デクストロII接触

[題名]:デクストロII接触
[作者]:イアン・ワトスン&マイクル・ビショップ


 ワトスン氏とビショップ氏のコンビによる、異星人とのファーストコンタクトを描いたお話です。
 お二方のうち、ワトスン氏は一九六〇年代に来日され大学で教鞭を執っていたとのことですが、日本滞在時のカルチャーショックがきっかけとなりSFを執筆されるようになったそうです。一方、ビショップ氏は子供の頃、軍人の父と共に世界各地を転々としており、日本の幼稚園に通っていたことがあった模様です。
 本作は欧米の作者が日本人を主人公に据えた作品ですが、主人公の高橋恵子の言動はややエキゾチックではあるものの、私達の目から見てもそれほど違和感はありません。こうした部分には、お二人の経験が活かされているのでしょうか。
 デクストロ第二惑星で発見された、ロボットのような外見の知的種族・カイバー。地球から派遣された調査隊は、彼らとのコミュニケーションを図ろうとするのですが……。

 地球から三十七光年離れた場所にある、恒星デクストロとラエヴォの二つからなる連星・ジェミニ星系。地球から送られた超光速宇宙船ヘヴンブリッジの調査隊一行は、デクストロ第二惑星オノゴロの上で、金属の甲殻を持つ知的存在カイバーを発見しました。
 調査隊の言語学者にしてデータスペシャリスト高橋恵子の努力により、カイバーはたちまち人間の言語を理解するようになります。しかしながら、カイバーは地球人の言葉を覚えはしたものの、自分達のことに関してはほとんど何も語ろうとはせず、その正体は謎に包まれたままでした。
 しかしある日、カイバーがヘヴンブリッジを訪問することをぱったりとやめてしまいます。カイバー達は皆、まるで彫像のごとく凍り付いたように動きを止め、彼らに触れようとするときのみ回避反応を示すという状態になってしまったのです。
 調査隊のメンバーの中には、そんなカイバーに対し対極的な反応を見せる者がいました。一人は恵子の恋人である異星生物学者アンドリック・ノルンで、彼はカイバーを究極的な生命形態だと見なして傾倒していきます。一方、フローター(小型飛行体)・パイロットのファレル・シックスキラーは、カイバーは生物ではなくロボットだと決めつけ、それを調査するのは無駄であるばかりか危険であると主張します。両者は反目を強めつつありました。
 そして、ジェミニ星系に関して新たな二つの事実が浮かび上がってきます。一つは、惑星オノゴロの軌道は安定しておらず、程なくデクストロの周回軌道を離れラエヴォの惑星となるまでの二年間、惑星上は極寒の地となるらしいという発見でした。
 そしてもう一つは――近年中に、恒星デクストロがノヴァ化(超新星ではなく新星)するというものでした。それが起きれば、オノゴロ上の生物はカイバーを含め全て死に絶えることになります。
 その事実を仮死状態のカイバーへ伝えられないものかと、恵子はアンドリック及びシックスキラーと共にカイバーの居住地へ向かうのですが……。

 本書の注目ガジェットは、カイバー("Kyber")です。
 カイバーとは、サイボーグをもじったカイボーグの略で、機械と生物が融合しているように見えることからサイバネティックス学者のベティ・ゾンガが命名したものです。
 そのフォルムは概ね人間型ですが、人間自体よりもジャコメッティの彫像(ヒョロ長い感じ?)に似ているとされています。胴体はミイラの屍布状の肉でできており、四肢及び頭はクロムのような金属で覆われています(恵子は三十三間堂の仏像を連想)。部分的に生物、部分的に機械のように感じられる奇妙な種族のようです。
 カイバーはある時期を境に、ほどんど体を動かさない状態になります。カイバートランスと名付けられたこの行動は、ストーリー後半で重要な意味を持っていることが明かされます。この設定はなかなか興味深いですね。

 本書の核はカイバー自体の設定にありますが、恵子の日本人的世界観がそれを解釈する道具として用いられています。
 恵子は神道と仏教という二つの異なる宗教観を対立することなく受け入れていて、カイバーや調査隊員らとのコミュニケーション時にそれを使い分けている模様です。一方、インディアンの血を引くシックスキラーは汎神論者(=神道的)としてカイバーを拒絶し、西洋人のアンドリックは純粋な知性を追い求める者(=仏教的)としてカイバーを崇拝します。
 実際のところ、私達日本人の大多数は神道と仏教の使い分けなどを意識せず、単に宗教観にルーズなだけのように思いますけど(^^;)、一般大衆レベルで複数の宗教を受け入れているというのは他国の人の目には奇妙に映るのでしょうか。
 純粋な異生物SFとしてだけではなく、SFガジェットを通じて書かれた日本人論として読むのも面白いかもしれません。

この記事へのコメント

  • kirin

    >日本人論として読むのも面白いかもしれません。

    あぁ「スターシップと俳句」が読みたい!
    昔は本屋で見かけても、まずこの題名で手に取りもしなかったのですが、
    紹介文を読むとめちゃめちゃ面白そうです。
    http://www.page.sannet.ne.jp/toshi_o/check_list/1982_86/starship.htm

    Manukeさん、持ってますか?
    2012年09月01日 09:57
  • Manuke

    持ってますが、実はいわゆる「積ん読」なので未読だったり(^^;)
    読み終えたらレビューを書かせていただきますね。
    2012年09月02日 00:15

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