惑星スパルタふたたび

[題名]:惑星スパルタふたたび
[作者]:A・バートラム・チャンドラー


※このレビューには前巻までのネタバレがあります。ご注意ください。

 〈銀河辺境シリーズ〉第十四巻です。
 惑星リベリアにて搾取を行っていたバードン大佐らを排除し、奴隷制度の打破という任務を成し遂げたジョン・グライムズ総督。トップを倒した程度ではそう簡単に社会変革へ繋がらないような気もしますが、後はリベリア人達の問題なのでしょう。ただ、後任総督には、グライムズの監察宇宙軍時代のライバルかつ彼が無能として忌み嫌うデラメア大佐が就任しているため、いささか雲行きが怪しげではありますが(^^;)
 そのグライムズが次に向かうことになるのは――かつて自分がコンタクトを行った、独特な社会を持つ〈失われた植民地〉惑星スパルタでした。民間貨客船船長として活動する彼が、監察宇宙軍の密命を帯びていることを知る者はごくわずかです。

 監察宇宙軍ダミアン少将の指示により、惑星リベリアの総督に就任したジョン・グライムズは、ダミアンの思惑通りリベリア支配勢力に嵐を呼び込むことになりました。奴隷制度を崩壊させた立役者となったグライムズは民衆の絶大な支持を獲得し、惜しまれつつも後任のデラメア大佐に総督の座を譲って惑星リベリアを後にします。
 本来ならばグライムズの宇宙船船長資格はまだ停止中だったのですが、彼はリベリア総督の任期中、自ら任命した試験官を通じて新たな船長資格を獲得していました(ちょっと反則気味(^^;))。かくしてグライムズは、自らの持ち船である貨客船〈シスター・スー〉の船長へと返り咲いたのです。
 現在、地球-惑星ニュー・スパルタ間の交易を行っている〈シスター・スー〉へと乗船するためスパルタへと向かったグライムズは、そこで思わぬ人物と再会します。それは監察宇宙軍時代に親しかった人類学者マギー・ラゼンビー中佐だったのです。彼女との再会は偶然ではなく、惑星ニュー・スパルタに起き始めているキナ臭い動きを掴もうとするダミアンの命令でした。そしてもちろん、グライムズにはそれを拒否する権利などありません(笑)
 そして、今や執政官としてスパルタを統治するブラシダスと旧交を温めた後、グライムズは他にも知己がこの惑星にいることを知ります。それは歓楽惑星ニュー・ヴィーナスバーグの一件(『背徳の惑星』参照)で行動を共にした記者フェネラ・プルイン及び、ダルリーンとシャールのニュー・アリス人コンビでした(こちらはただの偶然(^^;))。グライムズは彼女らも仲間に引き入れ、調査に協力してもらうことにします。
 惑星ニュー・スパルタに忍び寄る不穏な気配、それはブラシダスの妻エレナが関わっている〈新ヘラス協会〉という組織に関連があるようでした。グライムズは自分達が工作員であることをブラシダスにも秘密にしつつ、情勢を探ります。
 ところがある日、市井の声を聞くためにお忍びで出かけたブラシダスが、グライムズ達の目の前で誘拐されてしまうという事件が起こってしまいました。そして、執政官不在の代行者として、エレナが強権を振るい始めたのです。
 果たしてグライムズはブラシダスを救出し、スパルタに平穏を取り戻すことができるでしょうか。

 本書の注目ガジェットは、惑星ニュー・スパルタです。
 かつて男しか存在しなかった植民惑星は、元々は単にスパルタと名乗っていたのですが、監察宇宙軍時代のグライムズにより地球との交流が復活後、名前に「ニュー」を付けることにした模様です。
 開国後のニュー・スパルタは積極的に女性の移民を受け入れてきたようで、もはや男性のみの惑星ではなくなっています。もっとも、人口比ではまだ少ないことから、女性はかなりチヤホヤされる立場です。逆に、首都から離れた地方では女性の流入が起きておらず、女性に敵愾心を抱いている人々もいます。

 本巻は第五巻『惑星スパルタの反乱』の後日談に相当するエピソードですが、視点はあくまでグライムズ側にあり、先の巻で主役を務めたブラシダスは脇役となっています。ブラシダスは前回の訪問時には巡査部長でしたが、その後執政官に上り詰めています。
 ちなみに執政官("Archon":アーコンまたはアルコン)とは、古代ギリシアにおいて都市国家スパルタのライバルだったアテナイの最高職で、当初は貴族からの選出だったものが、後に市民を含めた抽選制となったという一風変わった役職です。
 ニュー・スパルタにおいては、さすがにくじ引きで指導者を選出とまでは行かず、あくまで市民の合意による選出が行われています(詳細は不明)。スパルタ市民の態度を見るに、ブラシダスは良き統治者として民衆から支持を受けている様子です。『惑星スパルタの反乱』でも真面目な青年だった彼ですが、執政官となった後もその誠実さは変わっていないようですね。

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