ファウンデーションと帝国

[題名]:ファウンデーションと帝国
[作者]:アイザック・アシモフ


※このレビューには前作『ファウンデーション』のネタバレがあります。ご注意ください。

 本書は〈銀河帝国興亡史〉三部作の第二巻に当たる作品です。前巻でいくつかの危機を乗り越えて成長してきたファウンデーションですが、本巻ではそこへ更に最大級の危機が訪れます。
 この『ファウンデーションと帝国』は、アシモフ氏の十八番であるミステリ風SFのテイストを持っています。また、どちらかと言えば硬派な展開である第一巻『ファウンデーション』とは少し異なり、本書ではある登場人物に大胆な設定がなされていて、物語を大いに盛り上げてくれますね。
 ファウンデーションに訪れる二つの大いなる危機。うち一つは銀河帝国です。帝国は滅亡の道を辿っているとは言え、その力は未だ強大です。
 そしてもう一つ。こちらは銀河帝国の脅威とは正反対で、たった一人の人間によってもたらされます。けれどもその行動は、〈セルダン・プラン〉を崩壊させかねないほどの深刻な事態を招くことになるのです。

 第一部『将軍』では、先のエピソードより数十年ほど後の時代が描かれます。
 銀河帝国の若き将軍ベル・リオーズは、銀河周辺にほど近い惑星シウェナへとやってきました。辺境で勢力を強めつつあるファウンデーションに関して知識を得るため、その惑星で豊富な書物を持つ老人ドゥーセム・バーを訪ねたのです。バーは既に人々の知識から忘れられて久しいファウンデーションの由来と、ハリ・セルダンのなした予言について語りますが、リオーズは一笑に付してそれを信じようとはしません。
 そしてリオーズは強大な力を持つ帝国宇宙軍の艦隊を率い、ファウンデーション攻略に乗り出します。しかし、ターミナスにはそれを迎え撃つだけの力はありませんでした。
 サルヴァー・ハーディンやホバー・マロウの時代は遠く、傑出した指導者が不在のファウンデーションは、この危機をどう乗り越えるのでしょうか。

 第二部『ザ・ミュール』では、第一部から百年以上が経過しているようです。
 世襲制の市長の下で硬直と腐敗の横行するファウンデーションには、内乱と周辺諸国の造反という事態が迫りつつありました。
 とある若い夫婦トランとベイタが、ターミナスから夫トランの実家である惑星ヘイヴンへやってきたところから物語は始まります。二人はトランの叔父に、最近台頭してきた奇妙な人物ミュールのことを調べて欲しいと頼まれるのでした。
 ミュールは歴史の表舞台に突如として姿を現した、無血で次々と諸国を征服している謎の男です。トラン・ベイタ夫妻はミュールがいるとされる惑星カルガンへ出向き、そこでミュールの下から逃げ出してきた道化師マグニフィコ・ギガンティクスを保護します。
 マグニフィコの話によって、ミュールがただの人間ではなく、特殊な能力を持ったミュータントであることを彼等は知ります。そして同時に、ファウンデーションでは重大な事実が発覚するのです。ハリ・セルダンがミュールの出現を予測できなかったことを。
 大混乱の中、ミュールの軍勢がターミナスへ襲来し、ファウンデーションは遂に陥落することになります。

 本書の注目ガジェットは、ミュールです。
 ミュールは謎に包まれた人間で、ある特別な力を有するミュータント(突然変異)です。その詳細はここには記しませんが、たった一人で銀河を激変させてしまう程の強大な力ですね。
 非常に興味深いことに、〈セルダン・プラン〉はミュールの出現を予見できません。心理歴史学はあくまで統計的に人類の集団を扱う学問であり、突出した能力を持つ個人はその範囲外のようです。
 数千兆人もの人類集団を対象とした〈セルダン・プラン〉にとって、本来その数千兆分の一である個人の能力差は問題にならないほど小さいはずなのですが、ミュールはそれには当てはまりません。何故なら、ミュールはある意味人間ではないからです。そして同時に、確かに人間であることが彼の不幸でもあります。

 本書で訪れる危機、特にミュールの出現により、ストーリーはダイナミックな展開を見せてくれます。完全無欠と思われた心理歴史学、そして〈セルダン・プラン〉に疑いの目が向けられることになるのです。
 また、第二部『ザ・ミュール』においては、お話の視点がベイタに軸を置く部分にも注目したいですね。〈銀河帝国興亡史〉の前半では、歴史を動かしていくのは男性に限られ、女性はほとんど表舞台に登場しません(硬いお話に見える一因でしょうか(^^;))。しかし、このエピソード以後は重要な役割を担う女性が増えていきます。ファウンデーションが男系社会から平等な社会へと変貌していく過程と見ることができるかもしれません。
 物語は波乱を抱えたまま、次巻へと続きます。次はいよいよ佳境となる第三巻『第二ファウンデーション』です。

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