第二創世記

[題名]:第二創世記
[作者]:ドナルド・モフィット


※このレビューには前作『創世伝説』のネタバレがあります。ご注意ください。

 本書『第二創世記』は、ドナルド・モフィット氏の描かれた壮大なスケールのSF小説『創世伝説』の続編に当たる物語です。
 但し、舞台は『創世伝説』とは大きく異なります。前作ではM51銀河に棲息する十肢生物ナーの父星が物語の舞台でしたが、本作では植物型巨大宇宙船イグドラシルによる長大な宇宙旅行が主となります。そう、『創世伝説』の末尾に登場した銀河系への帰還プロジェクトこそが本書のメインストーリーなのです。
 ナーによって造られた後に不老不死を獲得した人間達。〈原人間〉の故郷を求めて旅立った彼等の行く手には何が待ち受けているのでしょうか。

 M51銀河に棲む心優しき知的生命体ナー。彼等が遠くの銀河から受け取った遺伝情報を元に再生した人間達は、ある出来事を経て不老不死を手にすることとなりました。そして人々のうち一部は、三千七百万光年の彼方にある〈原人間〉の故郷、地球へ帰還することを希望したのです。
 かくして、巨大樹木型宇宙船イグドラシルは五千人の人間を乗せて銀河系を目指すことになります。船外時間で三千七百万年、船内時間では五百年ほどかかる長大な旅路です。
 不死ウイルス開発者にして銀河への帰還を提唱したブラムは、年次キャプテンとなりイグドラシルを率いていました。船は一旦M51銀河の中心核へ到達した後、ブラックホールをスウィングバイして銀河系へと向かう予定でした。ところが、彼等が中心核へと辿り着いたとき、そこには思いもよらぬ事態が待ち受けていたのです。
 危機的状況、そしてそれがもたらした悲しみを乗り越え、イグドラシルは五百年の歳月を経て銀河系へと辿り着きます。船の外では三千七百万年が経過、〈原人間〉が宇宙へ向けて情報を発信したときから七千四百万年後です。
 人類の故郷である銀河系で、人々は更に驚きの光景を目にすることになります。

 本書の注目ガジェットは、不老不死による宇宙旅行です。
 ご承知の通り、宇宙というのは我々の想像を絶する程広大です。恒星間は数光年以上、銀河間に至っては数百万光年もの距離があります。そして、今のところ光速度を超えて移動する手段は見つかっていませんし、将来発見できる見込みも薄いようです。
 では、人類が恒星間宇宙へと乗り出すにはどうしたらいいのか――本書で示されているシンプルかつ究極的な解決方法は、すなわち寿命の方を延ばしてしまおうというものです。隣の星に辿り着くために百年かかるとしても、寿命が無限ならば大した距離でもないと感じる、はず?(^^;)
 少なくとも、人間の寿命を引き延ばせるか否かに関しては、光速度のような物理的限界はなさそうです。作中では〈原人間〉から送られてきたメッセージを元に、ブラムが不死のウイルスを作り出しています。これを後天的に感染させることで、人間を不老不死へと変貌させているようですね。
 更に、宇宙船イグドラシルは光速度ぎりぎりまで加速し、ウラシマ効果による船内外の時間差を利用します。これにより、M51銀河から我々の銀河系への旅は三千七百万年から五百年へと短縮されるわけです。
 但し、無限の寿命を得たからと言って、人間の記憶容量は無限になりそうにありません。本書でもブラムが数百年前の記憶を呼び覚ますのに苦労するシーンが登場します。もっとも、得てして十年前の記憶ですらあやふやだったりしますから、それほど気に病むこともないのでしょうけど(^^;)

 本作にはその他にも、巨大な樹木型宇宙船イグドラシル(前作登場の宇宙ポプラにバサード・ラムジェットエンジンを組み合わせたもの)や、M51銀河中心核の怪異、そして銀河系でブラム達が目にするもの等、面白いガジェットが目白押しです。怪しげなところでは周期絶滅説をモフィット氏お得意の大風呂敷と絡めたりと、実にニヤリとさせられますね。
 元々は〈原人間〉(すなわち我々のこと)が宇宙に向けて自分自身の遺伝情報を発信するという壮大な発想から始まった物語は、異星人によって再生された人間が銀河を飛び越えて故郷を目指すという更にスケールの大きなお話へと発展します。前作は十肢生物ナーと人間の関わりを描く異生物ものという側面が強く、舞台はほぼナーの父星に限定されていましたが、本作は銀河間旅行がメインであることから、よりダイナミックな展開となっています。
 もっとも、人物達は前作に引き続いての主人公であるブラムを始め、ブラムのパートナーであるミム、やや放言傾向のある物理学者ジャオ、聡明な老天文学者ユン・ダビドといったおなじみの面々が多く登場します。
 テイストを維持しながらも新たな展開でファンを大いに楽しませてくれる、良作の続編です。

この記事へのコメント

  • duznamak

    はじめまして。
    この本の内容は、メインとなるアイディアとオチ以外ほとんど忘れてしまったのですが、1つだけはっきり思い出せる場面があります。それは、イグドラシル号がドラゴンフライに追いかけられるシーンです。ウラシマ効果によって生じる時間差を利用した、手に汗握るシーンでした。

    エピローグも、読者の期待を裏切らない、素敵なものでしたね。
    2008年01月13日 16:56
  • Manuke

    いらっしゃいませー。
    ドラゴンフライとのチェイスは緊迫感がありましたね。相手の異質さも浮き彫りになって、思わず固唾を飲んでしまう場面でした。
    ドラゴンフライに関しては、その認識力の違いもなかなか興味深い設定だと思います。
    エピローグも良いですよね。『創世伝説』のプロローグと対を成す点も見事です。
    2008年01月14日 02:16
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