スター・キングへの帰還

[題名]:スター・キングへの帰還
[作者]:エドモンド・ハミルトン


※このレビューには前作『スター・キング』のネタバレがあります。ご注意ください。

 このお話は、スペースオペラの名手エドモンド・ハミルトン氏による傑作活劇、『スター・キング』の続編に当たる作品です。
 前作では主人公ゴードン君の精神のみが未来を訪れていましたが、今作では肉体丸ごと時間旅行を果たすことになります。これでヒロインであるリアンナ王女と添い遂げ、めでたしめでたし――とは行きません。二人の心はすれ違い、更に銀河を巡る動乱へと巻き込まれてしまうのです。果たしてゴードンは新たな危機から世界を救えるのでしょうか。そしてゴードンとリアンナの恋の行方やいかに。

 二十世紀にて保険会社に務めているジョン・ゴードンは、精神分析医の戸口を叩いていました。先の物語からしばらくの時間が経過し、ゴードンは自分が体験したことが現実だったのか確信が持てなくなっていたのです。自分が未来世界の王子と精神を交換し銀河を救った、などということを証明するものは何一つありませんし、他人が聞いても妄想にしか思えないでしょうから無理もありません(^^;)
 ところが、治療を受けている途中でゴードンは再びザース・アーンからの交信を受け、今度は肉体ごと二十万年未来へと移動します。愛するリアンナ王女と再会したゴードンは、自分の記憶が幻ではなかったことに安堵するのです。
 けれども、それで万事丸く収まるという訳にはいきませんでした。リアンナは事の次第を聞かされていましたが、あくまで先の事件で彼女が慕ったのは王子ザース・アーンであり、ゴードンは初対面の人間でしかありません。精神は同一だと言われても、なかなか簡単に切り替えられないのは当然です。そうした気まずさもあって、お互いを思いやっているにも拘らず二人の間には若干よそよそしさが生じてしまうのでした。
 しかも、リアンナ王女の祖国フォマロート王国では動乱の火種が燻っていました。彼女のいとこで非人類種族から多大な支持を集めるナラス・テインを核に、人類と非人類の対立が起ころうとしていたのです。
 しかしナラス・テインは傀儡に過ぎず、外宇宙辺境伯サイン・クライヴァーとその仲間である正体不明の生物が背後にいることが判明します。ゴードンはその正体を探るため盟友ハル・バーレルと共に外宇宙辺境へと向かったものの、精神攻撃を受けてサイン・クライヴァーに捕まってしまいました。ところが、そこでゴードンは思いもよらぬ人物と再会することになるのです。

 本書の注目ガジェットは、肉体の時間移動です。
 とは言うものの、やはり前作に登場する「精神の時間移動」と同様、ほとんど作中での説明はありません。『スター・キング』冒頭ではザース・アーンが「いかなる物質も時間を飛ぶことはできない」と言い切っていますが、スペースオペラですからツッコミはなしで(^^;)
 前作の末尾でリアンナから再会を約束されているものの、その後未来からの交信は一切なかったようです。可哀想に、ゴードンは先の出来事を自分の妄想だったと思い始めており、医師はその原因が彼の抑圧された欲望によるものと分析までしてしまっているわけです。せめて定期的に連絡を取ってあげればいいのにと思いますが、やはりザース・アーンは放蕩王子なだけに気が利かないのでしょうか。
 もっとも、医師はゴードンの症状が進行して失踪してしまったと考えており、意地悪な読み方をすればそれを否定する客観的な根拠は何一つない訳です。しかし、そうだとすると我等がゴードン君は大変豊かな想像力を持った人物ということになりますから、スペースオペラ作家として成功できるかもしれませんね。:-)

 物語の序盤ではゴードンとリアンナのすれ違い、そしてゴードンが未来世界ではお客様扱いであることから、少々じれったさにやきもきさせられる感がなきにしもあらずです。中盤あたりからストーリーは大きく動き出し、俄然面白くなってきます。
 ゴードンももちろん活躍してくれるのですが、後半の展開ではある人物が非常に大きな役割を果たします。彼はもう一人の主人公と言うべき人物で、その不思議な魅力こそが本書の一番の見所ではないでしょうか。

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