ファウンデーション

[題名]:ファウンデーション
[作者]:アイザック・アシモフ


 直径十万光年あまりの大きさを持つ我等が銀河系。そこに含まれる数千万個もの居住惑星、そしてその上に住む何千兆人もの人間を統べる、巨大な銀河帝国――巨匠アイザック・アシモフ氏が生み出された、息を飲む程に壮大なスケールの舞台です。
 本書『ファウンデーション』は、アシモフ氏の代表作である〈銀河帝国興亡史〉三部作の第一巻となります。このシリーズが以後のSFに与えた影響は決して少なくはなく、宇宙を舞台とする政治的・歴史的なSF物語の偉大なる金字塔と言うべき作品です。
 アシモフ氏の銀河帝国の特徴は、その構成員が全て地球由来の人類であることです。宇宙船を駆使し広大な銀河を埋め尽くす人々は、我々の知るそれと何ら変わりません。宇宙もののSFにありがちな異星人が登場しないことは、作品のリアリティを高め、物語の核を浮き彫りにすることに寄与しているのは疑いないでしょう。
 優に一万二千年もの長きに渡って銀河系を支配してきた銀河帝国。しかし、それは人知れず衰退を始めていました。天才科学者ハリ・セルダンのみがそれに気付き、来る暗黒時代を短縮するためにファウンデーションを設立するのです。

 数学者の卵ガール・ドーニックは、偉大なる天才ハリ・セルダン博士の下で働くために銀河の片田舎から帝国の中心である惑星トランターへとやってきました。しかし彼は、そこでセルダンが何やら騒動に巻き込まれていることを知ります。
 セルダンは自らの編み出した心理歴史学という学問により、トランターの滅亡を予言していたのです。当然、それは為政者の不興を買うこととなり、セルダンはガール共々逮捕されてしまいます。
 裁判の中でセルダンは公安委員会に対し、滅亡はトランターだけでなく銀河帝国全体に及ぶこと、そしてそれは決して食い止められないことを説明します。しかしながら、今すぐに手を打てば、来るべき暗黒時代を三万年から千年に短縮できるのだとも。
 心理歴史学はあまりに高度な内容で、それが真実かどうかは委員会には分かりません。けれども、セルダンが不世出の天才とされていることも事実でした。委員会は事態を検討し、セルダンを反逆罪に問う代わりとして、彼の申し出を認めることにします――但し、自分達のお膝元であるトランターではなく、銀河辺境にある無人惑星の上で。
 この指示に従い、資源を持たず誰にも顧みられなかった惑星ターミナス(別の翻訳ではテルミナス)上に、文明を保持するための機関ファウンデーションが設立されることになりました。セルダンはその過程に満足しながら、ガールに言います。「科学的避難所がターミナスに建設され、もうひとつが銀河系の反対側の端、“星界の果て”に建設される」と。そして、セルダンはほどなく亡くなります。
 かくして、ファウンデーションの歴史は始まります。当初は銀河百科事典(エンサイクロペディア・ギャラクティカ)の編纂という名目の為。そして各種の危機に直面するたび、柔軟にその役割を変えて。
 ハリ・セルダンの見えざる手に導かれながら、ファウンデーションは没落を続ける銀河帝国の片隅で少しずつその足がかりを広げていくのです。

 本書の注目ガジェットは、心理歴史学(サイコヒストリー)です。作中に登場する架空の学問ですね。
 心理歴史学は、統計学その他の数学的手法を駆使して人間集団の行動を予測・制御することを目的としたもののようです。あくまで統計学的なものであるため個々人の行動の予測には不向きですが、大集団の動きに対してはかなりの精度で推測可能です。
 但し、対象となる人間の中には心理歴史学を習得している者を含めることはできません。心理歴史学者にはその予測を変化させる方法が見えてしまうため、ゆらぎが大きくなってしまうからだとされています。従って、ターミナスに設立されたファウンデーションには心理歴史学者が存在しません。
 作中では、ファウンデーションには幾度となく危機的状況が訪れます。これは偶発的な要因による危機ではなく、ハリ・セルダンがあらかじめ計画した通りのものであり、セルダン危機と呼ばれます。この危機を乗り越える方法は各々一つしか存在せず、それによりファウンデーションはセルダンの筋書き通りに歴史を歩んでいくわけです。

 本書の内容は五部構成となっており、それぞれ『心理歴史学者』、『百科事典編纂者』、『市長』、『貿易商人』、『豪商』とサブジェクトが付けられています。
 部の間には数十年単位の時が経過しており、部をまたいで同一人物が登場することは多くありません。各時代には、偉大なターミナス市長サルヴァー・ハーディン、豪商ホバー・マロウ等の偉人が活躍しますが、彼等もまた歴史の一ページに刻まれた人物でしかないわけです。これは銀河帝国の興亡という壮大な物語を感じさせてくれる大きな要素ですね。
 もちろん、ハリ・セルダンだけは例外です。三部作中、セルダン自身が登場するのは本書の第一部のみですが、彼の作り上げた心理歴史学、そして〈セルダン・プラン〉は、見えざる手となって人々を第二銀河帝国の樹立へと導いていくのです。

この記事へのコメント

  • JIN


     はじめまして。

     漫画版の第二巻も出て、再注目という感じですね。

     自分としてはマロウが結構好きです。
    2015年02月21日 20:40
  • Manuke

    コミックスの方は完全に忘れていました。
    しかし、ホバー・マロウは格好良すぎですね(^^;)
    個人的にはミュールがお気に入りなので、彼がどのように描かれるか楽しみです。
    2015年02月24日 00:48

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