次元交錯星域

[題名]:次元交錯星域
[作者]:A・バートラム・チャンドラー


※このレビューには『辺境星域の神々』/『名誉の殿堂』のネタバレがあります。ご注意ください。

 〈銀河辺境シリーズ外伝〉第七巻です。
 これまでのお話では、本編が主に銀河系内(一部、別次元(^^;))、外伝が銀河辺境を舞台として描かれてきましたが、本巻ではその外側に存在するものへ焦点が当てられます。
 どうやら〈銀河辺境シリーズ〉の超光速機関マンシェン・ドライブは銀河間の旅行を行うほどの性能はないらしく、人類は未だ銀河系を飛び出すには至っていません。本作では、それを成し遂げるための技術を巡って複数の勢力が対峙することになります。
 グライムズ一行が銀河の果てで出くわした相手とは……。

 時空が薄く引き延ばされた銀河辺境星区――その更に外側に、非人類の手による建造物が存在することが、古くから知られていました。
 〈よそ者の船(アウトサイダーズ・シップ)〉と名付けられたそれは、人間のものより何百万年も進歩した科学技術を有しているものと目されていますが、それに接近しようとした者達はことごとく悲惨な最期を遂げていました。唯一生還した銀河連邦監察宇宙軍の情報員も、それが大航宙(ビッグ・クロッシング)の技術を提供するために故意に置かれたものであり、試験をパスしなければ中に入ることを許されない、との断片的な情報を残して自殺しています。
 かくして長らく手つかずのままだった〈よそ者の船〉ですが、ここに来てウォルドグレン公国の宇宙船がそれを手に入れようと発進したという情報が舞い込んできました。ウォルドグレンもまた先行者達と同じ運命を辿ることになるのか、はたまた首尾良く超テクノロジーを手に入れることになるのか、いずれにせよ座視はできないと考えた辺境星区連合宇宙軍クラヴィンスキー提督は、グライムズ准将へその後を追うよう命じます。
 かねてから〈よそ者の船〉の調査申請を出しては却下され続けてきたグライムズは、待ってましたとばかりにそれを受諾します。妻である監察宇宙軍中佐ソニア、精神波通信士ケン・メイヒューとその妻クラリッセ、昔なじみであるビリー・ウイリアムズ副長といったメンバーを編成し、巡航宇宙船〈ファラウェイ・クエスト〉で〈よそ者の船〉を目指しました。
 ところが、目的の場所へ到着したとき、その場にいたのはウォルドグレン公国の宇宙船ではありませんでした。それは、かつて次元を超えて別宇宙からやってきたアイリーン元女帝の乗る小型快速船〈ワンダラー〉、そして両者のどちらとも異なる世界からやってきたドミニク・フランドリーの乗る帝国宇宙軍偵察艦〈ヴィンディクティヴ〉でした。
 何が起きているのかを訝りつつも、三者が三者とも〈よそ者の船〉の所有権を主張して対立する中、新たなグループが姿を現します。それは、最初のグライムズと良く似ながらも異なる宇宙から来た、もう一人のグライムズ准将が率いる〈ファラウェイ・クエスト〉だったのです(^^;)

 本書の注目ガジェットは、〈よそ者の船〉("the Outsiders' Ship")です。
 〈よそ者の船〉は、超高度に発達した非人類の異星人が作ったらしき構造物で、「船」と呼ばれてはいるものの、その外見はおとぎ話に登場する城に似ています。それ自体が発光しており、ゴテゴテした外観でありながらも、総体的には馬鹿馬鹿しくは見えず、むしろグライムズは畏怖を感じています。
 〈よそ者の船〉は、これに到達できるような星間航行技術を開発した種族へ、より高度なテクノロジーを教えるために銀河の外側へ置かれたものです。その中には、大航宙(ビッグ・クロッシング:"the Big Crossing")を行うために必要な技術が隠されているようです(おそらく銀河間航法のこと)。但し、このテクノロジーを入手するためには試験をパスする必要があります。
 また、奇妙なことに、〈よそ者の船〉は複数の平行宇宙にまたがって存在するという性質を持っています。この特性のせいで、それぞれの平行宇宙で〈よそ者の船〉に接近した宇宙船が一堂に会する、という事件が起こってしまったわけです。
 〈銀河辺境シリーズ〉には、これまでも人類の科学技術を超越した種族の存在がしばしば示唆されています(本編第三巻『連絡宇宙艦発進せよ!』/『頓馬な浮標』の漂流物や、本編第八巻『遙かなる旅人』の異星宇宙船〈ブラルドウル〉等)。本シリーズの人類が銀河系外へ進出するほど進歩したとき、そうした種族と接触することになるのかもしれません。

 さて、本巻は「平行宇宙に存在する自分との接触」という、〈パラレルワールドもの〉らしい展開が醍醐味です。
 登場する二人のグライムズは、最初からいた方が第一グライムズ("Grimes I")、後から現れる方が第二グライムズ("Grimes II")と書き分けされており、このうち第一グライムズが正史に所属する人物です。もっとも、第二グライムズも第一とほぼ同一の経歴を持つようで、妻がソニア・ヴェリルではなくマギー・ラゼンビーというのが一番大きな違いでしょうか。本編での登場回数から見ても、マギーはグライムズの人生前半で最も親しかった女性ですから、彼女がグライムズと結婚する世界があっても不思議ではありませんね。
 また、アイリーン一行は外伝第二巻『銀河傭兵部隊』/第三巻『暗黒星雲突破!』でも登場しているとおり〈銀河辺境シリーズ〉世界のキャラクタですが、ドミニク・フランドリーはポール・アンダースン氏の宇宙スパイSF〈ドミニック・フランドリー・シリーズ〉からの、許諾を得たうえでの友情出演です。よその作家さんの世界まで平行宇宙でくっつけてしまうのは少々はっちゃけすぎのような気もしないでもないですけど、面白いので良しとしましょう(^^;)

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