デューン 砂の惑星

[題名]:デューン 砂の惑星
[作者]:フランク・ハーバート


 本作は、遥か遠い未来における政治的・文化的な物語を壮大なスケールで描いた一大SF巨編です。
 SF作品として特に注目したいのが、主な舞台となる惑星アラキスですね。砂漠に覆われた星であるアラキスの生態系、そしてそこに住む人々フレーメンの文化が詳細に作り込まれており、それが物語を非常にリアリティのあるものとしています。
 また、多数の組織・個人が織りなす複雑な人間関係も見逃せないですね。登場人物達がそれぞれの意図によって行動することにより紡がれる物語には、絶対的な正義も、そして悪も存在しません。ただ各々の思惑がそこにはあるのみです。
 宿敵ハルコンネンの奸計により母と二人で砂漠に放り出された、アトレイデ家の跡継ぎポウル。陰謀渦巻くアラキスで、彼は砂の民フレーメンとして生きることを選びます。

 その全土が砂漠で覆われた不毛の惑星アラキス――しかし、この星には一つの特産品がありました。老人病の特効薬となるスパイス、メランジを産出する唯一の惑星だったのです。
 大王皇帝は、メランジが生み出す莫大な利益を独占してきた大公家ハルコンネンに対し、その座を大公家アトレイデに譲り渡すことを命じます。しかし、それは台頭し始めたアトレイデ家を取り潰すための罠でした。
 当主レト・アトレイデ公爵はそれを知りつつ、チャンスに望みをかけて惑星アラキスへとアトレイデ家の拠点を移します。「砂漠の盗賊」と蔑まれているアラキスの民フレーメンの助力があれば、危機を乗り切れるはずだと考えてのことです。しかし、思いもよらぬ裏切りによりレトは倒されてしまいます。
 レトの息子であるポウル・アトレイデは小柄な十五歳の少年でしたが、高い戦闘能力と知能、そして訓練された精神を持っていました。彼は母とともにハルコンネンの魔手から逃れ、アラキスの広大な砂漠へと落ち延びます。
 その砂漠の中で濃密なメランジを吸引したことにより、ポウルの中に限定された未来予知能力が生まれます。そして彼は、やがて自分が救世主ムアドディブとしてフレーメンを率い、恐るべきジハドを引き起こしてしまうだろうということを知ってしまいます。
 大王皇帝、公家、宇宙協会からなる政治組織と、裏で暗躍する精神訓練学校ベネ・ゲセリット。散り散りになったアトレイデ家の者達。更なる権力を求めるハルコンネン男爵。そしてフレーメン――
 無数の欲望・憎悪・思惑が錯綜する中、ポウルは人ならぬ者へと続く道の一歩を踏み出すのです。

 本作の注目ガジェットは、砂の惑星アラキスです。
 アラキスの気候は非常に乾燥し切っており、ほぼ全土が砂漠です。海・湖・川のような大量の水を湛えた地形は存在しません。時折コリオリの力による猛烈な砂嵐が発生し、それに飲み込まれると何もかもがズタズタにされてしまいます、
 この乾燥した世界にも、そこに適応して生き延びる生物が存在します。中でも全長数百メートルにも達する巨大な砂虫(サンドウォーム)は、アラキスの砂漠の王として生態系の中で重要な一角を占めています。この長虫の親分(^^;)は巨大なだけでなく非常に凶暴で、音を立てるものには何にでも襲いかかってきます。アラキスの砂漠を居住不能にしている最大の原因のようですね。
 非常に過酷な環境ですが、フレーメンと呼ばれるアラキス住民はそんな砂漠に生きる術を獲得しています。荒々しく勇猛果敢で、信義を重んじる人々です。彼等の文化ではとにかく水が重視され、例えば「水の義務」という言葉は決して破ることの許されない義務を意味します。
 アラキスでは、スティルスーツと呼ばれる砂漠用装備が用いられます。このスーツは熱を分散させるのと同時に、体から排泄される物質から水を回収する機能を有します。フレーメンによって調整されたスティルスーツはごくわずかな水しか失わないとされています。

 作中に登場する人物達は、それぞれが独自の思惑を持っています。いわゆる勧善懲悪的な分かりやすいグルーピングではなく、複雑な人間関係を構成している訳です。
 例えば主人公ポウルに近しい存在である母ジェシカでさえ、息子とは相容れない部分があります。宿敵となるウラディミール・ハルコンネン男爵は醜悪な人物ですが、必ずしも悪とは言い切れません。
 用語集が作られる程に豊富かつ緻密な舞台設定と、非常に絡み合った人間同士の関わりが渾然一体となり、本作はSF界における大河ドラマとも言える位置を獲得しています。他の作品に与えた影響も少なくないようです。砂の惑星アラキスで繰り広げられる壮大な物語をぜひご堪能ください。

この記事へのコメント

  • Kimball

    いやー、これ、原作を読んでなくて、最近、
    スカパーTVでやっていた、米国のTVシリーズで
    そのストーリーを知りました!!
    あっと驚く秘密がありましたねー!!、
    ジェシカさん.... \(^o^)/

    大きなお世話ですが、あのTOTOが音楽を
    担当したハリウッド(ですよね?)映画をみて、
    あれが、「砂の惑星」だと思った人(へへ、
    アッシがそうでした)は、早とちりです!!
    -------
    肝心の原作(もちろん邦訳)なんですが、
    (TVシリーズをみた後)一そろいそろえたのですが、
    うーん、なんか、(小生には)読み乗れないで
    います。 「矢野 徹」さんの訳で問題ない
    はずなんですが....
    なんでだが、「ノれない」のですわ。\(^o^)/
    2006年09月16日 09:34
  • Manuke

    > いやー、これ、原作を読んでなくて、最近、
    > スカパーTVでやっていた、米国のTVシリーズで
    > そのストーリーを知りました!!

    TVシリーズ版はなかなか評価が高いみたいですね。
    未見ですが、一度見てみたいです。

    > 大きなお世話ですが、あのTOTOが音楽を
    > 担当したハリウッド(ですよね?)映画をみて、
    > あれが、「砂の惑星」だと思った人(へへ、
    > アッシがそうでした)は、早とちりです!!

    あはは(^^;) 映画監督ご自身も「失敗作」と仰っているようですね。
    まあ、そもそも『デューン』を映画の尺に収めようというのが無茶ですし。

    > 肝心の原作(もちろん邦訳)なんですが、
    > (TVシリーズをみた後)一そろいそろえたのですが、
    > うーん、なんか、(小生には)読み乗れないで
    > います。 「矢野 徹」さんの訳で問題ない
    > はずなんですが....
    > なんでだが、「ノれない」のですわ。\(^o^)/

    私も実は、初見のときには今一つノれませんでした。
    と言うのも、新しい用語が出てくるたびに巻末の用語集を調べてたので(^^;)
    二度目に読んだときは用語集を参照しなかったためか、すんなり世界観に浸ることができました。
    用語集は便利なんですけど、純粋に読書するという行為には邪魔になるのかもしれませんね。
    2006年09月23日 00:10

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