さようなら、いままで魚をありがとう

[題名]:さようなら、いままで魚をありがとう
[作者]:ダグラス・アダムス


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 本書は宇宙一のお馬鹿SF小説、〈銀河ヒッチハイク・ガイド・シリーズ〉の第四弾です。
 銀河のあちこちを放浪してきた前巻までと少々趣が異なり、本巻では主にとある惑星上でお話が進行します。その惑星の名は――他でもない地球です。それも過去の地球のことではなく、ヴォゴン人到来後の、破壊されたはずの地球ですね。
 また、本書は我等がアーサー君のラブストーリーとしての側面が強くなっています。そのせいもあってSF的な要素は若干控えめですが、面白さは相変わらずです。
 銀河をヒッチハイクしながら旅していたアーサーがたまたま立ち寄った惑星は、破壊されてなくなってしまったはずの地球でした。何故地球が存在しているのか分からないアーサーですが、それよりも重要な件が彼の心を占めてしまいます。アーサーはそこで出会った女性フェンチャーチに恋をしてしまうのです。

 最後の地球人アーサー・デントは惑星クリキットを離れ、宇宙船をヒッチハイクしながら旅を続けていました。そんな彼がとある惑星に辿り着いたとき、驚くべき光景を目にすることになります。
 そこはヴォゴン人に破壊されたはずの地球だったのです。しかも後々判明することですが、アーサーの主観時間では八年が経過しているのに、その地球ではヴォゴン人到来から半年しか経っていなかったのです。(ヴォゴン人宇宙船の立ち退き要求は集団幻覚として片付けられています)
 確かに破壊され、もはやアーサーとトリリアンの二人を残して死んでしまったはずの地球人は、アーサーの知人も含めて全員かつてのまま存在していました。何が起きているのかさっぱり分からないアーサーですが、彼の最大の関心事は別のことに移ってしまいます。アーサーが自宅へ向かう途中で乗せてもらった車の後部座席に、胸が締め付けられる程(アーサーにとっては)美しい女性が眠っており、彼はその女性に心を奪われてしまったのでした。
 アーサーは家に戻り、再びかつての生活を取り戻します。自分が今いる地球のことに頭を悩ませつつも、彼は車で出会った女性のことが忘れられません。
 そして、ひょんなことからアーサーはその女性フェンチャーチと再会することになり、機会を逃すまいと彼はフェンチャーチにアプローチします。間が悪い上にしばしば空気の読めない主人公アーサー・デント君ですが(^^;)、このときばかりは事態が良い方向に転んで、二人は次第に親密になっていきます。
 しかし、フェンチャーチには一つの秘密があったのです。

 本書の注目ガジェットは、「神が被造物に残した最後のメッセージ」です。
 このメッセージは前巻で、自白剤のため真実しか語れなくなった男プラークが言い残したものですね。それを確認するためにアーサー達はプラークが教えてくれた場所に向かうのですが……。
 まる一巻引っ張ってこのオチというのは実に素敵です。『銀河ヒッチハイク・ガイド』らしいネタだと言えるでしょう(^^;)

 この他、同じく『宇宙クリケット大戦争』にてアーサーが習得した「空を飛ぶ方法」も大いに活用されます。そのバカップルぶりに思わずこめかみを押さえてしまうこと請け合いです(笑)
 物語の主舞台が「何故か復活した地球」の上ですので、笑いのネタも他の巻のような超常識的SF不条理よりはもう少し身近なものが多いようですね(中には実話も……(^^;))。とは言うものの、面白さという点では決して引けを取りません。アダムス氏のイギリス流ユーモアをたっぷり堪能することができます。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/22520909

この記事へのトラックバック