アシモフのミステリ世界

[題名]:アシモフのミステリ世界
[作者]:アイザック・アシモフ


 SF三巨匠の一角であり、非常な多作で知られるアイザック・アシモフ氏の作品のうち、特にSFミステリ関連を集めた短編集です。
 アシモフ氏の作品は、元々理詰めの展開であることが多い印象ですね。氏の代名詞とも言える〈ロボットもの〉ではロボット三原則を使ったロジック・パズルがしばしば登場しますし、本書収録のデビュー作『真空漂流』からして物理法則による解決で締めくくられます。また、氏ご自身も現代物の推理小説をいくつか執筆される方ですから、その両者が融合するSFミステリの登場は自然な流れだったのかもしれません。

◎歌う鐘

 月から出土する、妙なる響きを鳴らす天然の鐘、「歌う鐘」。それは人々を陶然とさせる音を発するものでしたが、ひびの入っていないものは一ダースもないという貴重な存在でした。
 宇宙船パイロットで、証拠を残さない犯罪を手がけてきたルイス・ペイトンは、ある日盗品個売人のアルバート・コーンウエルから、月に隠された多量の「歌う鐘」の話を聞かされます。それを盗掘した鉱山師は事故で死亡したため、ペイトンに鐘の回収を手伝って欲しいと持ちかけてきたのです。
 しかし、ペイトンはすぐには行動せず、四ヶ月後の八月になるまで待てとコーンウエルに告げました。ペイトンは毎年、八月の一ヶ月をロッキー山脈にある避難所に一人で立て籠もって過ごすという習慣をずっと続けてきたためです。
 そして八月になり、例年通り避難所で生活するという偽装を終えた後、ペイトンはそこを抜け出してコーンウエルと共に宇宙船で月へ向かいます。「歌う鐘」の発見に少々手こずったものの、それを回収した後、ペイトンはコーンウエルを熱線銃で射殺しました。そして、地球へ帰った後に宇宙船を証拠隠滅し、何食わぬ顔で避難所へ戻ります。
 コーンウエル殺害時の熱線銃の光をたまたまパトロール・シップが目撃したことから、月面初の殺人事件は当局の知るところとなり、すぐにペイトンが容疑者に挙げられました。しかし、用意周到なペイトンは一切の証拠を残してません。
 弱り果てた地球連邦検察局警視H・セットン・ダヴェンポートは、そこで高名な地球外環境学者ウェンデル・アース博士を頼ることにしました。丸々と太ったアース博士は、乗物恐怖症のため地球外どころか徒歩で行ける範囲外へは一切行こうとしない大変人でしたが(^^;)、明晰な頭脳の持ち主でもあったのです。
 果たしてアース博士は、アリバイの完全な欠如――避難所外へ出たという証拠が一切ないという状況――を崩すことができるでしょうか。

◎もの言う石

 地球から一億キロメートル以上も離れた場所にある第五ステーション。たった一人でここに勤務する青年ラリー・ヴァーナードスキーの元に、ある日宇宙船〈ロバートQ〉がやってきました。
 〈ロバートQ〉が第五ステーションへ立ち寄ったのは、超原子力エンジンの不調のせいでした。船長からエンジン修理を請け負ったヴァーナードスキーですが、偶然船の一室に、これまで見たこともないほど大きなシリコニー(珪素生物)がいることを知ります。しかも、そのシリコニーは人語を解したのです。
 船長と二人の部下は、シリコニーは単にペットとして飼っているのだと言い訳したものの、ヴァーナードスキーは真相を察していました。彼はウェンデル・アース博士の論文で、シリコニーがガンマ線でエネルギー補給を行っているという説を知っており、〈ロバートQ〉一行がこれを天然のウラニウム探知機代わりにして、巨大なウラニウム星を発見したのだろうと見抜いたのです。
 ウラニウム盗掘は違法でしたから、ヴァーナードスキーは愛想良く修理を続けるふりをしながら、エンジンが出航後に故障するよう細工しました。そして、〈ロバートQ〉出発後、パトロール警官ミルト・ホーキンスに連絡して後を追ったのです。
 ところが、〈ロバートQ〉はエンジン停止のせいで流星に衝突し、大破していました。乗員三人は死亡し、シリコニーも数言を二人に残して死んでしまいます。
 盗掘の証拠たるウラニウムは発見できましたが、それが産出されたとおぼしきウラニウム星のありかはどこにも記されてはいませんでした。
 かくして、ダヴェンポートは再びウェンデル・アース博士に謎の解明を依頼するのですが……。

◎その名はバイルシュタイン

 カーモディ大学の化学図書館で殺人事件が起きました。被害者は若い女性司書ルウェラ・マリーで、彼女が同僚のスーザン・モリーと共にお茶を飲んだとき、その砂糖に青酸カリが入っていたのです。二人は赤の他人ですがよく似ており、「図書館の双生児」と呼ばれていました。
 図書館には二人の他、五人の学生と一人の中年男性がいました。しかし、砂糖壺に入れられた青酸カリはヘルムス・ロドニー准教授の研究室に置かれていたもので、誰でも持ち出しが可能でした。
 事件を担当した「わたし」(名前不明、おそらく刑事)の事情聴取に対しスーザンは、お茶の用意をしたのはルウェラであり、自分はフロント・デスクにいたのだと述べました。しかし、「わたし」及びロドニー准教授は、その説明があべこべであり、毒入りのお茶を用意したのがスーザンなのではないかと疑います。けれども、二人は元々似ている上に、当日は服装まで似ていたため、二人のうちどちらがフロント・デスクにいたのかを覚えている者はいませんでした。
 果たして、お茶を用意したのはどちらだったのか――。

◎やがて明ける夜

※『停滞空間』収録作と共通。

 惑星間天文学会議に参加すべく地球へ戻ったエドワード・タリアフェロ、スタンリイ・カウナス、バタースリイ・ライガーの三人の天文学者。彼らはかつての同級生であり、十年ぶりの再会でした。現在、タリアフェロは月、カウナスは水星、ライガーは小惑星ケレスの観測所に勤務しており、滅多に休暇もない状態でしたが、それでも地球外に設けられた観測所への一番乗りという栄誉は困難を補って余りあるものでした。
 カウナスの部屋で旧交を温める三人の下へ、もう一人の同級生ロメロ・ヴィリアーズが姿を現します。彼は四人の中で最も優秀だったのですが、卒業前に病に倒れて心臓を悪くし、博士号を取ることも、地球を離れることもできなくなってしまったのです。そしてヴィリアーズは、自分を差し置いて業績を上げる三人のことを理不尽にも恨んでいました。
 ヴィリアーズはかつての友人達に、自分は質量転移装置を開発し、それを使えば宇宙船なしで宇宙旅行ができるようになると告げました。そして、きみたちよりも優れた仕事をするだろうと。
 質量転移法を明日の会議で予告なしに発表するつもりだと言うヴィリアーズに対し、それが妄想ではないかと疑った三人は、論文を見せてくれるよう頼みます。しかし、猜疑心の強いヴィリアーズはそれを拒否し、部屋を去りました。
 翌日、三人は宇宙航行分科会議長ヒューバート・マンデルから、ヴィリアーズが心臓麻痺で亡くなったことを知らされます。それは三人のうち誰か一人が深夜、ヴィリアーズの部屋を訪れ、論文を見せろと強要したせいでした。ヴィリアーズが心臓発作で昏倒すると、その誰かは論文をマイクロフィルムに写し取った後に灰皿の上で燃やし、立ち去ったというのです。死の間際、ヴィリアーズはそれをマンデルに電話したのですが、犯人が同級生であることしか言い残せませんでした。
 調査の結果、マイクロフィルムはヴィリアーズの部屋の窓外に隠されていたのが発見されますが、既に太陽の光で駄目になっていました。
 果たして犯人は誰なのか――同級生の三人ともが否定する中、マンデルはある人物に謎の解明を託すことにします。それは乗物恐怖症で部屋からほとんど出ることもない地球外環境学者、天才かつ奇人のウェンデル・アース博士その人でした。

◎金の卵を産むがちょう

 本作は厳密には推理小説ではなく、「金の卵を産むがちょう」が実在したという設定の下で行われた科学的調査を綴ったお話です。架空物質チオチモリンの論文に近い形と言えるでしょうか。
 テキサスの綿花農園主イアン・アンガス・マグレガーはあるとき、自分の飼っているがちょうが金の卵を産むことに気付きました。当初その報告を無視していた農務省ですが、マグレガーの再三のせっつきに根負けして職員の「わたし」を農園に派遣し、それが事実であることを確認します。
 その《がちょう》が産んだ小ぶりの卵は、重量が二ポンド(約九百グラム、普通は鶏卵の三倍ほどの二百グラム)近くある重いものでした。カルシウムの殻の下に、平均二・一ミリ厚の金の殻があり、その内側は普通の卵のように見えます。しかし、内部は重金属(四塩化金イオン)に汚染されていて孵化することはありません。
 どうして《がちょう》が金の卵を産むのか、農務省は《がちょう計画》を発足させて全力で調査に当たるのですが……。

◎死の塵

 大ルーウェスは高名な有機化学者でしたが、同時に他人の功名を横取りするという悪癖を持っていました。新たな物事を思いついた学生の成果を自分の手柄にしてしまい、無名の学生はそれを訴えられないということがしばしば行われていたのです。
 かくして、ルーウェスの下で働く者達は、冗談交じりにルーウェスを殺害する方法を話し合って憂さを晴らす、ということを行っていました。しかし、土星の衛星タイタン帰りのエドマンド・ファーリイは、自分の研究成果がいつのまにかルーウェスの業績にされてしまったとき、本気でルーウェスを殺そうと決心します。
 夜の間にルーウェスの実験室に忍び込んでガス・ボンベに細工し、目論見通り爆発でルーウェスを殺すことに成功したファーリイ。誰もその事故と自分を結びつけることはできないと高をくくっていた彼は、しかし大きな過ちを犯していたのです。

◎ヒルダぬきでマーズポートに

※『停滞空間』収録作と共通。

 Aクラスエージェントの銀河連邦警察官マックスは、勤務規定に従いマーズポートへ休暇を過ごしに戻ってきました。しかし、義理の母が身体を悪くしたせいで、彼の妻ヒルダは地球へ赴いて看病するため会いに行けないという宇宙通信を寄越していたのです。
 ヒルダぬきで猥雑なマーズポートに降り立ったマックスは、この機会を逃してなるものかと(笑)、「その種の女」フローラにヴィデオフォンで連絡してアポイントメントを取り付けます。
 大張り切りでフローラの元へ向かおうとしたマックスですが、火星支局勤務の相棒ログ・クリントンが彼を引き留めました。緊急事態が発生し、それが解決できなければ警察をクビになると言うのです。宇宙酔いの薬スペーソラインから合成される、中毒性の高い危険な変造スペーソラインの合成方法が漏洩したら、宇宙史はじまって以来最悪の薬物犯罪となってしまうためです。
 その容疑者は三人。いずれもトップクラスのお偉方ですが、スペーソラインを服用しているせいで心のタガが外れ、とりとめのない言葉の連想ゲームを続けるような状態でした。しかし、このうち一人は、スペーソラインに酔ったフリをしているだけなのです。
 果たして、マックスは密輸人を判別することができるのでしょうか。そして、「ヒルダぬきのマーズポート」を満喫することはできるのでしょうか(^^;)

◎真空漂流

 アシモフ氏のデビュー作です。
 スケジュール調整のため危険を冒したことが徒となり、宇宙船シルバー・クイーン号は小惑星に衝突して大破してしまいました。生き残ったのはウォレン・ムーア、マーク・ブランドン、マイクル・シェイの三人だけでした。
 彼らに残されたのは一週間分の食料、一年分の水、そして三日分の空気のみ。最も近い避難場所は小惑星ヴェスタ(実在の小惑星。近年NASAの無人探査機ドーンが訪れています)ですが、そこまでの距離は五百キロメートル程で、到底辿り着けそうにありません。
 若者ブランドンは怯えて怒りっぽくなり、元船員のマイクは観念した様子でした。そんなとき、ムーアはふと思いつきます――彼らが助かるかもしれない方法を。

◎記念日

 『真空漂流』の続編です。
 三人が事故から生還して二十年が経ち、奇跡の脱出劇にもてはやされた彼らも、今では世間から忘れ去られていました。
 ムーアとブランドンは生還の日を毎年祝っていましたが、今年はマイクも参加することになり、久々の三人の再会で旧交を温めます。
 そのときマイクは、彼らが乗っていた宇宙船シルバー・クイーン号の残骸を、それを引き取った汎宇宙保険会社が残らす集めていると、二人に知らせます。保険会社は何故そんなことをしているのだろうと疑問に感じた三人は、それを超コンピュータ・マルティヴァックに尋ねてみます。すると……。

◎死亡記事

 ある科学者の妻が述べる罪の独白の形で綴られます。
 理論物理学者のランスロット・ステビンズ(仮名)は不運な男でした。彼が何かを発見した矢先、別のもっと偉大な発見が現れ、ランスロットの業績は見る影もなくなってしまうといったことが重なり、彼は誰からも注目を集めませんでした。その結果、ランスロットは年を追うごとに気むずかしくなり、妻を罵倒するようになっていったのです。
 そんな彼はある日、物質の複製を作り出すという発明を成し遂げます。それは未来に存在する物質を過去へ複製するという装置であり(作成された時間に到達すると複製物は消滅)、時間旅行を半ば実現するものでしたが、生物は生きたまま複製できないという難点がありました。
 その中途半端な業績をセンセーショナルにするために、ランスロットは一計を案じ、妻の手を借りて一芝居を打つことにします。それは、自分の未来の複製死体を作りだし、事故で死んだのだと偽って葬儀を行った後、自分が本当は死んでいなかったのだと発表して人々の注目を集める、というものだったのです。

◎スター・ライト

 事前調整をしない無作為な超空間ジャンプでの逃亡――それがブレンメイヤー老人の考えた逃走方法でした。無作為なジャンプを行えば銀河のどこへ出現するのか分かりませんが、警察も追跡することができないという利点があります。
 しかし、現在位置が分からなければ、そのまま宇宙で遭難してしまうことになります。ブレンメイヤー老人はそのため、銀河中の恒星をリストアップしたコンピュータを用意し、全天の星のスペクトルを走査することで現在位置を割り出すというシステムを開発していたのです。宇宙船パイロットのアーサー・トレントは、それに納得して協力することにしました。
 ブレンメイヤー老人が電子頭脳神経の材料クリリウムをブリーフケースに詰めて彼の下に到着したとき、トレントは老人を刺殺してケースを奪いました。そして、老人の計画通り無作為ジャンプを試みるのですが……。

◎鍵

 月理学調査隊の一員であるカール・ジェニングズとジェイムズ・ストラウスは、月面で驚くべき発見をします。それは、人類ではない地球外知的生命が作り出した何らかの工業製品でした。
 すぐさま地球にその存在を知らせるべきだと主張したジェニングズですが、ストラウスはなかなか首を縦に振ろうとしません。そんなとき、ジェニングズは装置を偶然作動させてしまい、それが人工的テレパシーを実現するものだったことを知ります――そして同時に、ストラウスがウルトラ党員であることも。
 ウルトラ党員とは、過剰な地球人口を緩和するため、劣った人々を粛正して数を減らそうと考えている傲慢な集団でした。この装置がそんな連中の手に渡ったら一大事だと考えたジェニングズは、装置を使ってストラウスを押さえ込み、母船から脱出します。
 しかし、彼は逃げる際にストラウスのナイフで重傷を負っていました。もはや自分の命が長くないと悟ったジェニングズは、月面のある場所に装置を埋め、その手がかりとなる秘密の記号が書かれたカードを手にしたまま事切れます。
 その後、精神錯乱状態のストラウスと死亡したジェニングズを発見した地球連邦検察局は、事態のおおよそのあらましを突き止めました。しかし、ジェニングズが装置を隠した場所だけは発見することができません。そうこうするうちに、カードはウルトラ党の疑惑が持たれていた局員と共に行方知れずになってしまいます。
 もはや一刻の猶予もならないと考えたダヴェンポートは、メモの中の地球("Earth")を指す矢印がウェンデル・アース博士("Urth")のことを示しているかもしれないと考え、彼に謎の解明を依頼することにします。

◎反重力ビリヤード

 一人で二つのノーベル賞を受賞した天才でありながら、冴えない風貌で、血の巡りが遅くゆっくりとしか思考しない理論物理学者ジェイムズ・ブリス教授。生きた閃光のように華々しく、数々の発明で莫大な利益を上げながら、学位を持たない発明家エドワード・ブルーム。二人は大学時代の同級生でした。
 彼らは三十年近くも友人として付き合ってきましたが、必ずしも親密とは言い難いものでした。ブリスは自分の理論を元にブルームが稼いだ金を、ブルームはブリスの受賞したノーベル賞を、それぞれ妬んでいたのです。ビリヤードでセミプロの技量を持つ二人が対決するとき、それは血みどろの勝負で、友情などかけらも感じられないものでした。
 あるとき、ブリスが重力場に関する二場理論を発表したとき、ブルームはそれを利用して反重力を実現してみせると宣言します。ブリスはそれに懐疑的で、今度こそはブルームの発明は失敗に終わるだろうと予測します。
 けれどもブルームは困難の末、目的を達成してしまいます。その発表会に呼ばれたブリスに対し、ブルームは彼をコケにするためにビリヤード台を用意し、その上でデモンストレーションを行うのですが……。

 短編のうち『歌う鐘』、『もの言う石』、『やがて明ける夜』、『鍵』の四編は、乗物恐怖症の天才ウェンデル・アース博士("Dr. Wendell Urth")を探偵に据えたシリーズです(『死の塵』も元々は〈ウェンデル・アースもの〉だったようですが、事情により書き直され、ダヴェンポート警視のみ登場)。
 アース博士の乗物嫌いは、アシモフ氏ご自身の飛行機嫌いを誇張したものだと言われています。車にすら乗れないとなると現場に赴くのはほぼ不可能ですから、必然的に安楽椅子探偵になってしまうという秀逸な設定ですね。:-)

 収録作で一番興味深いのは、やはり『金の卵を産むがちょう』でしょうか。もちろんこれはイソップ童話のパロディなのですが、徹底して真面目に「金の卵」を考証するところが愉快です。
 この作品は、農務省職員の「わたし」がアシモフ氏に依頼して小説化した実話、という形態を取っており、作中にわざわざ「信じないように」と断りが入れられています。そのせいで、逆にこのお話が本当のことだと信じてしまった人が少なからずいるようです(^^;)
 なお、本作は末尾で、《がちょう》が一羽しかいないため解剖できないことを述べた上で、読者に対し解決方法の提示を依頼するという形で締めくくられます。つまりこのお話は、重金属汚染された《がちょう》を繁殖させるにはどうしたらいいか、を読者に問いかけるSFクイズでもあるわけです。それが、厳密にミステリと言えず普通の小説ですらないお話が本短編集に収録されている理由ですね。
 作中の物理現象はかなりとんでもないことになっていますが(笑)、答えを見いだすに足るヒントはきちんと提示されているので、理不尽さはありません。この辺りが実にアシモフ氏らしいエレガントさです。

 アシモフ氏がSFミステリに取りかかる以前には、自由な発想のSFと制限の強い推理小説を両立させるのは無理だと言われたこともあったようです。しかしながら氏は、本書収録作や〈イライジャ・ベイリもの〉といった成功例で、それが杞憂であることを示された訳ですね。
 推理小説の作法を崩さず、それでいながら紛れもなくSFであるというSFミステリの成立は、アシモフ氏の多大な貢献があってこそ、と言っても決して過言ではありません。

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