共生惑星ソリス

[題名]:共生惑星ソリス
[作者]:E・C・タブ


 〈デュマレスト・サーガ〉第四巻です。
 本巻はシリーズ全体に関わるエピソードで、この出来事を境にデュマレストはサイクランに超重要人物としてマークされるようになります。今まではデュマレスト本人は(地球の出身という点を除けば)あくまでただの渡り者だったのですが、本作以降は明白にサイクランから付け狙われるようになり、ストーリーにもメリハリが出てきます。
 たまたまデュマレストが助けることになった透視能力を持つ娘カリーン。彼女には驚くべき秘密が隠されていたのです。

 デュマレストが特等旅客として乗っていた宇宙船が惑星ロギスに寄港したとき、そこでは法が存在しなくなる殺戮期(ブラッドタイム)が始まり、暴力が猛威を振るっていました。
 暴徒から魔女と罵られ、今にも危害を加えられんとしていた赤毛の美女を目にしたデュマレストは、命がけで彼女を救い宇宙船へと連れ帰ります。娘の名はカリーン。旅をしながら占いなどで生計を立てていた彼女は、実は本物の透視能力者(クレアボヤント:"clairvoyant"、作中では透視と言うより未来予知?)だったのですが、その的中しすぎる予知が災いしていざこざを起こしていました。
 カリーンは自分を救ってくれたデュマレストを愛するようになりますが、宇宙旅行中に奇妙な予感を覚えます。それが自分たちの乗る宇宙船の爆発だと見抜いたデュマレストは、救命袋で船を脱出し、辛くも難を逃れます。
 運よく別の宇宙船に拾われた二人ですが、辿り着いた先は鉱山の惑星クロン。手持ちの資金が乏しい彼らにとって、金を稼ぐ手段のないどん詰まりの星でした。デュマレストは、なんとか惑星を脱出する方法を見出そうとするのですが……。
 一方、カリーンの故郷である惑星ソリスでは、豪族コミスにサイバー・ミードが接触しようとしていました。そしてまた宇宙友愛教会では、惑星サルドの豪族セントン・フレンチが僧正ブラザー・ジェロームに家出娘の捜索を懇願していました。
 病に伏せった意識不明のコミスの妹キーラン、行方不明のセントンの娘マリーニ、そしてカリーン――赤毛で緑の瞳という共通点を持つ彼女たちは、サイクランが血眼になって探す、あるものと深いかかわりがあったのです。

 本書の注目ガジェットは、特等旅行(ハイ)です。
 特等は、宇宙旅行における三つの等級のうちの一つで、低速代謝剤を用いて代謝活動を低く抑え、旅行の体感時間を短く感じさせます。残り二つのうち、下等は本来動物輸送のためのもの、中等は船員が使うものですので、宇宙船の旅客には特等こそが一番真っ当な旅行方法ということになるのでしょう。
 特等旅客は船のスチュワードにより無針の皮下注射器(ハイポガン)で代謝加速剤を注入され、旅行中は低速代謝状態で過ごすことになります。この状態では物体の落下が目にも留まらない速さに見えるなど、通常時とは色々と異なることが起きます。代謝加速剤そのものはさほど高いものではなさそう(船員が気軽に使う場面もあります)ですが、特等旅行が下等と比較するとかなり高価なのは、スチュワードによるケアが不可欠だからなのかもしれません。

 〈デュマレスト・サーガ〉は一話完結的なエピソードが多いのですけれども、本巻は設定上の転換点で、後の展開に大きな影響を及ぼします。このこともあってか、作中でもカリーンはデュマレストに強い印象を残したようで、彼女のことを思い起こす場面がしばしば登場します。
 カリーンの置かれた状態については、後にデュマレスト本人も体験することになりますが、少し状況に差異が見受けられます。カリーン自身の特殊な事情によるものなのか、それとも単にタブ氏の設定ミスなのかは不明です(^^;)
 低速代謝剤影響下にあったとき彼女のシンクロ状態や、二人の「話し合い」の内容などを考察してみるのも面白いかもしれません。

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