アヴァロンの銃

[題名]:アヴァロンの銃
[作者]:ロジャー・ゼラズニイ


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 並行世界を扱ったサイエンス・ファンタジー、〈真世界シリーズ〉第二巻です。
 前巻『アンバーの九王子』にて、兄エリックに破れながらも幽閉からの逃走を果たしたコーウィンですが、本巻では反撃のターンになります。
 しかしながら、前巻でコーウィンが成したもう一つの事柄が、次第に不気味な色を見せ始めます。果たして彼が立ち向かうべき敵とは……。

 ブレイズと共同戦線を張ってアンバーに攻め込んだものの敗北し、兄エリックにより両目を潰されて幽閉されたコーウィン。けれども、彼はアンバー王族の驚異的な回復力により視力を取り戻し、狂った魔術師ドワーキンの助力を得て地下牢からの脱出に成功しました。
 脱出後、コーウィンはアンバー近くにあるガーナスの谷が黒い影に覆われていることを知ります。それは、目が潰されたときに彼が発した呪いの発現でした。アンバーの王子の呪いは実効力を持つものであり、それがアンバーを脅かしていたのです。
 それを心に留めながらも、とりあえず晴れて自由の身となったコーウィンには、エリックを倒すための秘密兵器の算段がありました。その武器を用意するために、既に滅びた“影”の地アヴァロンの相似世界へと向かおうとする彼でしたが、その道中で傷ついた騎士と出くわします。それはかつて、コーウィンがアヴァロンを治めていたときの騎士ランスロットに瓜二つの男(近い並行世界なので、ほぼ同一人物)であり、コーウィンは彼を見捨てることができずに介抱することにしました。
 ランスロットはその地ロレーヌを治める男ガネロンに仕えていました。そしてガネロンは、遥か昔に罪を犯したせいでコーウィンがアヴァロンから追放した部下本人のようでした。しかし、その後の経験からか、コーウィンが知っていた頃のガネロンとは異なり支配者としての風格を身に付けています。
 ロレーヌは、“妖精の輪”と呼ばれる黒い領域からあふれ出る怪物に悩まされていました。長い幽閉生活で年老いた外見になっていたコーウィンは、名前をコーリーと偽ってガネロンに仕え、“輪”との戦いに加わります。そして、その“輪”がガーナスの谷と同じく自分の呪いが関わっていることに気付くのです。
 “妖精の輪”との戦いに勝利した後、コーウィンは自分の正体を見抜き和解したガネロンと共に、当初の目的地であるアヴァロンへと向かうことにしました。ところが、アヴァロンへ到着したコーウィンは、その地がやはり“輪”と同じものに脅かされていることを知ります。
 そして、アヴァロンの人間達を纏めていたのは――消息不明だったコーウィンの兄、ベネディクトでした。

 本書の注目ガジェットは、アヴァロンの銃です。
 王子達の故郷であるアンバーの世界では火薬が存在せず、このためにアンバーには銃火器がありません。どうやら、化学反応自体が並行世界毎に異なっている模様です。
 しかしながら、コーウィンは過去において、ある偶然からアヴァロンで使われている「べんがら」(宝石の研磨剤)がアンバーで爆発的に燃焼することを知ることになりました(記憶を失う前なので数百年以上昔?)。これを使って銃弾を作ろうというのがコーウィンの秘策です。剣や弓矢を用いた戦いが常套手段である中に銃を持ち込むわけですから、その戦術的優位は計り知れません。
 コーウィンは火薬に使う「べんがら」をアヴァロンで大量に買い込み、私達の地球に持ち込んで弾丸を製造させ、それを用いた銃を“影”から徴発した兵士に持たせてアンバーへ攻め込む、という計画を実行することになります。〈真世界シリーズ〉はファンタジー色の強い作品ですが、別々の並行世界に存在する要素を組み合わせて新兵器を生み出すという辺りはSFらしさが出ている部分ですね。
 なお、「べんがら」自体はアヴァロンでも私達の地球でも爆発力がないため、どちらの世界でもコーウィンは怪訝な対応をされることになります。これに対しコーウィンは、人間の存在しない世界のナミブ砂漠で拾ってきたダイアモンドの原石で黙らせる手を取ります。自在に“影”を移動する力は便利過ぎですね。:-)

 さて、題名にもあるアヴァロンですが、これはケルト神話に登場する楽園の島の名前が由来です。また、アーサー王伝説においては、アーサー王が永眠する島でもあります。
 作中では、特にそうした神話との関連は示唆されず、単にコーウィンが昔支配した土地のようです。アンバーの王子達は、並行世界の中に各々自分の領地を有しており、アヴァロンもその一つということになります。
 但し、コーウィンの領地である本来のアヴァロンは既に滅びており、本巻に登場するアヴァロンはその良く似たコピーです。並行世界は無数にあるため、その中からごく近いものを選ぶことができるわけですね。
 全く同じ世界ではないものの非常に近いため、かつて魔術師コーウィンがこの地を支配していたという記憶が残っています。これは本物のコーウィンではなくその“影”なのですが、どういう経緯からかこの世界のコーウィンは民衆から酷く恨まれているようです。自分がした訳でもない悪事を責められてしまうのは、アンバーの王子の特権に対する代償でしょうか(^^;)

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