、翻訳者さんの個性が出るところですね。

    > 無人島が広かったら、「サターン」を読んだあと、どこかにお宝が埋まってないか探しにいきたくなりそうですね。

    あはは、確かに。
    この場合、ジュニアに相当する心強い相棒を探すのが先決かも。:-)
    2013年04月03日 23:44

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