スターストリーム

[題名]:スターストリーム
[作者]:ジェフリー・A・カーヴァー


※このレビューには前巻『スターバースト』のネタバレがあります。ご注意ください。

 記憶を失った「殺しても死なない男」のお話『スターバースト』の続編です。
 ただし、本作は前作とがらりと方向性が変わり、主人公は八歳の少女クローディアです。物語後半まで行かないと何が起きているのか分からない点は相変わらずですが(^^;)、サスペンスよりもディザスター・ノベルのテイストが強い印象ですね。
 ほぼ主人公ラスキンの視点で綴られた『スターバースト』とは異なり、友達のシェキや大人達といった別の人間/生物からの視点も加わります。また、前作のキーパーソン(?)であったロボットのジーヴスが、本作では主に狂言回しとしてバックボーンの解説等を行う役割を担います。
 銀河中心の植民惑星に向けて移動する恒星船〈チャリティ〉には、恐るべき危機が迫りつつありました。そして〈チャリティ〉の命運は、まだ幼い少女クローディアの双肩にかかっていたのです。

 多数の者の思惑が絡み合って複雑な状況を形成していた〈プロジェクト・ブレークスター〉。計画通り、恒星ベテルギウスは銀河中心へ通じるスターストリームへと変貌を遂げましたが、プロジェクトの中心人物であったウィラード・ラスキン、親友のマックス、暗殺者ガンズ、そして〈輝くもの〉(知性を持った恒星ベテルギウス)は星の崩壊に巻き込まれて融合し、それまでとは異なる存在〈新しいもの〉へと変貌を遂げました。
 スターストリームはこれまでよりも遥かに速いスピードで銀河中心方向へ移動することができるゲイトウェイであり、これを利用した植民が開始されることになりました。しかしその後、謎の存在がスターストリームを航行中の宇宙船やその周辺惑星を襲撃し、乗員・住人を虐殺するという恐るべき事件が起こり始めます。襲撃頻度は決して高くなかったものの、その正体不明の敵はカースロッグ人(スロッグ)と名付けられ、スターストリームを航行する上で最も懸念すべきものでした。
 そして、スターストリーム誕生から約九十年後――恒星船〈チャリティ〉が、開拓者と資材を載せてスターストリームを下っていました。八歳の少女クローディア・メルニクは、両親と共に〈チャリティ〉に乗り込み、植民のため恒星シュリックの第三惑星ハート・オヴ・ヘヴンを目指しています。
 クローディアは近々船内で開演予定のサーカスのバックヤードに迷い込み、そこでルピコ(旧地球の狼と惑星カーディフの小型熊との雑種)の子供ロポに懐かれたり、飛び級で同級生になった二歳年下の少年シェキ・ヘンドゥと親しくなったりと、彼女なりの生活を謳歌していました。クローディアにはある特殊な才能が秘められていたものの、まだ本人はそれを自覚していませんでした。
 しかし、乗客達の知らないうちに、〈チャリティ〉には危機が迫りつつありました。乗員の上層部には、スロッグが〈チャリティ〉に接近中であるという情報を掴んでいたのです。けれども、スロッグを居住惑星に誘導してしまう危険性から、スターストリームを航行する船は近くの惑星に避難することが許されていません。
 何もかもを消滅させてしまうスロッグの脅威。それに対処する手段として、クローディアの力に注目していた存在が二つありました。一つは、〈チャリティ〉のインテリジェンス・システムに密かに便乗していたAIのジーヴス。そしてもう一つは――長らく人類とコンタクトを断っていたスターストリーム意識体、ラスキン/〈新しいもの〉。

 本書の注目ガジェットは、スターストリームです。
 スターストリームは前作『スターバースト』中で、恒星ベテルギウスを意図的に超新星化させることで作り出された星間ゲイトウェイですね。元々、作中の舞台ではK空間ワープという超光速移動手段が存在していたものの、あまり遠くまでは行けなかった模様です。一方、スターストリームは旧ベテルギウス跡のブラックホールから銀河中心近辺へ、数か月程度で到達できるようです。
 スターストリーム内には文字通り「流れ」があり、中に進入した宇宙船はその流れに乗って下っていくことになります。途中には節点(ノード)がいくつかあり、そこから「途中下車」することも可能です(下車後はK空間ワープを使用)。また、詳細は不明ですが逆方向のストリームも存在するようで、それを使うことでベテルギウスまで戻ってくることもできます。
 スターストリームが完成してから後、人類及び交流のある異星人の文明はストリームに沿って植民を広げており、移民ラッシュが起きているようです。ベテルギウスから銀河中心までとなると数万光年もあるわけですから、細長くはあるものの相当に広大な開拓地が存在することになりますね。
 進出の結果、新たに交流が始まった異星文明も少なからずあるのですが、他方でスターストリーム誕生の際にその余波で滅亡してしまった星もあったとされています。個人的には、傑作お馬鹿SF『銀河ヒッチハイク・ガイド』でヴォゴン人に壊されてしまった地球を連想してしまいます(^^;)

 主人公のクローディアは利発さと歳相応の感性を持つ女の子で、お話は彼女の成長物語でもあります。前作のラスキン同様、自分の理解を超えた事態に巻き込まれていくわけですけど、まだ幼い子供である分、よりかわいそうな印象ですね。周囲の大人達がもう少しフォローしてあげるべきじゃ、と感じてしまいます(特にジーヴス(笑))。
 一方、前主人公ラスキンは、マックス・〈輝くもの〉・その他の人間や異星人と融合して、スターストリーム意識体〈新しいもの〉へと変化しています。〈新しいもの〉は恒星船〈チャリティ〉のことを案じていますが、元々(の一部)は人間だったにも拘わらず総体としての〈新しいもの〉は思考形態がかなり人間とは異なるらしく、船のクルーと上手く意思疎通を図ることができないようです。
 その他、聡明ながらも少々引っ込み思案な少年シェキ、クローディアが大好きなルピコの子供(子犬?)ロポ、かつて妻をスロッグに殺された〈チャリティ〉キャプテン・ソーニカン、生徒思いの情報ティーチャー(AI)ミスタ・ジズマー、いつも謝ってばかりいる異星人イム=ケク人のロティ等々、各キャラクタの立場がバリエーションに富んでいるのが面白いです。加えて、読者に語りかけるナレーターの役割を果たしつつ、色々と裏で画策しているジーヴスも味がありますね(^^;) ジュブナイル風味が魅力的な異生物コンタクトSFです。

この記事へのコメント

  • ちゅう


    こんばんは。お久しぶりです。

    これ持ってるし、読んだ形跡(しおり代わりのポストイット)があるのですが、記憶にありません。

    また時間を見つけて再読します。
    2013年01月22日 20:24
  • Manuke

    『スターバースト』と比べると、ちょっと展開が地味目ではありますね。
    個人的にはジーヴスがお気に入り。ネタ元のウッドハウス氏のジーヴスほどすっとぼけてはいませんけど(^^;)、人工知性ながら魅力あるキャラクタだと思います。
    2013年01月24日 20:40

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