バーサーカー 皆殺し軍団

[題名]:バーサーカー 皆殺し軍団
[作者]:フレッド・セイバーヘーゲン


 恐るべき殺戮機械〈バーサーカー〉との戦いを描いた、〈バーサーカー・シリーズ〉第二弾です。この巻は『赤方偏移の仮面』や『星のオルフェ』とは異なり、連作短編集ではなく三部構成の長編小説になっています。
 また、本書では地球の植民惑星サーゴルにおける戦いを扱っており、その特殊な環境をメインの題材にしています。ストーリーは基本的にサーゴル上で進行し、他の星系に関することはほぼ登場しません。特に第三部はやや〈歴史IFもの〉を思わせる内容になっているのが面白いですね。
 タイムトラベル可能な特異時空を持つ惑星サーゴルで繰り広げられる歴史改変戦争。人類と〈バーサーカー〉の戦いは時間を遡った過去にまで持ち込まれるのです。

 地球型惑星サーゴルの主星は、ごくありふれたG型太陽のように見えました。しかし、その周囲には特殊な空間時間(スペースタイム)が存在したのです。そのため、星の周囲を超光速で移動する宇宙船はタイム・トラベルを起こしてしまいます。
 地球から最初にサーゴルへやってきた探検船は、このタイム・トラベルの罠にはまり、二万年前のサーゴルへ漂着しました。そして、テクノロジーが一旦ゼロにリセットされた後、かつての地球と同じように文明を興し、漂着から二万年後(探検船がやってきたのと同じ頃?)に地球文明と再接触したという、奇妙な歴史を持っていました。
 けれども、そんな風変わりな惑星にも、恐るべき殲滅マシン〈バーサーカー〉の到来する日がやってきました。近隣の恒星から警告を受けてはいたものの、惑星サーゴルの地表は全て焦土と化してしまいます。
 〈バーサーカー〉の攻撃がほとんど届かない地下へと逃れたサーゴル人達は、他星系からの救援を待つため、星を挙げて持久戦を行うことにしました。〈バーサーカー〉側からも、サーゴル側からも決定的な打撃を与えることはできず、戦いは膠着状態に突入します。
 しかし、惑星サーゴルの指導者達は、直接対決とは異なる、サーゴル特有の攻撃方法に警戒を募らせていました。それは、〈バーサーカー〉が空間時間の仕組みを解明し、過去の時代へ機械を送り込んで歴史を改変してしまうことへの懸念だったのです。
 物語は、サーゴル惑星防衛軍が人海戦術で歴史監視を行っている場面から始まります。監視兵の一人デロン・オードガード中尉は、かつて歴史を専攻した学生でしたが、戦争で恋人を失い、今は軍務時間を除いてただ無為な日常を過ごしていました。
 そんなデロンはある日、〈バーサーカー〉の可能性波ミサイルで記憶喪失になった女性ライザと出会い、次第に彼女に惹かれていきます。更には時間戦争の只中で、過去の時代の世界や人間と触れ、影響を受けていくことになるのです。
 果たして惑星サーゴルは、そしてデロンは、凶悪なる〈バーサーカー〉との時間戦争から人々と歴史を守ることができるのでしょうか。

 本書の注目ガジェットは、惑星サーゴルです。
 詳細は不明ですが、サーゴル周辺では超光速航法(作中ではCプラスなどと呼ばれます)使用中などの特殊な状況下でタイム・トラベルが可能となるようです。サーゴル惑星防衛軍は床に開いた穴のようなゲート型時間移動装置を開発しており、それをくぐるだけで過去へ行くことができます。(未来へ移動できるのかは不明。デロンは未来から何もやってこないことを疑問に感じています)
 但し、このタイム・トラベルには、時間を五百年以上遡ると人間が記憶喪失になってしまうという問題があります(五百年以上未来へ移動すると、逆に知能が高まる模様)。このせいで、五百年より昔への生身のタイム・トラベルは不可能になり、過去への干渉は遠隔操作の主従(マスター・スレイブ)ロボットなどの機械を使わざるを得ません。
 なお、この五百年という時間は一回分のタイム・トラベルではなく、その人間本来の時代からの相対的時間距離(?)です。従って目的時間が五百年以上昔であっても、そこからさらに過去の人間を現代まで連れてきて、エージェントとしての教育を施し、その目的時間へ送り届けることは可能です。

 物語冒頭では、〈バーサーカー〉が過去へ送り込んだ中継基地は二万一千年前辺りに存在すると分かっているものの、正確な位置は判明していません。それを知るためには後三回の〈バーサーカー〉活動観測が必要になります(三角測量の時空版?)。このため、防衛軍はあえて〈バーサーカー〉に歴史改変を起こさせ、その痕跡を計測するという作戦を立てます。歴史改変のキャンセルに失敗したら防衛軍自体が消滅してしまいますから、綱渡りもいいところですね(^^;)
 その内容は部ごとに分かれており、第一部では二万年前の原始人マットに関する内容、第二部は千二百年前の古代の王エイとその周辺、そして第三部は三百年前の科学者ビンセントにまつわるエピソードです。
 特に面白いのが第三部で、ビンセント・ビンセント("Vincent Vincento")が地動説を唱えたことで裁判にかけられ、自説を撤回するという流れを巡る攻防です(この時代は近いので、デロンが生身で派遣されます)。つまり、要するにこれはガリレオ・ガリレイ氏の宗教裁判の相似形ですね(笑) 〈バーサーカー〉がいかに裁判の結果を左右しようとするか、そしてデロンがどうやってそれを阻止しようとするかがウィットに富んでおり、〈タイムパトロールもの〉的な展開を楽しむことができます。

この記事へのコメント

  • ちゅう

    以前、蔵書を発掘して読み直したとき、長編だったのに改めて気づきました。

    バーサーカーも、人類が脆弱な過去に向かって、爆弾を投げ込むなど、考えましたね。

    今日は、iPodなしで出かけるので、旅の友は何がよいかと思案中。実は"Berserker Prime"というのを買ってあるのですが、やはり『赤方偏移・・・』あたりにしようかと(^^)
    2011年12月24日 08:30
  • Manuke

    設定も面白いですが、マスター・スレイブ・ロボットのような周辺のネタも良いですね。
    〈バーサーカー・シリーズ〉は未翻訳の巻がたくさんあるようなので、早川書房さんにはぜひ翻訳を期待したいところなんですが……(^^;)
    2011年12月25日 00:29
  • nyam

    なつかしー。皆殺し軍団、大好きです。
    題名だけで買ったのですが、最初、話の流れがよくわからなかった・・・。

    時間戦争とバーカーサー、すごい組み合わせでした。ちなみに作者の名前もすごいと思います。
    2011年12月26日 21:53
  • Manuke

    〈バーサーカー〉だけでも十分なネタになるんですが、それに頼り切りにせず毎回別の切り口でお話を紡ぐのが凄いです。
    名前の響きもやたら格好いいですよね(^^;)
    2011年12月30日 00:14
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